塩の小道
滴るような濃い緑のアーチが
昼下がりの南国の日差しを優しく遮る。
亜熱帯の秘密の小道を抜けると
エメラルドグリーンの海が広がっていた。
そこは塩の故郷。
夏の沖縄旅2016、旅の前半は石垣島にステイ。
西表島・由布島・小浜島・竹富島と八重山4島クルーズの翌日、
三日目はメインアイランド石垣島をレンタカーで1周ドライブ。
八重山ミンサーや島の手仕事に触れ、
世界的に希少なサンゴ礁を有する白保海岸を散策、
ミシュラン三つ星の絶景・川平湾ではグラスボートで海中散歩、
手打ち麺が絶品の八重山そばに楽園パーラーの南国スイーツも堪能、
満足度200%のドライブ、気がつけば午後4時をまわっています。
いやはや、走った、観た、食べた、感動した。
朝、石垣島の南部にある市街地を出発、
美しい東海岸を眺めながら北へ、玉取崎で西海岸へ抜け、さらに北上、
島最北端の平久保崎で太平洋と東シナ海、二つの海が出会う絶景に感動、
島の北東部に位置する川平湾を経て、
美しい名蔵湾を望む楽園パーラーで南国スイーツタイムを楽しんだところ。
実は、ワケあって(後述)今晩の島ごはんは早めの予約時間、
そろそろ市街地方面へ戻った方が良さそうです。
南国の昼下がりの日差しはまだまだ強烈ですが、
島めぐりドライブ、少し早めに締めくくるといたしましょう。
レンタカーは東シナ海が広がる美しい湾にそって走りだしました。
ここ名蔵湾は島の言葉で「アンバル」と呼ばれ、
冬には野鳥が北から飛来、湿地にはマングローブ林、
海域にはサンゴ礁の群落が広がる独特の自然生態環境は
2005年、ラムサール条約の国際自然保護区に決定。
八重山諸島の中でも陸と海が一体になったひときわ美しい場所。
その名蔵湾沿いの79号線を走っていると、
あるノボリが目に飛び込んできた。
あれ?「石垣の塩」?
昨日、おととい、美味しい島ごはんを堪能した地元で人気の居酒屋さん、
「あだん.亭」でも「まるさ本店」でも、卓上にあったよね、「石垣の塩」。
オオタニワタリの天ぷらや新鮮な島魚のお刺身にちょいとつけてみたら、
これがまた絶品、何とも味わい深いお塩で、
絶対お土産に買って帰ろうって思っていたのでした。
へぇ~、「石垣の塩」の工房、ここにあったんだ。
せっかくですから、ちょっと寄ってみましょう。
亜熱帯の緑に囲まれた工房の前には
泡盛を入れるような年季の入った甕が何個も置かれています。
う~ん?塩って、甕で作るんだっけ・・・?
