甘栗と立ち食いそば

「高層ビルだらけ」で

「満員電車」に驚き、「電車の乗り換えは複雑過ぎ」、

「家賃が高い」し、「人が多くてぶつかる」。

はぁ~、東京で感じる「故郷ギャップ」。

わかるわかる、よぉ~くわかります。

旅立ちの春、

故郷を離れ東京で新生活を始める人も多いでしょう。

東京で暮らしてみて感じる故郷との違い、

名付けて「フルサト・ギャップ」をけさのめざましテレビが調査、

そのあれこれにいちいち共感、

?十年前、大学進学のため北海道から上京した私も

ホント、同じようなこと、感じてました。

フルサトギャップにジェネレーションギャップはない(笑)。

故郷と違って東京では「方言が飛び交わない」し、

人々は「歩くのが速い」し、「キャッチセールも多い」。

そうだそうだ、「待ち合わせが難しい」も同感。

「ハチ公前でね~」と言われて渋谷駅を降りたはいいものの、

肝心のハチ公が見つからなくて慌てた地方出身者は多いはず。

ハチ公像って意外に小さくて人混みに隠れて見えないんだよねぇ~。

東京の街の真ん中で待ち合わせに失敗したときの心細さは

都会人にはわかるまい(笑)。

数ある「フルサトギャップ」ランキング、

堂々1位に輝いたのが「お洒落な人が多すぎ」。

そう、東京の街はまるでファッション雑誌の4D。

グラビアから抜け出したようなお洒落さんたちがフツーに歩いてる。

福島出身というパンク風ファッション女子のコメントがリアル。

「地元のエース級の服が使えない」(笑)。

地元ではキメてたはずの服が東京では通用しない現実に

そうだ、私たち地方出身者は打ちのめされるのだった。

あれは受験のため、はじめて東京に出てきた時のこと。

故郷北海道を出て初めての一人旅、

緊張しながらも「花の東京」への憧れを胸に

当時の自分としては最大級のキメ服ファッションで

18歳直前の私は羽田空港に降り立った。

空港にはお世話になる親戚のおじさん、おばさんが迎えに来ていて、

満面の笑顔で私を出迎えたおばさんは開口一番、こう言った。

「あらぁ~、範子ちゃん、どうしたのぉ~、山でも登るのぉ~?」

山登る・・・?登山・・・ってことですか?

その時の私はウールの赤いチェックのブルゾンにジーパン、

当時最高にお気に入りだったウェスタンブーツ風ブーツ(笑)に

ジーパンの裾をしっかりイン、

そう、地元では最大級のキメ・コーデのはずだった、のに、

「山登るのぉ~?」って、

アタシのキメ服、東京的には登山服に見えるのか・・・。

屈託ないおばさんの言葉に心の中で激しく傷つきながらも

「へへへ(笑)」、17歳の私はエヘラエヘラ笑うしかなかった。

人生初の「フルサトギャップ」の洗礼だった。

今、思い返せば、確かにあの時の私は

羽田空港に降り立った赤い登山服に登山靴履いた女の子。

北海道の地方都市の高校生が

地元感覚で「お洒落」と確信していたコーデは

インスタやSNSでリアルお洒落コーデ情報も手に入らない時代、

相当なフルサトギャップだったわけで、

まあ、親戚のおばさんは正直だっただけのこと(笑)。

でも、はかないなごり雪が舞う朝、

残雪が美しい春山を眺めながら

あのときの自分の精一杯のお洒落心を思うと

記憶の中の赤い登山服の女の子が

たまらなく愛おしくなる。

東京。

満員電車を降りると

甘栗と立ち食いそばの匂いした。

それは北海道の駅にはない匂いだった。

私は東京にいるんだと実感した。

18歳の春だった。

(写真は)

バルコニーの手すりにふんわり。

はかなく積もったなごり雪。

降ったはなから解けてしまいそう。

外に出るとかすかに湿った土の匂いがする。

故郷の、春の匂いだ。