蝦夷ブランド

燃える紅葉に誘われて芸術に酔う。

この週末は、ザ・芸術の秋。

美しい極彩色の衣装に身を包んだ

12人の勇者に会いにいきました。

この秋、話題の展覧会「夷酋列像」展です。

天高く、透き通った青空が広がる土曜日、

国道12号線を厚別方面へ向かって40分ほどのプチドライブ、

到着したのは広大な森林公園に抱かれた北海道博物館。

まわりの原生林は燃えるような赤や黄色に色づき、まさに紅葉の盛り、

紅葉狩りと芸術の秋を一度に楽しめる素敵なロケーションにあります。

ここで開かれているのが、話題の展覧会、

「夷酋列像~蝦夷地イメージをめぐる人・物・世界」。

展覧会の目玉は極彩色の衣装に身を包み立ち並ぶ、

12人のアイヌの首長たちを描いた「夷酋列像」であります。

松前藩家老を務めた画人、蠣崎波響が寛政2年(1790)に描いた作品で

時の天皇や諸藩の大名たちに称賛を受け、多くの模写を生み出しました。

そんな貴重な美術品が31年前、何故か遠いフランスのブザンソン市の

美術考古学博物館の所蔵庫で偶然発見されたのです。

その経緯もまたいまだに謎で、美術史的にも社会的にも

大いに興味をそそられるミステリアスな芸術作品でもあるのです。

江戸期の北海道、つまり蝦夷地で生まれながら、

現住所(?)はフランス、ブザンソン市である「夷酋列像」、

道産子もなかなか本物にお目にかかる機会がなかったのですが、

今回の展覧会は蠣崎波響筆のブザンソン美術考古学博物館所蔵本と

国内各地の諸本が初めて一堂に介する画期的な企画。

これはプチドライブしてでも出かけなくてなりません。

さらに「夷酋列像」に関わる絵画、美術品、民俗資料、

地図、文書など幅広い資料を展示することで

作品が生まれた18~19世紀の北海道とアイヌの社会、

さらにロシア、中国、朝鮮といった北東アジアとのつながりなど

世界史的、地球儀的視野から「蝦夷地イメージ」を体感できるとあって、

昨日の会場も郊外の博物館とは思えない盛況ぶり。

一瞬、ルーブルの「モナリザ」前の人だかりを思い出しました(笑)。

いや、とにかく「夷酋列像」、一度でも写真などで見ようものなら、

誰でもハートをがしっとつかまれます。

それまで目にした浮世絵とか日本画とは一線を画した、

迫力、というか、圧倒的な美の力に一目惚れしました。

その本物が・・・まもなく・・・目の前に・・・。

しかし・・・その目の前には・・・人、人、人(笑)。

細密な筆使いが特徴の作品、一枚につき一人の割合で顔を近づけ、

それはじっくりじっくり目を凝らして観賞しています。

かなりのスローぺース。

しかも作品保護のため、照明を落とした館内は

ほとんどホテルのバー(笑い)。

先客の横からなんとか遠目に作品や説明書きをのぞこうにも

暗いホテルのバーでメニューの文字が読めないのと同じ。

大人しく、自分の番が回ってくるまで、

じ~っと行列に並ぶしかありません。

週末の北海道博物館は行列のできるアートスポットだった。

少しずつ、少しずつ、「夷酋列像」が近づいてきた。

う~む、何だかアイドルの握手会に並んでいるようでもある(笑)。

「会いにいける」超一級の美術作品ってことでは似ているか。

おおお・・・先客がそっと作品の前を前を離れました。

いよいよ・・・ご対面。

トップバッターは「夷酋列像・マウラタケ」。

ウラヤスベツ(斜里町)の首長。

その鋭い眼光と精悍な顔つきは

見る者をひるませるほどの迫力があります。

12人のなかでは珍しい座像で描かれていますが、

いわゆる体育座りのようなちょっと可愛い(笑)ポーズなのに、

なんなんだ、この圧力、ど迫力は。

思ったよりも小さな絹本着色の作品ながら

画面から燃え立つような存在感を放っています。

まるでラグビーW杯の戦士並みの肉体、

それもスクラム前列、屈強なFW体型の首長の姿が

怖ろしく執拗なほどの細密な筆使いで描かれているのです。

漆黒の髪や髭の生え際、爪の縦すじ、踏み込んだ足の指先の毛までが、

超ミクロサイズの線で一本一本描かれています。

こんな細い線を描ける筆がこの世に存在するのだろうか。

顕微鏡サイズの細密な線が集合して圧倒的なエネルギーを放つ。

まるでニュートリノ素粒子が集まり宇宙を生み出すごとく。

対極が生み出す美の凄みに立ち尽くす。

そして画面のファッション、インテリアにも目を奪われます。

マウラタケが座る豪華な敷物、その上にはまたまた豪華な毛皮が。

どうやら当時、貴重だったラッコの毛皮らしい。

身にまとっているのは緋色に近いオレンジ色の蝦夷錦。

中国から渡ってきたこれまた当時の超高級ブランド。

さしずめ今でいえば、フェラガモの毛皮の上に

エルメスを着て座っているみたいなものか。

マウラタケに続き、チョウサマ、ツキノエ、ションコ、イコトイ、

シモチ、イニンカリ、ノチクサなどなど、

描かれた12人は前年に起こった「クナシリ・メナシの戦い」で、

松前藩による鎮圧に協力した首長たちとされています。

この作品は幕府に対し、我が藩は彼らをコントロールできてますよと

アピールするために描かせたプロジェクトと言われていて、

中国風の衣装やロシア風の外套など豪華な衣装も

松前藩があえてアイヌの人々の異質性を強調するために

作為的に描かれたとも見られています。

しかし、展覧会をつぶさに見ていくと、

フェラガモ風の毛皮もエルメス的豪華衣装も

全くの虚構というわけではなかったことが徐々にわかってきました。

18~19世紀の世界地図を「蝦夷地」を中心に眺めてみると

それは鮮烈で興味深いイメージがわき上がってくるのでした。

同時に蝦夷と京を結ぶ雅なつながりも発見。

ヒントは「夷酋列像」12人のなかの紅一点の絵のなかにありました。

チキリアシカイが囁く雅な秘密は

また、明日。

芸術の秋、心が満腹しました~。

(写真は)

紅葉の博物館前にて。

「夷酋列像」の皆さまとともに(笑)。

ファッション的にも数々のインスピレーション。

リーダーたちの「夷酋列像」的ボヘミアンな着こなし、

素敵でした。