一かごの贈り物

秋が深まり、初雪が降り、冬が近づくこの時季、

毎年、無性に、さつまいもが食べたくなる。

じゃがいも王国北海道、

肉じゃが、ポテサラ、ジャーマンポテトなど楽しんでいるけれど、

甘いほくほくのさつまいもを欲する急性症状が現れる。

晩秋性さつまいも食べたい症候群(笑)。

もう、食べるしかない。

ご近所スーパーでお目当ての秋の味覚を探してみると、あるある、

「鳴門金時」「黄金千貫」「紅あずま」などなど色々な品種がずらり。

ホント、今は様々な品種のさつまいもが売られています。

赤い皮が美しいおいも、スリムだったり、ずんぐり体型だったり。

う~ん、どれにしようかな~と悩んでいると、

ん?地味な薄い土色をした小ぶりなさつまいもを発見。

見た目は冴えないけど・・・。

おおお、噂の「安納芋」ではありませんか。

マスクメロンよりも甘いという種子島特産のブランドさつまいも。

以前、安納芋の焼き芋を食べたことがありますが、

鮮やかなオレンジ色、ねっとりとしたクリームのような食感、

ぶっ飛ぶような甘さに感動したものです。

生の安納芋を使って料理したことはなかったよね~。

よし、3本入りの袋をお買い上げ決定。

鉄砲伝来とロケットで有名な鹿児島県種子島。

ここで栽培されている「幻の芋」とも呼ばれる品種が「安納芋」。

手のひらにおさまるほど小さなおいもながら、

生の状態で糖度は16度にもなるといい、

マスクメロンの14度を超える飛び抜けた甘さを誇ります。

もはやスイーツを超えるブランド芋誕生までには

種子島と琉球の友情物語がありました。

時は元禄時代、沖縄が琉球王国だった頃。

種子島では相次ぐ台風の被害とその後の日照りによって農地が荒れ、

食うや食わずの厳しい暮らしに苦しむ島民たちの間にある噂が。

「琉球に夢のような作物がある」。

日照りに強く、収穫が多く、しかも味も旨いという噂の作物があれば

飢えに苦しむ島民を救えるのではないか。

当時の島主だった種子島久基は琉球の王様に

その作物の苗を分けてもらえるよう親書を送ったのでした。

それから1年後、琉球から一かごの苗が届きました。

久基はわずか一かごの貴重な苗を無駄にしまいと

信頼を寄せる家臣に栽培を命じましたが、

ツルや葉がすくすくと育つものの、一向に花も咲かないし、

実がなりそうもないまま、秋になり、ツルも葉も枯れてしまいました。

もはや、切腹覚悟で枯れたツルをえいやっと引き抜いたところ、

土の中からおいもが連なって出てきたのです。

日本初のサツマイモ栽培に成功した瞬間でありました。

それから長い年月が経ち、

種子島では様々な品種のサツマイモが栽培されようになり、

その中の安納地区などの農家が自家用に育てていた、

とろけるように甘いオレンジ色のおイモが「安納芋」でした。

飢饉に苦しむ島民を救った一かごの苗。

琉球から贈られた友情の一かごが人々の飢えを救い、

ひいてはスイーツを超えるブランド芋まで生み出したのでした。

海を渡って届けられた一かごの苗。

そこから長い年月を経てマスクメロンよりも甘いおイモが生まれた。

本当に噂通り「夢の作物」だったのですね~。

琉球~種子島のおイモ歴史物語を胸に刻みながら、

さあ、目の前の安納芋をクッキング。

ほんの少しの三温糖とレモン汁と蜂蜜を入れて

「安納芋のレモン煮」に仕立てました。

一かごの苗を贈ってくれた琉球の器、

やちむんの大皿に盛り付けましょう。

種子島と琉球がお皿の上でしばしの邂逅。

爽やかで甘い夢の味がした。

(写真は)

そのままでじゅうぶん甘い安納芋に

レモンの酸味がいいアクセント。

軽い赤ワインにもよく合います。

鉄砲とロケットと安納芋の島。

いつか旅してみたいなぁ。