白い魔法
ほよっ???
なんで?
なぜ白い?
ホントにキミはソーセージ?
大学時代の友人が年末のお歳暮に贈ってくれた
信州の絶品こだわりシャルキュトリーの詰め合わせ。
美しい色合いの豚肉加工品の数々にうっとり。
豚肉加工の達人たちが住むフランス・ジュラ産地と
気象風土景観がよく似た飛騨高山近郊にアトリエを構える
「キュルノンチュエ」の自慢の逸品たちであります。
ジュラ山地と同じように山脈に沿った標高の高い地形、
長い冬はマイナス気温が続く厳寒の地。
そこで造り酒屋が使う清冽な水、山襞と緑の空気を使って
匠の里、ジュラ山地・モルトオで修業した確かな技術から
生みだされる「キュルノンチェ」のシャルキュトリーは
グルメ雑誌も太鼓判を押す、ザ・本物。
生ハム、加熱ハム、ベーコンにソーセージ。
それそれが個性的な美しい色合いを持つ豚肉加工品は、
それぞれに燻製方法や熟成方法、期間も違います。
ですから、「うふふ、そろそろね・・・」と、
それぞれの食べ頃を狙って封を開ける楽しみがあります。
昨夜の主役は一番気になっていた白い逸品。
それは真っ白い紙にくるまれ、
青い紐リボンでくくられたドライ・ソーセージ。
ソーセージの片方の端には赤い紐がぶら下がっています。
一瞬、チョコかキャンディーのような可愛らしい包装ですが、
持つと、あれ?軽っ。そうか、ドライだもんね、水分、少ないんだ。
この謎の白い包みこそが「キュルノンチュエ」製品番号05、
「ソオスィオン・セック・フルール・ブランシュ」。
さあ、包みを開けてみましょう。
青い紐リボンを解いて、白い紙をくるくると開けていくと、
ほよっ???なんで?なぜ白い?
真っ白いソーセージがころんといきなり現れたのです。
ビニールやラップなどに包まれることもなく、
剥きだしの白く細長い塊が目の前に。
アトリエ自慢の乾燥ソーセージのヴィジュアルはかなり衝撃的。
「ソオスィソン・セック・フルール・ブランシュ」とは
白かび熟成の乾燥ソーセージで
ジュラ山地で何百年と継承されてきた伝統技法の結晶。
フランスから空輸で取り寄せた白菌胞子を植えて、
1ヶ月熟成させたスペシャルなシャルキュトリーでした。
真っ白いヴィジュアルの正体はその白菌。
ペニシリウム系の白菌は
他の雑菌を食べて繁殖することで知られ、
ブリーやカマンベールチーズなどと同系統の菌だそうです。
つまり、そのまま食べてOK、
むしろ、その働きによってソーセージに独特の風味が加わり、
一度食べるとハマってしまう「やみつき系」の逸品らしい。
2週間くらいの間が旬の食べ頃とかで、
賞味期限を見ると、まさにどんぴしゃ!今が食べ頃ではありませんか。
説明書にはよく切れる肉切り包丁で1~2mmの極薄に切るようにとの指示。
まあまあ切れる(笑)我が家の包丁で出来る限り薄く切る。
おおお~、断面がモザイクタイルのように美しい。
豚腿赤身のルビー色、真珠のような背脂、
時折のぞく黒胡椒はオニキスのよう。
美味しいものは、美しい。
「相性の良い赤葡萄酒とともに」との仰せに従い、
いつものようにプチ晩酌の赤ワインをグラスに。
さあ、「ソオスィソン・セック・フルール・ブランシュ」、
真っ白い外套をまとった乾燥ソーセージをいただきます。
ほぉぉぉ・・・これは・・・なんとも・・・芳醇・・・・。
歯ごたえはかなりハードですが、
口の中の温度で徐々に肉や脂が溶けだし、
ふわぁ~、ぱぁ~っと旨みが一気に花開きます。
これは・・・たまらない。
表面の白菌は気になる苦味も匂いもまったくなく、
むしろ、何ともいえない風味があります。
うん、確かにちょっとカマンベールチーズっぽいかも。
寒い高地の貴重な蛋白源を乾燥した冷気で加工し、
自然の菌の力を借りて熟成を促す伝統の技法。
ふ~む、この旨み、技法、何かに似ていないか。
そうだ、これって、フランスの鮭とば?
フランスと北海道、豚肉と鮭の違いがあるけれど、
土地の素材を自然の力を存分に生かして旨みを引きだし、
長期保存できるように加工する技と知恵はなんら変わりません。
「ソオスィソン・セック・フルール・ブランシュ」と鮭とばや新巻き鮭、
寒く厳しい気候が生みだす加工品に共通するのは
土地の恵みへの深い感謝と丁寧な物作りの心。
「時間をかけずにすまそうとしても、時間がそれを許さない」。
アトリエのリーフレットの一番最後の頁に
こんなフランスの古警句が記されていました。
月日が美味しさを磨く。
白い魔法のソーセージ、美味さの秘密は、
峻厳な山地に流れるスローな時間のようです。
(写真は)
白い外套をまとった美しい魔法のシャルキュトリー
「ソオスィソン・セック・フルール・ブランシュ」。
ああ、大人で良かった・・・。
お子ちゃまにはこの美味さ、わっかんないだろうな~。
この深い味わいが理解できることに感謝(笑)。
月日が、美味さを、教えてくれる。うふふ。

