風が染める藍
南国の太陽の光を浴びて、
美しいブルーが風になびく。
亜熱帯の緑からその青は生まれる。
石垣島の光と風が染める藍。
八重山の藍はすこぶる元気だった。
夏の沖縄旅2016リポート、旅の前半は石垣島に3泊。
西表島・由布島・小浜島・竹富島の八重山4島クルーズに
メインアイランド石垣島1周ドライブなど充実の島旅、
八重山諸島の自然、文化、食、人々に魅了され、
あっという間に石垣滞在最終日になってしまいました。
夕方の飛行機で本島へ移動するぎりぎりまで、
素敵な島時間を楽しみ尽くしましょう。
ホテルを早めにチェックアウト、朝一番のお散歩がてらに
琉球王府時代の赤瓦のお屋敷「宮良殿内」を散策した後は
島の台所、公設市場へ。2階の「石垣市特産品センター」でお買い物。
お向かいの小さなお菓子屋さん「ちょっき屋」さんでは
ここでしか買えない巨大月餅風「丸ちょっき」もゲット。
さあ、これで石垣土産はOK、最終日のメイン目的へ向かいましょう。
八重山藍「shimaai」の藍畑「島藍農園」です。
深い藍と爽やかな青とフクギの橙色が魅力的なバッグたち。
ユーグレナモールのアンテナショップで一目惚れ、
オーナーの大濱豪さんの作品とお人柄と三代続く情熱物語に魅せられて、
八重山藍の原料を自家栽培する藍畑と工房を訪ねる約束をしていたのです。
賑やかな街中を後にパンナ岳方向に向かってレンタカーを走らせます。
今日も海が青い、空も青い、緑は濃い。市街地からちょっと離れただけで
昔ながらの集落や美しい自然が広がるのが石垣島の魅力。
市街地から10分ほどの快適ドライブで「島藍農園」到着。
緑の小道で大濱さんが手を振って出迎えてくれました。
ほんと、街中からちょっと離れただけで八重山の豊かな自然に包まれる。
大濱さんのいでたちもアンテナショップでお会いした時とは違う畑仕様。
いい感じに色褪せた藍のTシャツ、頭のてぬぐい、藍は働く男によく似合う。
「ジャングルみたいでしょ?」と笑いながら案内してくれる。
亜熱帯の濃い緑に囲まれた小道を抜けると開放的な工房が。
その手前で大濱さんが立ち止まり、傍らを指さした。
「これが、ナンバンコマツナギ、八重山藍の原料です」。
見れば、小さな葉っぱを繁らせた低木緑樹の畑が広がっている。
自由に育ったちょっと背の高いお茶畑みたいに見える。
「ナンバンコマツナギ(南蛮駒繋)」。
八重山諸島を栽培の北限とする藍の色素を持つ豆科の植物が
強烈な日差しと潮風を浴びながらすくすく育っています。
ミンサー織り復興の功労者である竹富島出身のおばあさまが
染織を志す孫息子に渡した一握りの種から始まった藍畑。
一時は途絶えそうになっていた八重山の藍を
伝え聞いた昔のやり方を自分なりの方法で再現、
栽培から藍の製造、染め、作品作りまで自ら手がける、
まさに「藍の現場」であります。この可愛い緑の葉っぱから
どうやって、あの美しい藍が生まれるのでしょうか。
「じゃ、工房へ行ってみましょうか。ワイルドな作りですけど(笑)」。
畑の奥に風が通り抜けるオープンエアな小さな建物があり、
大きなタンクやバケツが並んでいます。
大濱さんの説明によると、
まず、収穫したナンバンコマツナギの枝葉を水につけ丸一日。
藍の色素が出た液に消石灰を入れて撹拌、その沈殿物に
木灰や米ぬかなどを加えて発酵させでできるのが「沈殿藍」。
「この藍色の泥が沈殿藍、原料の藍が染料になった証です」。
すくって見せてくれた深い深い藍色の塊の静かな迫力よ。
あの緑の葉から藍が生まれる瞬間なんだ。
収穫した藍から色素を取り出し、発酵させるこの工程は
色合いや泥の具合で発酵度合いを見極めなければならず、
目が離せません。「ちゃんとかまって面倒みてあげないとね」。
除草剤も化学肥料も使わず、
発酵を促す材料も全て自然に還る素材だけを使う大濱さん。
大切にしているのは「ずっと続けられること」。
機械や薬品に頼ってしまうとそれがないと何もできなくなってしまう。
だから自分の力と島にあるものだけを使って藍を生み出す。
何もないところから畑を開墾し、島の素材、資源を活かしながら、
藍を作りだし、染め、染料を取り出した後はすべて自然に還す。
「shimaai」の作品に強い引力を感じるのは
それが生まれる農園、工程、行動、信念、
まるごと含めた魅力が宿っているからなんだな。
素敵なバッグを作る人はいっぱいいるけれど、
素敵な畑を開墾しちゃった人はそういない。
土を耕し、汗をかき、藍を育て、都会的な作品に昇華する。
「島藍農園」は新たな6次産業モデルと言えましょう。
亜熱帯の森の中。
作業場のロープに広がられた藍色の布が
心地よい島の風をはらんで気持ちよさそうに揺れている。
ナンバンコマツナギの畑をレモングラスの香りが通り抜ける。
雑草と風除けにはなんと香草が植えられていた。
石垣島の風が染める藍。
南国の緑の風に揺れる藍の布。
島藍農園で見た風景は
世界でいちばん美しい藍の現場。
心まで藍色に染まるような。
なんて幸福な島時間。
(写真は)
これがナンバンコマツナギ。
こんな小さな緑の葉っぱから
あんな美しい藍色が生まれるなんて。
先人の知恵をリスペクトしながら研究、行動、
真面目でスローな藍染めを続けるライフスタイルは
未来につながる素敵な八重山モデルだ。

