おじさんたちのほっとけーき
へ~、あの「ほっとけーき」は
七輪で試作してできたんだ。
お気に入り絵本に秘められた
微笑ましいエピソードにほっこり。
オレンジ色の表紙には可愛いしろくまちゃんと
うずたかく積まれたほかほかのホットケーキが。
息子が小さな頃、大のお気に入りだった絵本。
「しろくまちゃんのほっとけーき」。
先日録画しておいたNHK「グレーテルのかまど」のテーマが
まさに懐かしいこの絵本でありました。
さあ、イケメンヘンゼルはどんなホットケーキを再現してくれるのでしょう。
しろくまちゃんがお母さんと一緒にホットケーキを手作り、
お友達のこぐまちゃんと一緒に食べるまでを描いた絵本。
1972年発行以来、40年以上に渡って今も愛され続ける秘密は
大人も子供も思わず食べたくなるホットケーキができるまでの描写。
「ぽたあん」「どろどろ」「ぴちぴちぴち」「ぷつぷつ」
「やけたかな」「まあだまだ」と
見開きの両頁いっぱいにフライパンの絵が横1列2段に並び、
ホットケーキが美味しそうに焼かれていく様子が
幼い子供の心をわしづかみにします。あ、大人も。
「もいっかい!、もいっかい!」。
ページをめくろうとすると、その場面をもう一度読めと(笑)、
ちっちゃかった息子がまだ回らない口で必ず命令したものです。
「しゅっ」「ぺたん」「ふくふく」「くんくん」
「ぽいっ」「はい できあがり」。
こうして言葉を連ねるだけでホットケーキの七変化が目に浮かぶ。
いかにも料理経験の豊富な女性たちのアイデアで生まれた絵本、
のように思えますが、意外な誕生秘話があるのでした。
番組の取材カメラが向かったのはある出版社。
しろくまちゃんのぬいぐるみやイラストに囲まれて
優しい笑顔のおじいさんが出迎えてくれました。
名作絵本の編集者であり発行人の佐藤英和さんです。
当時は独立して絵本専門の小さな出版社を始めたばかりの頃。
子供たちがわくわくする絵本を作ろうと劇作家や画家など仲間4人で
どんな題材にしようか頭を悩ませた結果、
「買ってくるんじゃなくて、家で作るおやつにしよう」とホットケーキに決定。
だがしかし、男4人、誰もホットケーキなんて作ったことがない。
そこで佐藤さんの家に集まり、和室の畳に七輪を置き、
おじさん(おにいさん?)4人が恐る恐るホットケーキ試作に挑戦。
生地をまぜ、七輪の上のフライパンにそ~っと落としていく。
「ぽたあん」・・・じ~っと目を凝らすおじさん(おにいさん)達。
「どろどろ」した生地がやがて「ぴちぴち」音を立てはじめ、
「ぷつぷつ」表面に気泡が表れてくる。
そのいちいちに「おおお~っ」と野太い声で(笑)、
感動する様子が目に見えるようです。
身近なおやつができるまでってこんなに劇的なんだ。
台所に立ったこともなさそうな男性4人の新鮮な驚きは
何にでも興味を示す子供の柔らかな好奇心と見事にシンクロ。
ホットケーキ作りがルーティンの女性には
意外に思いつかない視点だったかもしれませんね。
名作絵本の陰に七輪と4人のおじさん(おにいさん)がいた。
おじさんたちのほっとけーき。
久しぶりに書棚から出してきた
我が家の「しろくまちゃんのほっとけーき」。
背表紙の一部がテープで補修されています。
何度も読んだことを証明する名誉の補修跡。
絵本のおしまいには作品の「ねらい」の文章が添えられていて、
①大きなホットケーキを食べるうれしさ
②ホットケーキができる過程への興味
③自分で作るということの魅力、とあります。
まさに編集者、作家、画家たちの実体験から生まれたもの。
そしてもうひとつ、子供たちに伝えたかった大切なこと。
それは、食べる喜びは仲良しと分かち合うこと。
卵をぽとんと落としたり、粉だらけになったりしながら、
一生懸命作って、大好きな誰かを美味しさを分かち合うこと。
それは男の子にも女の子にも伝えたい人生の喜びのひとつ。
この絵本は料理男子育成にも大いに役立つと思われます。
勝手に野宮的推薦図書に認定(笑)。
ああ、やばい・・・
急にホットケーキ食べたくなってきた。
「もいっかい!もいっかい!」のちっちゃな息子はもういないけど、
我が家のおじさんのために今度の休日でも焼いてみましょうか。
ぽたあん、どろどろ、ぴちぴちぴち、ふつふつってね。
(写真は)
でっかな息子が帰省した連休。
超久しぶりにホットケーキを作る。
しかもクリーム&ベリーでトッピングまでサービス。
母親とは、ホント、食べさせたい生き物なんだな。

