アカシアとリラと鮭

爽やかな新緑がまぶしい。

もうすぐ純白のアカシアの花が咲き、

紫色のリラのつぼみが開きそう。

ね?札幌は最高でしょ?

世界中に自慢したくなる季節がやってきた。

この時季、スーパーでお買い物していると

ついつい、お魚コーナーで足が止まってしまいます。

視線を釘付けにする美しいサーモンピンクの切り身、

そして光沢のある美しい銀色をした魚が堂々まるごとディスプレイ。

傍らには誇らしげなポップが。

「時鮭入荷しました」。

札幌に初夏の訪れを告げる特別な魚。

アカシヤとリラの花咲く季節にお目見えする「時鮭」です。

別名「時不知(トキシラズ)」。

産卵のために故郷の川に戻る途中に獲られた「秋鮭」と違って、

ロシア北部のアムール川流域で生まれた若い鮭が

北海道の沿岸を回遊中に捕獲されたもの。

季節外れに獲れることから「トキシラズ」「時鮭」などと呼ばれます。

広い海を悠々と回遊している若い鮭なので、

卵などに栄養が取られないその身は栄養をたっぷり蓄えています。

脂の乗りも最高で、秋鮭の3倍とも。

毎年、桜が散り、新緑が濃くなる季節になると

お魚屋さんの店頭をその美しいサーモンピンクが彩るのでした。

旨いんだ、時鮭、でも、少々お値段も張るんだ(笑)。

特にはしりのこの時季はね、でも、先週よりはお値段下がってるしね、

ええ~い、型はまだ小さいけれど、買っちゃおうっと。

週末ご飯に早速、塩焼きにしていただきました。

やはり、最高。特にハラスの脂の乗りっぷりといったら。

カリカリの皮と一緒に口に運ぶと・・・とろける・・・。

鮭界(?)の大トロ、だな、こりゃ。

八重桜の濃いピンクにも似た美しい身を見つめながら

先週、遠い街へ戻っていった大学生の息子にも

食べさせたかったな、とふと思いました。

近頃、自炊に目覚めたらしい彼は

帰省中、小腹が減ったとささっと料理を始めました。

一人暮らしの狭いキッチンでよく作るらしいサーモンのパスタ。

まだ「時鮭」は入荷していなかったので普通の銀鮭を使ったのですが、

「やっぱ、美味い。北海道の鮭は、鮭が違う」(笑)と感動。

そうかそうか、まだまだ未熟者の青年ですが、味覚は成長してるのね~。

冷凍の輸入物と故郷の鮭の味の違いに気づくようになったのね~、なんて

ちょっと嬉しくなっていた親馬鹿母は

「時鮭」食べさせたかったわけで。

そうよね~。

自分自身を思い起こせば、そうだった、そうだった。

故郷、北海道のお魚の美味しさに気づいたのは

親元を離れて一人暮らしを始めた大学生の頃だった。

好物は肉、完全肉食だった女子大生が、東京の空の下で、

ある日突然、無性に「カレイの一夜干し」が食べたくなったのだ。

故郷の噴火湾で獲れたカレイの一夜干し、

ふっくらした白身、上品な脂、ほど良い塩加減・・・。

帰省するなり母にねだった、「あのカレイが食べたい」と。

鮭は生まれた川から海へ出て、

4年間回遊して故郷の川に戻ります

誘惑の多い人間は故郷の魚の美味しさに気づくのには

たっぷり20年以上はかかるのかもしれません。

しかも人間の子は、鮭と違って、必ず故郷の川に帰ってくるとは限りません。

それは大海を泳ぐスキルが身についたってことでもあり。

故郷の魚の味さえ覚えていてくれれば、それでいいんだよね。

アカシアとリラと鮭と。

初夏の故郷は

美しく、美味しい。

(写真は)

型は小さいけれど味は抜群。

時鮭の美しいサーモンピンクに見惚れる。

もうすぐリラの花が咲く、ね。