ヘレニズムにんじん

甘い。

その黄色のにんじんは

優しい甘さに満ちていた。

春、新しい野菜との出会い。

春の三連休初日の土曜日、

まずはお彼岸のお墓参りにおでかけ。

好物だった六花亭のぼたもちをたんと携えて、

亡き父に無事差し入れ(笑)を済ませた後は

実家の母を誘って我が家でちょっと遅めのお彼岸ランチ

主役は春らしい色合いの黄色いにんじん。

その名は「金美人参」。

キンビジンジン・・・ではありません(笑)キンビニンジン。

買い物係の夫が行きつけの八百屋さんで発見しました。

形は普通のにんじんと同じですが実に鮮やかな黄色。

沖縄の島にんじんを思わせる美しい色合いに

料理のモチベーションがぐんとアップ。

牛肉と大根と一緒にマイブームのあれに仕上げましょう。

お墓参りの前に朝から仕込み開始。

「牛肉と大根と金美にんじんの五香粉煮込み」。

この前はシンプルに大根と牛肉だけで仕上げましたが、

黄色いにんじんを加えてみようっと。

まずはかなり太めの立派な金美にんじんの皮をむく。

おおお~、皮もその下もキレイな黄色をしています。

大根と同様に大きめの乱切りにして、

さっと炒めた牛肉とともに醤油、酒、味醂、少々の三温糖、

そして味と香りの決め手スパイス「五香粉」を加え、

あとはル・クルーゼにおまかせ、コトコト煮込むだけ。

さあ、お彼岸ランチ。

はたして金美にんじんのそのお味は・・・。

う~ん・・・甘い・・・何とも優しい甘さが際立ちます。

ちょっとスパイシーで濃厚な味付けとベストマリアージュ。

いわゆる人参くささはまったくないので

これはにんじん嫌いの子供たちでもパクパクでしょう。

菜の花のように美しい金美にんじん、

キミはどこからやってきたの?

実はにんじんは「西洋系」と「東洋系」に分類されるのだそうです。

そもそも、にんじんの原産地は中央アジアのアフガニスタン。

ヒンドゥークシュ山脈で栽培されたのが始まりとか。

古代ギリシャでは薬用として栽培されていたようですが、

当時のにんじんは根が枝分かれした刺激の強いもの。

円錐形のにんじんは10世紀頃にトルコ西部で誕生、

その後12~15世紀にヨーロッパに広がり、

現在のようなオレンジ色のにんじんは

17~18世紀にオランダで作りだされたものだそうです。

これがわゆる「西洋系」にんじん。

一方「東洋系にんじん」は

12~13世紀に中国に伝わり、改良されて17世頃に日本に伝来。

京都の「金時にんじん」や沖縄の「島にんじん」は

この東洋系に分類されます。

その後、江戸時代後期「西洋系にんじん」が伝わり、

明治以降、オレンジ色のにんじんが主流として普及しました。

「金美にんじん」は

東洋系にんじんと西洋系にんじんを掛け合わせて誕生した品種。

皮も果肉も黄色で肉質は柔らかく、甘みがあり、にんじん臭さもなく、

生食も可能で、加熱してもキレイな色が保てるという特徴が。

東洋系と西洋系、両方のいいところを受け継いだ金美にんじん。

う~む、悠久の世界史の出来事が想起されるではありませんか。

そう、東西文明が融合して生まれたヘレニズム文化です。

アレクサンダー大王の東方遠征によって

オリエント世界にギリシャ文化がもたらされ東西文明が融合、

豊かなヘレニズム文化が誕生しました。

この紀元前の画期的なマリアージュがなければ、

「ミロのヴィーナス」も「ラオコーン」も生まれなかったわけで、

異なる文明の融合によって数多くの人類の財産が誕生。

となれば、東洋系+西洋系=金美にんじん、

これはもはや歴史的な「ヘレニズムにんじん」?(笑)。

西洋とオリエントが融合した「金美にんじん」。

我が家にやってきたのは茨城産、

旬は12月から3月ということですから、

見かけたら今のうちに味わっておきたい野菜です。

甘いにんじんを食べて古のヘレニズム文明を想う。

金色のにんじんは、

哲学の味わい。

(写真は)

五香粉の香りをまとった金美にんじん。

お醤油色に染まってしまいましたが(笑)、

生のにんじんさんは、それは美人。

金色にみえる美しい黄色でした。

今度は、サラダに仕立てよう。