東京の味

ピンク色の美しい箱の中には

「瀟洒」という形容詞がふさわしい焼き菓子が。

砂糖衣をまとったパイを一口。

夫が思わず呟いた。

「東京の味がする」。

東京ー札幌間といえば日本一のドル箱航空路線。

今や電車並みの頻度で飛行機が飛んでいて

物理的にも心理的にも「東京」はものすごく近くなったけど、

時々、こういう味に出会うことがあります。

お洒落で垢ぬけていて瀟洒な「東京の味」。

きっと北海道人が抱く「東京」のイメージそのものなんだろうな。

晩秋の北海道旅行で札幌に立ち寄った東京在住の知人から

自宅近くで評判というお店のお菓子を頂きました。

「JUN UJITA PATISSERIE」。

箱と同じピンク色の美しいショップカードの地図を見ると

おお~、サレジオ教会のそば、目黒の高級住宅街ねぇ。

ご近所マダムたちご用達のパティスリーとお見受けした。

そりゃあ、「東京の味」がするわけだ(笑)。

さっそくお店のHPを拝見。

ふむふむ、頂いた箱は「フールセック」の詰め合わせ。

「フールセック」とはフランス語で「窯で乾かした」という意味で

「良く焼いたお菓子」、つまり焼き菓子ってこと。

フランスの伝統菓子、地方菓子を中心だそうで、

そうそう、これこれ、最初に感動した焼き菓子「アルレット」。

シナモンの香りが大人っぽい楕円形の薄焼パイは

鼻腔の駆け抜ける香ばしいバターの風味が素晴らしかった。

そして昨夜、1週間のお疲れさまの金曜日の夜、

ボジョレー・ヌーボーを楽しんだ後のデザートに頂いたのが

ねじったパイ生地をスティック状に焼きあげた「サクリスタン」。

挽いたコーヒー豆と焦がしバターの香りが印象的。

焼き色も素材の風味をしっかり感じられるお菓子たちは

「仏蘭西菓子」と漢字で書きたくなるような力強さがあります。

焼き菓子フェチの私にはたまらない「東京の味」。

今よりずっとずっと東京が遠かった時代、

子供の頃の「東京の味」といえば、

「虎屋」の羊羹に「泉屋」の缶入りクッキーだったなぁ。

東京出張は泊りがけだった時代、

父の出張鞄には大事そうに入っていた「東京の味」。

デパ地下もネット通販もLCCもなかったあの頃、

東京は遠くて美味しい都だった。

いつでもどこでも美味しい物が手に入る生活に

すっかり慣れてしまっていたけれど、

夫が呟いた素朴な一言がひどく懐かしく胸に響いた。

「東京の味がする」。

ピンクの箱のフールセックを味わいながら

ふと昭和が蘇ってきた金曜日の夜でした。

(写真は)

しっかり焼かれた仏蘭西菓子たち。

ひとつひとつに真心を感じる。

「東京の味」少しずつ大事に頂きましょう。

ピンクの箱と昭和のクッキー缶が重なった。