冬の華

何年ぶりかで会ったのに、時の流れも感じない。

「おお、元気?」で宴は盛り上がり、

ほろ酔い気分で「じゃあ、またね~」と手を振って別れる。

まるで明日会えるみたいに。

友は、いい。

学生時代の友人夫妻が冬の北海道旅行で来札。

札幌在住の後輩男子も後からかけつけ、しばしのプチ同窓会。

かつての神宮球場に秩父宮ラグビー場などなど、

スポーツ新聞会の活動で共に通った仲間たちです。

久しぶりに会ったのに、久しぶりなんて全く感じないのが嬉しい。

昔話ばかりじゃなく、お互いの今の話題で盛り上がるのも楽しい。

ダイビング、山登り、サッカー観戦、旅話。

それぞれの趣味の話は聞いているだけで人生が豊かになってくる。

みんな、元気で、良かった。

友の笑顔は、宝物だ。

楽しい宴の舞台となったのがススキノのとある酒房。

真っ白い前掛けも清々しい板前さんがキビキビと働く老舗、

次から次へと北海道の冬の幸が小上がりに運ばれてきます。

ツブ貝、シャコ、牡蠣にぼたん海老、イバラ蟹の内子に柳葉魚・・・。

北の海が育んだピカイチ食材に丁寧に仕事を施したお料理の数々。

「冬の北海道は、何を食べても美味しいねぇ~」。

ほころぶ友の顔は地元の酒で桜色に染まっていくのでした。

楽しい宴の翌朝、

「昨夜の、白子の練り物の名前、なんだっけ?」と友からのメール。

竜宮城のような美食が並ぶなか、特に印象に残ったのは、

白くぷるぷるした謎の練り物だったようです。

「正解は、たちかま、です」と即返信。

冬の岩内の名物、タラの白子で作ったかまぼこ。

そうだよね~、札幌でもなかなか食べられないレアかま、ですもんねぇ。

ちょっと忘れらない独特の食感は

一度食べると、クセになります。

日本海に面した漁業の町、岩内町。

ここで昔から家庭料理として食べられていたのが「たちかま」。

北海道ではタラの白子を「たち」または「たつ」と呼び、

その白子と塩だけで練り合わせたご当地かまぼこが「たちかま」。

昔はどこの家でも作っていたそうですが、

今では岩内の一軒のお店が伝統の味を作り続けています。

「たちかま」の命は鮮度。

活きの良い白子を厳選し、茹でて裏ごし、

ペースト状になったたちを石臼に入れて塩と少量の澱粉を加え、

ひたすら練っていくと・・・ゆるゆるだったたちが・・・

次第に粘りを帯びて・・・やがて弾力のあるお餅のような状態に。

これを手でぷにゅっと押し出し、大福のようにちぎり、

大きな釜で茹であげたら、岩内名物「たちかま」の出来上がり。

箸でつまむとぷるんぷるん、

その食感はもっちり&ねっとり&しっかり。

こんな食感のかまぼこは日本中どこにもない、なぁ。

魚臭さはみじんもなく、上品なあじわいで

ほのかに磯の香りが後に残ります。

昨夜のお店では潮汁のお椀に仕立てられ、

同じ日本海で採れたであろう、岩のりが添えられていました。

う・・・うまい。じんわりと、しみじみとうまい。

ふと、耳元で演歌が流れてきた。

ごぉぉぉ・・・日本海の冬、唸るような波の音も聞こえてくる、

ような気がした(笑)。

これは、日本酒が似合うんだろうなぁ~と思いながら、

飲めない私は梅酒のソーダ割りをぐびり。

梅酒にも合います。偉いぞ、たちかま。

その昔、学生街の居酒屋で

唐揚げやピザやフライドポテトで飲んだくれていた(笑)友と

冬の日本海、演歌が聞こえてきそうな「たちかま」なぞつまみながら

海や山やサッカーやラグビーの話に花が咲く。

住む場所は離れていても、今も一緒に年を重ねているんだ。

友は人生の宝物。

みんな、元気で。

また、会おう。

今度は何を食べよう。

何を語ろう。

(写真は)

白い雪と波頭が冬の華のように舞う日本海。

厳しい寒さが極上の逸品を生み出した。

岩内名物「たちかま」。

岩ノリとともにパクリ。

ああ、口の中に冬の日本海が広がった。