木のお喋り
沖縄の木は
こんなにもお喋りだったんだ。
しんと静かな空間に整然と並ぶ木の器。
歪みも曲がりも節穴も生きてきた証。
あるがままの美だ。
夏の沖縄旅2016リポート、後半は本島編。
自然、文化、歴史に触れる本島中部ドライブの翌日、
旅の三日目は柔らかなブルーの海が美しい南部エリアへ。
多くの戦跡がある沖縄戦最大の激戦地では
ほぼ全域が公開されている数少ないガマである
「糸数アブチラガマ」に現地ガイドさんの案内で入壕。
暗闇よりも暗い闇の中で71年前の戦争を追体験しました。
奥武島の名物てんぷらで遅いお昼を済ませた後は
伝説の海カフェ「浜辺の茶屋」でひと休み。
青い海に面した窓辺の席でしばし時を忘れました。
海と空と私だけのひとときから我に帰り(笑)、
次なる目的地へ向けて、出発、再びレンタカーを走らせます。
海が美しい風光明媚な南城市は実は美しい手仕事エリア。
自然豊かな環境に魅力的な工房が点在していますが、
実はず~っとず~っと片思いしていた木の器を求めて
わくわくしながらハンドルを握っています。
目的地は木工作家・藤本健さんの「gallery k.」。
出会いは那覇の器のセレクトショップ「ガープ・ドミンゴ」。
高感度なセンスで集められた作品が並ぶ中、
ある木の器に強烈な引力で吸い寄せられました。
すっきりと端正なフォルムと武骨な節穴のコントラストは
はっと息をのむほど新鮮な迫力、磁力があります。
「これは・・・」次の言葉が続かない私に
「素敵ですよね、ガジュマルの木を使っているんですよ。
藤本さんの作品です」とオーナーさんが教えてくれました。
「藤本さん?」
「はい、沖縄の木の器を作っていて南城市に工房があります」。
沖縄の焼き物「やちむん」の工房は数多く訪ねてきましたが、
木の器、木工作品を見る機会はなかなかありません。
「ですよねぇ、沖縄は木の器を使う文化がなかったのですが
藤本さんはその沖縄の木の美しさ、可能性に気づき、追求、
刺激的な作品ですよねぇ」。
ガジュマル、アカギなどなど使う木によって形もサイズも様々。
木の個性を大事に作り上げていくため、
一つとして同じ器はないらしい。
手にしたガジュマルのボウル、
思わず家に連れて帰りたい誘惑にかられましたが、
大らかな沖縄の木の声を聴きながら器を作るという工房を
何としても訪ねたくなりました。
一つとして同じ器がない・・・ならばどんな器が並んでいるのだろう。
そう決心したのが2年前の夏。
うふふ、2年越しの片思いに決着をつけるドライブなのでした。
海を望む南城市の高台。
亜熱帯の森の斜面に沿うように建つシンプルモダンな建物。
「←gallery k.」小さな看板発見、ここだ。
矢印に従って小道に入るが、車はどこに停めるのかしら。
もうひとつ「胃袋」という謎の看板が並んでいる。
心配になって事前連絡していた番号に電話すると、
「ああ、行きますね、その胃袋の駐車場に停めて下さい」。
どうやらご本人らしき声がそう教えてくれました。
やがて、シンプルモダンなギャラリーから
お髭も素敵なアーティストっぽい笑顔の男性が出てきてくれました。
2年越しの片思い、その木の器を作ったご本人、藤本健さんです。
「ようこそ、すぐわかりました?」
「胃袋って何かと思いました~(笑)」
「僕の器を使った料理店なんです、夜だけのオープンなんですけど」。
な~るほど、木の器で胃袋を楽しませる、わけね。
「どうぞ、こちらへ、足元気をつけて下さいね」。
斜面に食い込むように建てられたギャラリーへ。
「お邪魔します・・・」。
狭い階段を上って先に真っ白な空間が広がっていました。
小さな窓から降り注ぐ力強い太陽の光と濃密な緑。
しんと静謐な空間に整然と並ぶ木の器たち。
あれ・・・誰も話していないのに・・・お喋りが聞こえる。
ガジュマル、アカギ、ホルトノキ・・・。
色も形も大きさも年輪も節穴も割れも様々な木の器。
それぞれの木が我が「人生」を語っている。
沖縄の木はお喋りだった。
藤本さんと木の対話についてはまた明日。
旅人の片思いが成就した瞬間だった(笑)。
(写真は)
静謐なギャラリーで
整然と並ぶ木の器たち。
ひとつひとつ手に取り
木の来し方に耳を傾ける。
沖縄の木はお喋りだった。

