チョコ追想
ああ、なんてことだろう。
「ベルギー」と検索すれば
「チョコレート」に「ワッフル」、
「ムール貝」に「ビール」だったのに。
美食の国がテロの標的になってしまった。
「ベルギー連続テロ 34人死亡」。
朝刊の一面には大きな見出しと無残な現場写真が。
スマホで「ベルギー」と検索すると
悲しくなるほどのテロ関連記事が延々とヒットする。
去年のパリ同時多発テロに続いて、
ベルギーもまたテロの標的になってしまいました。
ショックです。
今から10年ほど前、パリへ家族で旅した際に
赤い国際特急列車「タリス」に乗って日帰りで訪れたブリュッセル。
朝早く、パリ北駅を出発、
車窓からのどかで美しい田園風景を眺めているうちに
わずか1時間半でタリスはブリュッセルに到着。
着いたホームにゴディバの売店があるのを見て、
「ああ、チョコの国、美食の国に来たんだなぁ」と感じたことを
昨日のことのように思い出します。
ブリュッセル駅から歩いて
世界一美しい広場「グランプラス」へ。
まるで宝石のような建築が見事な広場を中心に
レストラン、カフェ、チョコレート屋さんなどが並ぶ界隈をそぞろ歩き。
歴史を感じさせる重厚な建物、石畳の道、窓に飾られた花々、
いかにもヨーロッパらしいうっとりするような街並みが続きますが、
どこか親しみやすさを感じたものです。
たとえばグランプラス界隈に並ぶチョコレートショップ。
「プラリネ」と呼ばれる様々な味の一粒ショコラが
店先を飾っていますが、どれもがちょっと大きめサイズ。
パリのおすまし顔のショコラに比べて
「いっぱい食べてね」とでも言いたげな鷹揚な雰囲気が印象的でした。
店員さんがざっくりした紙箱にポイポイっと詰めてくれたプラリネを
気楽につまみながら美しい街並みを散歩したもの。
そう、あの頃、ベルギーと検索しても
「テロ」なんて単語はヒットしなかったのに・・・。
現在、ブリュッセル空港の発着便はすべてキャンセル。
市内の地下鉄、路面電車、バスは全面運休。
フランスとの間の国際特急タリスも
ロンドンーブリュッセル間のユーロスターも運行停止。
あの時みたいにパリからブリュッセルまでランチになど
考えられない非常事態になってしまいました。
私たちがベルギービールやチョコを楽しんだ中心部から
車でわずか10分ほど走ったところに
今回の連続テロとの関連が疑われるモレンベーク地区があります。
イスラム系の移民が多く暮らし、若者の失業率が高く、
現地メデイアが「テロリストの巣窟」と表現するエリア。
日帰り旅の観光客にはそんなベルギーの現実など
まったく目に映っていませんでした。
「EUを訪れる際はロビーやカウンターなど
人が集まりやすい場所は危険と考えて用事は早く済ませ、
一ヶ所に長くとどまらないことが大事だ」。
国際テロ・危機管理の専門家が朝刊で語っていました。
空港のアナウンス、人々のざわめき、外国語の響き・・・。
そんな旅情に浸ることなど許さない現実が
今のヨーロッパにあるのですね。
ちょっと大きめのプラリネを
悲しく想起する春の朝。
世界は何処へ行くんだろう。
(写真は)
ベルギーのニュースに心痛む春。
そっとチョコを口に含んで落ち着こう。
マダガスカル産サンビラーノ種のカカオ71%のダークチョコ。
カカオの果実味と心地よい酸味が絶品。
ほ・・・。チョコを食べると、幸せになる。

