アチコーコー・ソウル

揚げたててんぷらの温もりを胸に

惜別の朝市場を歩くお別れの朝。

「夏の沖縄旅」9日間のリポートも最終章となりました。

空港に向かうぎりぎりの時間まで

那覇の市場通りで最後の買い出しをしています。

いつも通う青果店で元気なゴーヤー、ナーベラー、

摘みたてのハンダマーを買いこみ、お隣のお惣菜屋さんで

沖縄のソウルフード、熱々のてんぷらもゲット。

そのとき、作りたてのおかずやお弁当が並ぶ店先に

沖縄の朝の風景を発見しました。

ビニール袋につめられたいくつもの白い大きな塊。

そっと指で触れると、「あ、熱い」。

そう、アチコーコーの島豆腐であります。

冷たい水の中にゆらゆら揺れる、

「ヒジュルコーコー(冷たい)」な県外の豆腐とはまったく違って、

出来たて熱々「アチコーコー」なのが沖縄県民が愛する島豆腐。

生の大豆を搾り、海水で固め、水にさらさず仕上げる島豆腐は

重く、大きく、固く、そしてあくまで熱く、かつ旨い。

最近は札幌のご近所スーパーでも島豆腐が買えますが、

パック入りの冷たいものしか手に入りません。

市場にでんと並ぶアチコーコーの島豆腐は、

沖縄でしか出会えない朝の風景なのです。

この温かい島豆腐は沖縄プライドの固まり。

本土復帰に伴って食品衛生法が適用され、

温かいままの豆腐を販売できなくなるという危機に見舞われましたが、

「アチコーコー豆腐消滅は沖縄豆腐文化の危機」と、

当時の豆腐組合などが日本政府に直談判、

結果、沖縄だけは温かい豆腐の販売が許可されたという

まさにアチコーコーな歴史があるのです。

「豆腐好きの人」のことを沖縄の言葉で「トーファー」と言いますが、

島豆腐の命を奪う法律に立ち向かったトーファー魂はあっぱれの一言。

かくして今でも市場はもちろん、沖縄のスーパーでは

一日に何度も「アチコーコー」の島豆腐が入荷し、

売り場には入荷時間を知らせる紙が張ってあったりします。

豆腐は温かいまま食べるのが当たり前、なんですね。

これが旅人にはなかなか難しい。

入荷時間に合わせて売り場で待っているわけにもいかず(笑)、

今、目の前にアチコーコー島豆腐が並んでいても

数時間後には機上の人、1万m上空を飛んでいるうちに

ヒジュルコーコーになってしまう・・・う~ん、残念無念。

那覇の朝風景を持ち帰ることは不可能。

でも、それでいいんだ。

いくつかの未練を残して去るからこそ、

またこの地に旅したくなるのですから。

今度来た時は絶対にアチコーコーな島豆腐を

大きなスプーンですくって食べてやるぞぉ~。

新たなモチベーションがまた湧きあがってくる。

なんちゃってトーファーになるんだもん(笑)。

熱々てんぷらといささかの未練を胸に抱いて

朝の市場通りを時計を気にしながら急ぎ足で歩く。

あ、あそこのかまぼこも買っていかなくちゃ。

「え~っとね、野菜とアーサーとイカを少しずつ」。

糸満のかまぼこ屋さんで「チキアギー」をみつくろう。

魚のすり身に野菜や海藻を混ぜて揚げた揚げかまぼこ。

鹿児島の「つけ揚げ(薩摩揚げ)」に名前も姿も良く似て。

薩摩揚げのルーツとも言われています。

一口大のぷりっとした「チキアギー」はビールのつまみに最高。

お留守番の夫も大好物の沖縄おかずです。

ローカル色が濃かった市場通りもいつしか

国際通りに近づくにつれて観光客の姿が増えてきました。

揚げたてのサーターアンダギーが並ぶ老舗のお菓子屋さんで

かつての王朝菓子「クンペン(薫餅)」や「マキガン(巻き菓子)」、

沖縄らしい冬瓜餡のお饅頭などを買いこみます。

これらはお仏壇用も兼ねて、ご先祖さまへの気遣いも忘れていけません(笑)。

さあ、札幌の夫へも、ご先祖さまへも、無事に旅土産ゲットしました。

ホテルに戻ってチェックアウト、レンタカーを返して

那覇空港に向かいましょう。

9日間の「夏の沖縄旅」。

沖縄本島、伊江島、宮古島、伊良部島、下地島、池間島、来間島と

レンタカー、フェリーを使って7つの島を巡ることができました。

そこで出会った風景、人々、歴史に文化、豊かな食。

そのすべてに心からの感謝を捧げます。

ほぼ3カ月に渡って徒然なるままに旅リポートを綴ってきましたが、

まだまだ書き足りないほどの思い出がたくさん、そして

アチコーコーの島豆腐のように「未練」」もたっぷり残っています(笑)。

知れば知るほど、思いは深くなる。

これって、何かに似ている。

恋する沖縄。

夏の旅は終わっても、旅人の恋は終わらない。

遠く離れた恋人の手紙をそっと開くように、

旅の写真を見つめる日々がまた始まる。

旅と恋は、良く似ている。

(写真は)

青い空、コバルトブルーの海、亜熱帯の花々にも負けない、

沖縄の原風景のひとつ。

朝の市場に並ぶアチコーコーの島豆腐。

重く、大きく、固く、熱い。

沖縄の人々の絆とソウルのようだ。