沖縄リポートその⑥~涙のおふくろ

ああ・・・国際通りの椰子の木が

暴風になぎ倒されそうになっている。

台風9号が沖縄を直撃、宮古島、本島などを暴風域に巻きこみながら北上中。

テレビ中継が伝える那覇の映像は1週間前とは一変していました。

島のカツオ漁も休漁ね、収穫真っ盛りのマンゴーは大丈夫かしら。

旅先で出会った沖縄の豊かな風景が蘇り、心配になります。

爽やか過ぎるほどの青空が広がる札幌から

心からお見舞い申し上げます。

思えば旅の始まりから終わりまで天候に恵まれた夏の沖縄旅。

あらためて沖縄のさまざまな神様、そして旅の神様に感謝する朝です。

ではそんな「沖縄夏旅・2日目リポート」は意外な沖縄ごはんのお話。

朝から沖縄の焼き物の聖地読谷村へ「やちむん巡礼」ドライブ。

追憶のアメリカンダイナー「シーサイド・ドライブイン」で遅いランチをすませ、

帰り道は東海岸に抜け、辺野古の海を遠くに望み、車は329号線へ。

宜野座村、金武町、うるま市、沖縄市、北中城村、中城村と

本島のイーストコートの街の生活感を体感しながらロングドライブ。

高速道路では感じられない風景、情景を胸に刻みながら

暮れなずむ那覇へ帰ってきました。

さあ、今晩は、念願のあの沖縄ごはんが待っている。

暑い沖縄で、熱々のおでん!

そう、南のグルメ天国の隠れた名物が「沖縄おでん」なのです。

雪がしんしんと降る寒い冬だけがおでんの季節じゃない。

南国には南国ならでは絶品おでんがあった。

目指すお店は「おでん専門店 おふくろ」。

おでん作り20年のベテラン女将が那覇のビジネス街に店を構えて10年以上、

開店と同時にお客が殺到する予約必至の超人気店、

もっちろん、遠い札幌から事前予約しておきましたよ、うふふのふ。

ホテルからお散歩気分で歩ける距離にあるのがまた嬉しい。

久茂地川を渡った夕暮れのビル街の横道を入ると、

ほわんと温かな赤提灯が。赤瓦の庇に使いこんだ暖簾。

いいねぇ~、この風情、絶対、中で吉田類が飲んでいそうだ(笑)。

「こんばんは~」「いらっしゃぁ~い、予約のお客さん?」

ニット帽にお洒落な眼鏡がトレードマークのおふくろ、いやいや女将さんが

カウンターのおでん越しに聞いてきます。時刻は6時半、

宵っ張りの那覇っ子にとってはまだまだ序の口の時間だというのに、

店内はほぼ満席状態、噂にたがわぬ人気店のようだ。

ほっ・・・予約しといて良かったぁ。

「じゃ、あそこに、お二人さんね」。女将さんが首と目線で促す。

決して広くはない店内の真ん中のテーブル席に座ったものの、

お隣さんとは肘がくっつきそうな親密具合、ほとんど昔の学食気分(笑)。

「何ニシマスカ?」中国人らしきバイト君が健気に注文を聞いてくれる。

「とりあえずオリオン生ね」。と、ここまでは普通。

実は超人気店「おふくろ」の注文システムが凄いのだ。

40種類を超すおでん種と20種類のお惣菜が食べ放題、

ソフトドリンクと泡盛飲み放題(ビールは3杯、酎ハイは5杯まで)で、

なんとお一人さま2時間で2000円という涙物の太っ腹価格。

そりゃあ、開店と同時に満席にもなるわなぁ。

しかし、そう大食漢でないワタシ、

「食べきれる・・・?単品で頼む?」なんて躊躇していたら、

お隣の夫婦連れのご主人が「絶対、食べ放題がお得ですよ」と力強く一言。

笑顔の奥さんも無言でうなづき同意を示す。

ここは先客のアドバイスに従うのが賢明のようだ。

「あ、はい、わかりました!じゃ、ここも食べ放題で」とバイト君に応えると、

「えっと、コレに書いてクダサイ」とテーブルの上のシート表と鉛筆を指差す。

おおお、ちょっと前の回転寿司の注文スタイルね。

「大根」「こんにゃく」「昆布」「玉子」・・・

ごくノーマルなおなじみのおでん種も並んでいますが、

「テビチ」「チマグ」に「ソーセージ」・・・!

