イノーの恵み
豊かな遠浅の海は
クリームソーダのような碧色をしていた。
人はサンゴと共に生きてきた。
サンゴ礁がつなぐ人と自然の営み。
白保のイノーがそっと語りかけてくる。
沖縄夏旅2016、旅の前半は石垣島ステイ。
西表島・由布島・小浜島・竹富島の4島クルーズの翌日、
旅の三日目は八重山諸島のメインアイランド石垣島1周ドライブ、
朝一番「みんさー工芸館」で八重山伝統のミンサー織りを堪能後、
南国の蝉時雨を浴びながらレンタカーは島の東海岸へ。
世界有数の豊かなサンゴの海を目指します。
石垣島の南東に位置する白保海岸。
1988年IUCN(国際自然保護連合)は白保のサンゴ礁が
守るべき世界的な財産であることを決議しました。
豊かなサンゴ礁生態系は地球の宝物、世界の中の白保、なのですね。
何せ北海道から2500km南まで旅してきたのです、
白保の海を見ずには帰れません。
まずはカーナビに「白保サンゴ村」と入力。
国道390号線を新石垣空港に向かって走り、ナビの案内に従って、
海岸方向へ右折する細い道に入ると風景は一変。
昔ながらの赤瓦の民家が連なり、サンゴの石垣には南国の花々が。
豊かなサンゴの海と共生してきた白保の人々の暮らしがありました。
海を大切にしながら、その恵みを上手にいただき、、
貴重な生態系を未来へと守り伝えることを目的に発足したのが、
ここ、WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」です。
静かな集落に融け込むような建物に無事到着。
まずはここで情報収集。
「うわぁ~、白保の海ってこんなに豊かなんだ」。
建物に入ると、サンゴ礁がつなぐ人と自然の営みを
わかりやすくヴィジュアル化した展示に目が吸い寄せられます。
穏やかな遠浅の海「イノー」は
「ビー(礁嶺)」と呼ばれる天然の防波堤によって外海の荒波から守られ、
白保の人々は投げ網や巻き網漁、追い込み漁、
伝統的な木造船サバニなどを操り、サンゴの海の恵みを得てきたのですね。
浜ではシジミやアミシタ、ビーではサザエやミーナ(タカセガイ)が獲れ、
冬の岩場でおばぁたちがアーサーを摘む姿は白保の風物詩とか。
潮の満ち引きを上手に利用してきた暮らしの知恵。
海と人が共存してきた理想形と言えましょう。
しかし、今も青く豊かな白保の海も
昔に比べると、海が濁ったり、魚や貝が減ったと地元の人は言います。
激しい雨で流れ出た畑や空き地の表土によって海が濁ったり、
泳ぐ人が立ったり、フィンや船底やアンカーによって
サンゴが折れたり、壊れたり、傷ついたり。
また水温29度以上ではサンゴの体内にすむ藻類が抜けだし、
サンゴが白く変色する「白化」現象が起きるのですが、
温暖化現象の影響でその白化が進んでしまうことも心配されています。
世界の宝である白保の海を守るため、
サンゴの海を調査し、生態系への関心を高め、
海と生きる知恵を継承し、持続可能な利用を図る取り組みをしているのが
この「しらほサンゴ村」。展示をじっくり拝見し、資料パンフをもらって、
スタッフに海への道を聞くと、「ああ、もう、すぐそこですよ」と笑顔。
お礼を言って、海岸への細い道を歩いていくと・・・
う・・・わぁ・・・何と豊かな風景でしょうか。
一面真っ青なビーチリゾートはひと味違う海。
真っ白な砂浜の向こうにはゴツゴツとしたベージュ色の岩場が連なり、
さらにその向こうにまろやかなクリームソーダ色の遠浅の海が見えます。
穏やかなイノー、がっしりとそのイノーを守る天然の防波堤ビー。
潮が引くと現れる真っ白な「バタンジ(渡ん路)」は貝やタコや魚の絶好の漁場。
サンゴ礁の海は海藻を育み、そこに小魚が集まり、
さらにそれを狙って色鮮やかな亜熱帯の魚がやってくる。
実に多様性に富んだその風景は
豊かで希少な生物多様性を保っている環境そのもの。
これは、この海は、みんなで守らなくちゃね・・・。
40年以上前、この白保に空港建設の話が持ち上がり、
サンゴの海を巡って長いこと地元も揺れに揺れました。
結果的に集落から10km北に空港を作ることで落ち着き、
白保の暮らしも静けさが戻ったそうです。
もちろん以前よりは国道は車が増え、交通量も増しましたが、
一歩、海岸に向かって細い道を入ると、
サンゴの海と共生してきた昔ながらの風情が残っていました。
今回はわずかな滞在時間でしたが、
いつか白保の海の24時間を見てみたいもの。
朝焼けのイノー、夕陽に染まるビー、
碧い海に漕ぎ出すおじぃのサバニ。
時計を気にせず、ゆらゆら散歩、
サンゴの海にまるごと抱かれたくなる。
いつか、またね。白保のイノー。
ずっと、このままでいてね。
静かで美しく優しく豊かでいてね。
旅人はさらに島の北をめざす。
(写真は)
世界の中の白保。
豊かなサンゴ礁の海の風景。
白い砂浜、ゴツゴツの岩場、碧い海。
サンゴがつなぐ海と人の環。

