美しい街

昨夜、何気なくつけていたテレビ画面に

突然、「ニュース速報」が。

何が起きた?ドキッと緊張した次の瞬間、

「オバマ大統領、27日に広島訪問」との文字が現れた。

ようやく実現だ。緊張が歓迎に変わる。

「米現職大統領 初の訪問」「投下から71年ついに」

今朝の朝刊各紙も一面トップで報じています。

アメリカ国内では原爆投下によって戦争終結が早まったとする正当化論が根強く、

過去3度訪日したオバマ氏もこれまで被爆地訪問を見送ってきましたが、

オバマ政権下では歴代駐日大使が平和祈念式典に出席、

4月にはケリー国務長官が閣僚として初めて広島を訪問、

原爆資料館を訪れ「すべての人が訪れるべきだ」と語りました。

その後、ニューヨークタイムズ紙やワシントン・ポスト紙が

相次いで大統領は広島を訪れるべきとの社説を掲載、

2009年のプラハ演説で「核なき世界」の理念を提唱した

現職大統領の背中をここにきてさまざまな要因がぐっと後押し、

風薫る五月の広島訪問がいよいよ実現することになったのです。

「核なき世界」へ向けてどんな一歩を踏み出すのか、

オバマ大統領の言葉が注目されます。

広島を訪れたオバマ大統領が

どんな演説をするのか、被爆者との対話は実現するのか、

残り8カ月となった在任中に具体的な核軍縮行動が進むのか、

今回の歴史的訪問に関して様々な焦点があげられていますが、

ひとつだけ、とてもシンプルなお願いがあります。

それは広島という街の美しさに気づいてほしいということ。

20代の春、仕事で初めて広島を訪れたとき、

何より印象的だったのはこの街の美しさでした。

原爆ドーム、平和祈念公園などはもちろんのこと、

街中は緑があふれ、清らかな水をたたえた川が滔々と流れ、

市内のどこを歩いてもゴミひとつ落ちていなくて、

ここは世界一美しい街だと思いました。

丁寧に掃き清められた公園。

目にまぶしいほど春の光を反射させる白い舗道。

愛する街を徹底的に破壊された人々が

どれほどの思いでこの広島を復興させてきたことか。

尊い命が一瞬にして奪われた地に再建されたこの街のどこに

どうして不用意にゴミなど棄てられようか。

広島の街の美しさの理由を想像しました。

セキュリティーの問題などあるでしょうが、できることなら、

短時間でもオバマさんにも広島の街をじかに歩いてほしい。

植えられた緑に、掃き清められた小道に、清冽な川に宿る美しさの意味を

一人の人間として感じとってもらえたら、と思うのです。

そして、一人のパパとしてのオバマさんに

ぜひ一冊の本を手にとってもらえたら、とも思います。

それは「ひろしま」。

写真家の石内都さんが被ばくした衣服を撮った写真集です。

爆風に引きちぎられたり、黒い雨に打たれた跡が残る、

花柄や水玉のワンピース、学生服・・・。

平和祈念資料館の収蔵庫に眠っていた沈黙の衣服たち。

持ち主の女の子は何歳で、どんな遊びが好きで、夢は何だったのか。

二人の娘さんのために自ら絵本を執筆した大統領、

その瞬間まで人々を包んでいた衣服から

何かを感じとってもらえるのではないでしょうか。

書棚にあるこの写真集を見るたびに、

この小花模様の夏服を着ていたのは自分だったかもしれない、

そう思います。人の肌に寄りそっていた衣服が静かに語る被ばく。

「あやまち」を繰り返さないために

想像力を失ってはいけないのですね。

五月。

美しい街広島は、

美しい季節を迎えます。

(写真は)

連休明けの札幌に

美しい朝日がのぼる。

当たり前の光景に

思わず感謝。