春は夕暮れ

春は夕暮れ。

それもカステラが

いちばんよく似合う。

清少納言さん、ごめんなさい(笑)。

貴女の仰る「春はあけぼの」に異論などございませんが、

ちょっと贅沢なおやつ時間を楽しみつつ、

こんなカステラ好きの歌人の一首に思わず一票。

「カステラの 黄なるやはらみ 新しき

                味ひもよし  春の暮れゆく」

野宮的バイブル「事典 和菓子の世界」の

カステラの項で見つけた歌であります。

なごり雪がはらはら舞い散る春の夕暮れ時、

昨日の主役は、長崎カステラ。

優しい卵色としっとりした甘さに心がゆっくりほどけていく。

白秋さん、ホントね、春は夕暮れ、それもカステラ。

昨日から札幌東急で開催中の「長崎老舗めぐり」。

今回は15回記念特別限定とかでカステラの老舗8店が集結、

早速、会社帰りの夫に代行ショッピングをオファー(笑)

狙いは数が少なく地元でも入手困難な「岩永梅寿軒」でしたが、

「開店10分で売り切れ、でした・・・」と夫から痛恨の電話連絡。

ですよね~、札幌の甘党がレア物、見逃すわけないよね~、

でも本場長崎カステラの「層」の厚さは本物、

代わりに入手したカステラも絶品でありました。

長崎市丸山町に店を構える「御菓子司 大竹堂」。

大正13年創業の老舗で「桃カステラ」が有名ですが、

今回ゲットしたのは「五三焼きカステラ」。

卵黄5:卵白3という分量比の五三焼きは綺麗に焼くことが難しく、

熟練の職人にしかできないと言われます。

では早速、老舗らしい伝統的な包み紙を開けて、

春の夕暮れ、長崎カステラでおやつ時間といたしましょう。

紙箱を開け、ビニール袋を解き、

さらに丁寧に薄紙に包まれた伝統の長崎カステラ。

まぁ・・・表面の美しい焼き色はもはや芸術品の域。

そして白秋さんが詠んだ通りの「黄なるやはらみ」。

底の薄紙をそっとはがすと・・・おおお~見事なザラメの結晶。

美味しそうな焦げ色に甘やかに光るビードロのモザイク模様のようだ。

そっと切り分け銘々皿に載せ、しばしその美しいさまを観賞する。

では・・・いただきます。

「黄なるやはらみ」にそ~っと黒文字を入れる。

優しくしっとりした手ごたえが、すでに美味しい(笑)。

美しい表面も、「黄なるやはらみ」も、

ビードロモザイクのような底のザラメも、

どこを食べても、絶品、美味しい、そして、思った。

やはり、カステラは、和菓子だ。

長崎人は凄い。

南蛮生まれのスポンジ風の焼き菓子を

しっとりした食感、卵の風味を存分に生かしながら、

寸分の好きのない美しい様をした和菓子に昇華させたのだ。

16世紀に南蛮菓子として渡来したカステラを創意工夫を重ね

ここまで完成された和菓子に作り上げてきた匠たちよ、

あなたたちに敬意を表してカステラはフォークではなく黒文字で、

コーヒー、紅茶ではなく、緑茶や焙じ茶で頂きましょう。

春は夕暮れ、

それもカステラ。

清少納言さんにも食べてほしかったな。

「枕草子」の春の段、変わっていたかも(笑)、ね。

(写真は)

表面の焼き色、

黄なるやはらみ、

ビードロモザイクのような底のザラメ。

長崎カステラ、野宮的には世界遺産。