小さな?を抱きながら、併設されているショップへ。
ガラス張りの向こうが工房、できたお塩の梱包作業中のよう。
「いらっしゃいませ、ようこそ、是非、お塩のテイスティングしてみて下さい」。
日焼けした精悍な若手経営者風イケメンがにこやかに出迎えてくれました。
年のころは30代後半から40代あたり、現場でバリバリ働く様子が爽やかだ。
「石垣の塩」の2代目?なんて勝手に妄想(笑)。
「え?テイスティング?」
「はい、石垣の塩、まずは色々味見をしてみてください。
100%石垣島の海水のみで作っているので、月齢(潮汐)、太陽の光や風、
自然のリズムとともに味わいも変わるんです。
お塩は自然とつながっているんですね」。
おおお~、弁舌爽やか、説得力がある。
へぇ~、どれどれ、まずはお味見させてもらいましょうか。
まずは石垣島の海水を3日間釜で焚いて仕上げた「石垣の塩」。
「ちょんと、舌の先にのせてください」。
美しい白い結晶をそっと舌の先にのせる。
う・・・うまい・・・しょっぱいというより、美味しい。
心地よい塩気とともにじんわりと口の中に複雑な旨みを感じる。
「お、美味しい」「ね?じゃ、次はこちらの天日干しと比べてみて下さい」。
50度から70度の天日小屋で2~3週間、乾燥させた天日干しの「石垣の塩」。
さっきのお塩より、さらさらしている。
そぉ~っと舌の先にのせると・・・、
あ・・・まぁ~るい。さっきのお塩よりまろやかでまぁるい感じ。
「こちらは丸いというか、甘いというか・・・?」
「そうなんです、わかっていただけて嬉しいです。
釜で炊いた方は、ガツンとした魅力があるので、お肉や魚、
天日干しはまろやかなので、野菜料理やサラダにぴったりなんですよ」。
ほぉ~、お塩を使い分けね、料理の達人って感じ。
「で、こちらが満月の夜に汲んだ海水で作られたお塩、
こちらもお味見して下さい」。
ふ~む、満月の味がするような・・・(笑)、ともかく旨い。
「でもね、このお塩とまったく同じ味を注文されてもできないんです。
海は生きていますから、この前の満月と次の満月、まったく同じには作れない」。
だよね、100%海の恵みから作る海塩、工場製品のようにはいかないよね。
「石垣島の塩の特長って何ですか?」弁舌爽やかな彼に聞いてみると、
「よく聞いて下さいました、それは、ミネラルです。
石垣島はミネラル分豊富なサンゴ礁の海に囲まれているので、
できたお塩はミネラルの含有量が多く、それで味わい深いんですね」。
なるほど海の栄養そのままってわけね。
自宅でも利き塩(笑)してみようと、
釜焚きと天日干し、それぞれの石垣の塩をゲット。
で、最後に気になっていた質問「あの外にある甕は何ですか?」。
「あ~、あれはにがり、ですよ。海水のミネラルそのもの。
ああやって長期間熟成させるんですが、
第4の天然の調味料として今注目されているんですよ」。
へぇ~、亜熱帯の森にずらりと並ぶ大きな甕は
100%海水を使っている証でもありますね~。
「良かったら、塩の海、ご覧になっていきます?」
爽やかイケメンさん、粋なお誘いをしてくれる。「ええ、是非是非!」。
ショップを出て、にがりの甕が並ぶ向こう、亜熱帯の緑に囲まれた小道が。
「この道を抜けると海が見えます。その沖合1.5km先からくみ上げた海水から
さきほどのお塩ができるんです。キレイな海ですよ。ごゆっくり」。
「ありがとうございます」
「あ、お買い上げいただいたお塩、まずは塩むすびで食べてみて下さいね~」。
最後まで爽やかに石垣の塩イケメンは
新たなお客さんが待つショップへ戻って行った。
さあ、緑濃い秘密の小道にそっと足を踏み出す。
頭上に振りかぶる大きな葉っぱをよけながら歩くことほんの1分ほど、
ぱかっと視界は開け、目の前にエメラルドグリーンの海が。
ここが・・・塩の故郷。塩の海。塩の浜。
石垣島の塩作りは享保2年(1717年)にこの名蔵湾の海水を汲み上げ、
その歴史が始まりましたが、一時衰退、
1996年、島人5人が再び名蔵湾沖の海に潜るところから
現在の「石垣の塩」生産が再スタートしたそうです。
人が生きていく上で欠かせない塩。
その恵みを目の前の海からいただく幸せ。
だからこそ、この自然を守り続けたい。
名蔵(アンバル)の人々の誇りと責任が
美しく白い結晶を復活させた。
塩の小道は未来へとつなげる大切な道だった。
(写真は)
亜熱帯の緑に囲まれた塩の小道。
にがりの甕が静かに並ぶ。
美しい海は美味しいお塩の故郷。
ふふふ、石垣の塩むすび、今から楽しみ。

