沖縄リポートその⑤~追憶のドライブイン
7月の沖縄に台風9号が接近中。
きょうの夕方から暴風・大雨に見舞われる恐れがありそうです。
先週まで那覇に滞在しているときも
「この夏は妙に湿度もあるし、雲も多いし、
もうフィリピンで台風も発生しているし、いつもの年と違うんですよねぇ」と
那覇のホテルのフロントマンもタクシーの運転手さんも首をかしげていました。
関東は雨ばかりだし、どうも不安定な空模様の夏。
愛する沖縄、どうか大きな被害などでませんように。
さて、その台風も遠い南の海で生まれたばかりの頃。
夏真っ盛りの沖縄旅2日目リポートを続けましょう。
朝から読谷村で窯元巡り「やちむん巡礼」に夢中になっているうちに
とっくにお昼を過ぎ、お腹はぺこぺこ。
今日のランチタイムは沖縄の人々の心の故郷、伝説のドライブインで。
その名は「シーサイド・ドライブイン」。
1967年にオープンした沖縄最初のドライブインです。
つい先日のNHK「ドキュメント72時間」で
「沖縄・追憶のアメリカンドライブイン」と題して
このお店を取り上げていたのですが、
60年代そのままの懐かしいアメリカンダイナーに集う人々の表情、
お客の誰もが「最高」「懐かしい」「これでなきゃ」と絶賛する特製スープ、
時代のうねりとともに生きてきた沖縄の人々のソウルフード、
絶対に、実際に、行ってみなくちゃと出発前から決めていたのでした。
直前に訪れた読谷村の窯元「工房 十鶴」の柄溝さんご夫妻も
小さな娘さんを連れてよく行くそうです。
「なんてことないスープなんですけど・・・懐かしいんですよねぇ。
旨いまずいという範疇を超えて・・・そう、体に沁み込んでるっていうか」。
沖縄出身の聖子さんが遠い目をして(笑)語ってくれました。
「ここから58号線を恩納村に向かって走って、
一本、海沿いの道に入って下さいね。
地元の車がいっぱい止まっているから、すぐわかりますよ」。
丁寧に道案内までしてくれてました。
本当に昔から地元に愛されているドライブインなのね~。楽しみ~。
やちむんの聖地読谷村から沖縄本島を縦断する国道58号線を北上、
ほどなくお隣の恩納村に入ります。
このあたりは有名なビーチリゾートも多いエリアで何度も走っていますが、
多くの観光客が通る幹線の58号線から一本海側へ入ると
郵便局に小さな商店、昔ながらの海産物レストランなどが立ち並び
一気にローカルムードが濃厚になってきました。
この海沿いの道は知らなかった。
追憶のドライブインはどうやら地元の生活圏に根づいているらしい。
恩納村の美しい海岸線を左手に見ながら車を走らせていると、
お、おおお~、何だ何だ?
いきなり、車がびっしり止まっている白い建物が見えてきました。
「OPEN24HOURS SEA SIDE DRIVE-IN」。
ノスタルジックな字体の看板が泣けてくるぅ。
まるで映画「アメリカン・グラフィティ」の一場面のよう。
今にも若き日のリチャード・ドレイファスが店から出てきそうだ。
駐車場に止まっている車に「わ」ナンバーは1台もなし。
レンタカーで訪れる観光客はほとんどいない地元御用達の店ってっこと。
おおお~、「ドキュメント72時間」で観た通りだぁ、テイクアウトコーナーでは
例のスープを買い求めてる地元客が列を作っています。
30度を超える南国の暑さの中、5つも6つも熱いスープを抱えて車に向かう人々。
キンキンにエアコンが効いた車の中で家族そろって
シーサイドドライブインのスープをすする。
沖縄的家族団らんの風景のひとつなのかもしれませんね。
「シーサイド」の看板を見たら、無性にあのスープが飲みたくなる。
もはや条件反射的ソウルフード。
そんな風景を眺めながら、いざドライブインへ。
およよ~、もう昼の1時を過ぎているのに店内は満員。
待っているお客さんもいっぱい。
アロハ姿の腰の低い支配人風のおじさんが
「お料理出るまで50分かかるかもしれませんが、お待ちになりますか?」と
申し訳なさそうに聞いてきます。
急ぐ旅でもなし、「はい、大丈夫です、待ちますよ」と答えたものの、
こりゃ、NHK効果かと一瞬思いましたが、
店内は地元やアメリカ人の家族連ればかり。
どうやら普段から昼時はこんな混みようらしい。
外観だけじゃなく、店内も60年代のアメリカそのまま。
赤いギンガムチェックのテーブルクロス、
ウェイトレスがガラガラとでっかなワゴンでお料理を運ぶ向こうには、
派手なアメリカ車のレプリカやモデルカーがでんと鎮座し、
隣に年代物のジュークボックス、しかもちゃんと現役。
「OB-LA-DI OB-LA-DA」と「大阪しぐれ」が仲良く並ぶ選曲が涙物。
58号線から海沿いに入った瞬間に60年代にワープしたような錯覚に陥る。
それほど待たされることなく海沿いの席に案内され、
さっそく伝説のスープとシーサイドサンドイッチと
ウェイトレスのおばちゃんおすすめの「タコボール」を注文。
運ばれてきたスープは具が少なめのクラムチャウダー風。
そうとう濃度はどろりと濃厚なのに、味はしつこくない。
「旨いまずいの範疇を超えた懐かしさ」という聖子さんの言葉が蘇る。
ちょっと給食のシチューを思い出すような郷愁をそそる味。
初めて食べたのに、沖縄生まれでもないのに、
「懐かしい」と心に沁みる不思議なスープ。
たっぷりコショウをかけるのが正しい食べ方らしい(笑)。
お隣のテーブルでは
くるくるの巻き毛が可愛い褐色の肌をした女の子を中心に
アメリカ人の三世代家族がわいわい遅いランチを楽しみ、
その向こうのテーブルでは80歳は超えていそうなおばあちゃんが
50がらみの息子を前に名物のチャップステーキを頬張っている。
デート中らしい向かいのカップルの彼氏は
これまた名物「フライドライス」を盛大にかきこんでいました。
追憶のドライブインには、沖縄の日常がありました。
占領時代に米兵相手に始まったというお店。
赤いギンガムチェックのクロスは。
1967年から沖縄の移り変わりをじっと見つめて続けてきたのでした。
ベトナム戦争時に台湾から渡ってきた人、
恋人を追いかけアメリカへ渡った女性、
72時間据えられたカメラがさまざま人間ドラマを捉えたのは
決して偶然でもなんでもないんだなぁ。
時間さえ許すならば、日がな一日、この窓辺の席で過ごし、
今の沖縄の日常を肌で感じてみたい。
そんな誘惑にかられる魅力あふれる空間。
古き良き追憶のアメリカンダイナー。
「シーサイド・ドライブイン」。
恩納村に入ったら、一本海沿いの道に入って下さい。
60年代そのままの世界にワープできます。
(写真は)
美しい海沿いに
突如60年代のアメリカが出現する。
24時間営業かぁ・・・。
夜のシーサイドドライブインも気になるなぁ。
「リヴステーキ」から「うな丼」「酢豚」まで網羅する
ちゃんぷるーなメニューも魅力的。
誰にもオープンマインドな追憶のドライブイン。

