坂道の帽子屋さん

沖縄に帽子を買いに行く。

これほど贅沢なお買い物があるでしょうか。

飛行機に乗ってまでも訪れたい、

那覇の街にはそんな素敵過ぎる帽子屋さんがあります。

夏の沖縄旅3日目リポート、

レンタカーは駐車場に休ませて、

のんびりてくてく気ままな那覇散歩を楽しんでいます。

筋道、横道、脇道、狭い路地を自分の足で歩いてめぐると

暮らす人と同じ目線になるから街がぐっと身近になる。ますます大好きになる。

ゆったり気分のまちまーい(まちめぐり)、さんぽの旅、

さあ、次はどこへ行きましょうか。

年月を経た石垣と赤瓦の屋根が連なる石畳道。

歴史ある窯元が今も残る昔懐かしい壺屋やちむん通りから

かつては「那覇の奥座敷」、今は沖縄文化の発信基地となった桜坂へ。

国際通りから斜めに伸びる高感度なストリート浮島通りで

島野菜のマクロビランチに舌鼓をうち、満足して次に向かったのは

県庁前の坂道に佇む一軒の帽子屋さん。

賑やかな日曜日の国際通りを抜けて

ニュース映像でおなじみの県庁前の交差点から緩やかに続く坂道へ。

右手に議会棟、県庁、その先には沖縄県警のビルが見えます。

その県庁前通りの左側には朝食が美味しいと人気のホテル、

本格的なアイリッシュ・パブ、港川に本店がある絶品タルトのオハコルテなど

見逃せないスポットが何気なく並んでいるのでありました。

国際通りから1分も離れただけの、目の前は県政の中心地に、

「ここは代官山?」みたいなお洒落なエリアがさりげなく存在する。

これだから那覇のまちまーいはやめられない。面白い。

この坂道の途中に何年も通うお気に入りのお店があります。

「analogue(アナログ)」。

絶対に自分に似合う帽子が見つかる帽子専門店。

お洒落の相棒に必ず出会えるセレクトショップです。

小さな店構えのショーウィンドウには

涼しげなパナマ帽にボーラーハット、キャスケットなどなど

形も雰囲気もさまざま帽子が並べられ、

パリの街の帽子屋さんがそっくりそのまま那覇に瞬間移動したかのよう。

数年前、偶然、店の前を通りかかり、

このお洒落な風情に惹かれて入ったのがご縁の始まり。

那覇に来るたびに必ず立ち寄るおなじみスポットのひとつです。

「やぁ~、こんにちは~!お久しぶり~、お元気でしたかぁ?」

いつも明るく温かいオーナーの比嘉さんの笑顔が

夏のトレードマークのこなれたパナマ帽の下で弾けています。

思わず「ただいまぁ~」と返したくなっちゃう。嬉しい再会。

「特に、暑いですよね~、今年、僕らも参っちゃいますよぉ」。

なんて何気ない会話を交わしながらも

お店いっぱいの帽子たちに目を奪われ、心はそわそわ。

やばい、まずい、またまたここの帽子に心が持っていかれる。

あれも、これも、被りたくなってくる。

「そう、帽子の似合わない人なんていないんです。

ご自分の顔の形、頬骨の位置、肩幅などを理解したうえで

型やサイズの合った帽子を選べば、誰もが似合うんですよ。

ためらわず、恐れず(笑)、もうどんどん、じゃんじゃん被ってみてください」。

比嘉さんの帽子愛あふれる言葉はいつも頼もしい。

大学を休学して回ったヨーロッパで花屋を目指していた比嘉さん。

卒業後、東京の大田市場で修業していた時、

休みの日にふらりと立ち寄った帽子屋さんで面白い帽子に出会い、

ついでにバイト募集の張り紙にも出会い、

朝は花市場、昼から帽子屋と二足わらじ生活を経て、

とうとう有名帽子専門店に正社員入社、敏腕店長として活躍したのち、

帽子への深い愛と探究心を糧に、

故郷の沖縄、那覇で「analogue」を開店したのでした。

洋服ならば2,3cmのサイズの誤差はさほど気にならないけど、

帽子のサイズはほんの数ミリで印象がまるで変わると言います。

同じ型の帽子でも5mm、1cmの違いは大きい。

だから、「たくさんかぶって、たくさん試して」と比嘉さんは微笑む。

「つばの広さ、顎までの長さと帽子の高さのバランス、

セオリーは色々ありますが、まずは、かぶって楽しんでほしい」。

そのうえで、帽子のプロフェッショナルは

単なる「ノリ」ではない真摯な見立てをしてくれるのです。

この日、私が手に取ったのは

オフホワイトにネイビーのリボンが爽やかな中折れ帽。

いわゆるボルサリーノタイプの帽子ですが、

「うん、似合いますね~、サイズも型もつばの広さもお顔に合ってます」。

良かった、比嘉さんのお墨付きが出たぞ。

「それもお似合いですが・・・僕としては、これも被ってみてほしい」と

取り出してきたのが、同じ型のライトグレーの色違いの帽子。

「夏にライトグレーにネイビーのリボン。

ありそうでないんです、この色。ちょっと抑えたトーン、素敵です」。

迷わず、被ってみると・・・

ほ、本当です。素敵です。大人っぽくて都会的で、お洒落です。

オフホワイトとはまた全然違う印象を作ってくれる。

美しい日陰のビーチを思わせるライトグレーの帽子を被るだけで

ここはアマルフィ?ニース?ヨーロッパのバカンス気分になってくる。

体全体からすれば1割が2割の面積しかないのに、

帽子の存在感の大きさは凄い。

「これ、これにします!すぐかぶっていきます!」前のめりの私に

「はい、ありがとうございます、ほんの少し微調整しますね」と

比嘉さんは冷静に(笑)帽子の裏からサイズをその場で調整してくれます。

「横幅じゃなくって、前後をほんの少し・・・さあ、どうですか?」

おおお~、ジャストフィット!まさに私のために生まれた帽子。

世界でたった一つの帽子になった。

自分に帽子は似合わない。

そう思い込んでいる、あきらめている、いじけている

「帽子被らず嫌い」「帽子アレルギー」の人こそ、

沖縄旅行の際は帽子をかぶらずに

那覇の県庁前通りの坂道にある帽子屋さんを訪ねてみてください。

あなたのための帽子が

帽子愛に溢れる比嘉さんの笑顔と一緒に待っています。

夏が来た。

日差しが眩しいから

沖縄に帽子を買いに行こう。

そんな旅も素敵だ。

(写真は)

私のための(笑)ライトグレーの中折れ帽と

あったか笑顔の比嘉さん。

「帽子を買う」という行為が

人生において本当に幸せな時間だと実感できる。

南国の坂道の途中の帽子屋さん。

いつか、憧れのボルサリーノを・・・。