秋鮭香る

明日は立冬。

暦の上でとうとう冬になる前夜、立冬イブイブの金曜日、

秋刀魚づくしの神無月から霜月へと季節も進み、

食卓の主役も秋鮭へとバトンタッチ。

またしても魔法の小瓶がいい仕事をしてくれました。

2015下半期の野宮的ヒット商品「五香粉」。

八角、シナモン、陳皮、花椒、クローブなどを混ぜた中国の香辛料。

このところ毎週、登板回数が増えていますが、

先日、全国紙のお料理欄にも取り上げられていました。

もしかしてプチ五香粉ブーム?(笑)。

気になるその一品は「鮭の五香粉風味から揚げ」。

料理研究家ウー・ウエンさんのレシピです。

ウーさんのお料理は何度か試しましたが、

どれも素材の味を活かした体にも心にも優しいお料理で大好き。

折しも北海道は秋鮭漁最盛期、魚売り場にはピカピカの秋鮭が並び、

キッチンには魔法の小瓶「五香粉」もスタンバイ、

これは作らないわけにはいきません。

材料はと・・・秋鮭、五香粉、粗塩、酒、上新粉、揚げ油、以上。

超シンプル。

まずは新鮮な秋鮭の切り身を皮をつけたまま一口大に切り、

五香粉、粗塩、酒で下味をつけます。

お塩は宮崎県の「ひむかの国 北浦産の塩 海みたま」。

山から水が流れ込む場所から船で海水を運び、

木材を燃料に焚き上げて作ったお塩とか。

神話の里を思い起こさせる優美な名前が印象的。

北海道産の秋鮭と南国宮崎の塩と中国の五香粉が出会って、

さあ、どんな味を醸し出してくれるのでしょうか。

10分ほどおいたら、あとは上新粉をまぶして揚げるだけ。

片栗粉でも小麦粉でもなく上新粉を使うのがポイント。

上新粉はうるち米が原料なので、たんぱく質のグルテンがなく、

水分を加えても粘り気が出ないそうです。

なので、衣も厚くならず、油の吸収も抑えられ、

カラッと揚げることができるとか。

エライぞ、上新粉、味にもカロリーダウンにも貢献してくれる。

さあ、下味をつけた秋鮭に雪のような上新粉をさっとまぶし、

フライパンにオリーブオイルを少なめに入れて180度くらいに熱し、

そっと並べて、むやみに触らず、じっと待ち、一度裏返し、

3分ほどで引き揚げ、あとは余熱でじんわり加熱。

そうすることでジューシーな仕上がりになるそうです。

う~ん・・・揚げているそばから五香粉のエキゾチックな香りがする。

秋鮭が泳ぐ青い海をイメージして、

大嶺工房のペルシャ秞の大皿に盛りつけます。

さあ、熱々の揚げたてを召し上がれ~。

さっくり・・・ふんわり・・・中ジューシーで・・・香り高い・・・。

秋色に染まった美しい身がエキゾチックな香りをまとい、

よくある「鮭のから揚げ」とか完全に別物。

シンプル&スパイシーな異国風一品料理に仕上がっています。

やっぱ、凄いぞ、五香粉。

ウーさんによれば

「揚げものや煮物、叉焼など香りが欲しいとき、

カレー粉のように使うと重宝します」とのこと。

あまり馴染みのない中国スパイスですが、

なるほど、カレー粉の要領で使いこなせばいいのね~。

独特の強い香りがあるので、使う量は控えめに、

魚や肉のくさみを中和してくれますから、

今回の秋鮭以外にもサバやブリ、鰯、秋刀魚などの

少しクセのあるお魚とも相性が良さそうです。

うふふ、次は脂がのってきたサバあたりで試してみようかな~。

驚くほどシンプルな調味料、簡単な調理法なのに、

驚くほどさっくり揚がり、複雑で魅惑的なスパイスが香る。

冷めても美味しいので、お弁当のおかずにもなるし、

キュートなピックでお洒落すればチャイナ風タパスにも。

これからのパーティーシーズンにも活躍しそうです。

最近、イタリアを舞台にした内田洋子のエッセイを読んでいるのですが、

その中の一編にナポリの名家の令嬢が豊かな未来も財産も捨てて、

修道院に入る選択をするというお話がありました。

「明日朝には出発するの」。

著者に別れを告げる彼女の足元には小さな黒い鞄がひとつ。

修道院に持っていけるのはこの鞄に入る物だけ。

彼女がその中に入れた物とは

聖書とロザリオと誕生前に母が刺繍し用意したリネンでした。

小さな黒い鞄に入れる物。

これまでの人生の中から

果たして私たちは何を選ぶのだろうか。

著者の問わず語りに、今ならこう答えるかもしれない。

「キッチンにある魔法の小瓶をひとつ」。

五香粉(ウーシャンフェン)さえあれば、

お料理が超楽しい秋冬です(笑)。

(写真は)

秋色の染まった香り高い北の魚

「秋鮭の五香粉風味から揚げ」

修道院のシスターたちにもご馳走してあげたい。

小さな黒い鞄にスパイスを忍ばせる。

そんなお料理好きのシスターもいたかも。

読書の秋、想像力は自由に旅する。