沖縄リポートその③~やちむんと朧月

さあ!夏の沖縄をとことん楽しむぞぉ~!

心から島魚を愛するディープでマニアックなお店「いゆじ」で

沖縄の海の恵みをお腹いっぱい堪能した翌朝。

旅の2日目、本格始動開始であります。

まずは我が心のふるさと「やちむんの里」をめざして

本島中部の読谷村までやちむんドライブです。

「やちむん」とは沖縄の言葉で「焼き物」のこと。

15世紀初め蒸留酒を入れる南蛮甕とともに焼き物の技術が伝わり、

琉球王府の保護の下、各地に点在していた窯場が壷屋に統合され、

1962年に壷屋焼が誕生。以来数々の名工を生み出してきました。

その後、民芸運動の主導者柳宗悦らによって

やちむんの文化的価値や魅力は更に知られるようになりましたが、

戦後、那覇の街中にある壷屋で薪窯の煙をあげることが難しくなり、

本土復帰した72年にのちに人間国宝となる金城次郎が読谷村に移住。

かねてより伝統工芸が根づいていた読谷村はこれを機に

「ゆいまーる(相互扶助)」精神に基づく「読谷文化村構想」を本格化、

78年、賛同した大嶺實清、山田真萬ら4人の陶芸家たちが

共同で9連坊の登り窯を開き、読谷山焼の名で後に続きます。

92年、彼らのもとで修業を積んだ4人の若き陶工たちが開いたのが

毎年、巡礼のように訪れる(笑)読谷山焼「北窯」であります。

今や「やちむんの里」は14の窯元が建ちならぶ焼き物ファンの憧れの場所。

やちむんをこよなく愛する私にとっては

沖縄そばよりも青い海よりもブルーシールアイスよりも

真っ先に足を運びたい「聖地」なのであります。

那覇から車で1時間ほど。

読谷村の緑濃い丘陵地帯にめざす「やちむんの里」が見えてきました。

ここでのお目当ての工房は3つ。

「北窯」と大嶺實清氏と島袋常秀氏のギャラリー。

まずは我が家の器の多数派を占める「北窯」へ。

松田米司、松田共司、宮城正享、與那原正守、

現代のやちむんをリードする4人が開いた共同窯です。

緑濃いバナナの葉が重たげに茂る読谷の丘の上。

3000坪の敷地に赤瓦の大きな長屋が2棟、30人近くの若者たちが

30度を超える灼熱の地で作陶に励んでいます。

真夏の太陽で真っ白に照らされた土の上を

無言でコロコロと陶土を載せた手押し車を押す若者の額には玉の汗。

この強烈な日差しを利用して素焼きせずに天日干しするのが

やちむん独特の製法。

ろくろで成形された様々な形の器が木の板に整然と並んでいます。

庇の下で寝そべるわんこも余りの暑さに微動だにしません。

灼熱の作業場には人がいるのに「しん」としている。

体力の消耗を避けるために無駄話などしていられないのか、

作陶への情熱が無言にさせているのか、

ここには沖縄のカタチを生み出す静かなエネルギーが満ちています。

それは、饒舌な無言。

民藝を貫く男たちが美しい器を追求する姿に心の中で敬意を表し、

そっと作業場を離れ、器が並ぶお目当ての北窯売店へ。

あれ?いつも開け放っしったよね~。

大きな倉庫のような建物の正面扉が閉まっている。

「おおお~、とうとう冷房が入ったんだぁ、ラッキー」。

去年まで盛大な音の割には全然涼しくない大きな扇風機しかなかったのですが、

素朴な窯元のショップにもとうとうエアコン導入。

まあ~何と涼しいこと。これで汗みどろの器選びから解放される(笑)。

静謐な作業場とは対照的に焼きものファンが熱心に品定めしています。

さあ、今回のお目当ての、あのお皿はあるかな~。

沖縄の赤土を活かした温かみのある肌触りに

「三彩柄」や白い化粧土を施した「イッチン」、

華やかな「赤絵」、水玉みたいな「点打ち」などなど

4人の陶工の個性が光る器たちが誘惑するように手招きするなか、

あ、あった!

大きな平皿に三日月と朧月がまるで幾何学模様のように整然と並んでいる。

これだ・・・このお皿に一目会いたかった・んだ・・・。

與那原正守さんの作品であります。

まるでチェス盤の上に鎮座する沖縄の三日月と朧月。

赤土の上に施した黒い秞を陶工の鉋(かんな)ひとつでかき出していく

「かき落とし」という独特の技法で作られています。

どっしりとした皿の重量感、島の土を思わせる赤銅色の肌。

削いだような鋭さの三日月とぼんやり幻想的な朧月のコントラストは

息をのむほど美しく、静かで不思議な迫力があります。

どこかアフリカンアートを思わせるようなプリミティブな魅力も。

じっと耳をすませると、皿の奥から古代の打楽器のリズムが聞こえてきそう。

惚れた。

一目惚れ。

比較的リーズナブルな「北窯」の器の中ではなかなかのお値段でしたが、

だってぇ、もはや、ライフワークだもん、生きがいだもん、

他に何も買わないから(ホント?)、

このお皿が札幌に行きたいって言ってるから(ホント?)、

数々の言いわけを自分で自分にして、はい、ご購入。

他にもいくつか、セレクトして、宅配便で送ってもらいました。

多分、私よりも先に北海道に着くだろう。

ゆいまーるの気持ちが今も息づく作陶の地で生まれた

原始の美しさをたたえた朧月の大皿よ。

私が帰るまで待っててね。

あなたにお料理を盛り付ける瞬間が今から楽しみ。

冷房が心地よいし、器たちが誘惑するし、

「北窯」のショップにいると時間も財布の上限も忘れてしまいそう。

危ない危ない。

さあ、大嶺實清さんとこの青いペルシャ秞にも会いたいし、

島袋常秀さんとこの華麗な赤絵にもご挨拶したいし、

そうそうこの「北窯」から巣立った次世代の陶工の窯元も訪ねたいし。

ああ、困った。一日36時間あればいいのに~。

焼き物好きはご用心。

読谷村を訪ねるなら時間はたっぷりとりましょうね~。

明日は今や品切れ続出、

東京のセレクトショップが探し求めてやまない、噂のやちむんを探訪。

お楽しみに~。

(写真は)

灼熱の太陽と赤土と濃密な緑と

陶工たちの静寂のエネルギーが満ちている。

読谷村「やちむんの里」。

まずは聖地巡礼であります(笑)