およそ通常のおでん屋ではお目にかかれない異彩ネタが目を引く。

「テビチ」は豚のスネ、「チマグ」はつま先で沖縄おでんに欠かせない存在。

じゃあ、「テビチに~、青菜も珍しいよねぇ」なんて鉛筆でしるしつけていたら、

「今日の青菜は空心菜、だそうです」とお隣のご主人のナイスフォロー、

ありがとうございますっ、肘、いや袖触れあうも多生の縁、

いいなぁ、こんな何気ない、あったかい旅先の出会い。

沖縄赤提灯マジックだよねぇ。

無事に1回目の(だってお代わり無制限だもん♪)注文済ませたら、

カウンター横のお総菜コーナーへ。まぁ~あるわあるわ、

お刺身、沖縄てんぷら、海ぶどうに人参シリシリ、各種ちゃんぷるー、

美味しそう沖縄家庭料理がずらりと勢ぞろい。

困った、悩んだ、お惣菜でお腹いっぱいになるのはまずい、

おでんとの兼ね合いが問題だ(笑)。

ふと手書きの小さな張り紙が目に入る。

「日本人の美徳 食べ物は大切に 残さず食べましょう」的な文言。

み、見抜かれた・・・さすが「おふくろ」、

食いしん坊の心理をよく理解していらっしゃる。

大人しく、そ~っと静かにブレーキを踏むように

お惣菜を少量ずつ取り皿に盛るのでありました。

胃袋の容量を慎重に計測しながら(笑)お惣菜をつまみ、

オリオン生をグビグビしていると・・・、

「はい、お待たせシマシタ~」。

可愛いバイト君が熱々のおでん皿を運んできました。

おおお~、皿からはみ出すような「テビチ」圧倒的な存在感。

どさっっと添えられた鮮やかな青菜の緑が冴えわたる。

淡麗滋味な関西おでんとは、全く趣を異にした濃厚な佇まい。

沖縄おでんは実に官能的だ。

「ねぇ・・・食・べ・て・・・」と誘っているような、ぷるっぷるの「テビチ」に箸を入れる。

あるかなきかの手ごたえの次の瞬間、

ふるりと箸が皮とお肉と骨の間に飲みこまれていく。

もはや芸術の域に達するこの煮込まれ加減。

箸で挟むと崩れそうなほどとろとろになったテビチをそ~っと口へ運ぶ。

ほよ~~~・・・。と・ろ・け・たぁ~。

沖縄おでんのディーヴァ、一瞬で虜になってしまいました。

それほど大食漢ではないはずの(笑)ワタシなのに、

「えっと、次は冬瓜と、昆布と、やっぱり大根もね」、

メニュー表にすらすら走る鉛筆、追加注文が止まらない。

片方のお隣の席にはアメリカ留学中という息子と同世代の若者とお父さんが

親子水入らずのひとときを楽しんでいました。

「やばい、旨っ、でも、食べきれる?」なんていいながら

次々と平らげる若い食欲は爽快、いい眺めでありました。

おでんもお酒も2時間食べ放題、飲み放題。

豚に島野菜に昆布に、沖縄の幸をじっくり煮込んたおでんを囲んで、

一期一会のお客たちがあったかな湯気に包まれて

不思議な連帯感が出来上がる素敵な空間。

那覇の久茂川にほど近いビジネス街の一角、

ほんのりと温かく灯る赤提灯を見つけたら、

ぜひ一度、暖簾をくぐってみてください。

太っ腹価格と絶品おでんが涙線を刺激するはず。

涙の「おふくろ」は、超旨かった!

(写真は)

見よ!お皿からはみださんばかりの迫力の沖縄おでん。

テビチはコラーゲンたっぷり、旨みたっぷり、

臭みなど皆無、驚きの仕上がりです。

マグロのとろを思わせるような上質な濃厚さがたまらない。

クセになる奇跡のおでん種。