晩春の蛍

春に生まれて、良かったぁ。

誕生日だった昨夜はご近所の日本料理屋さんでお祝いごはん。

季節を感じさせる美しいお料理の数々に

しみじみ三月弥生に生まれたことに感謝しました。

やっぱ、お誕生日は、和食に限ります♪

蛍烏賊には蕗を添え、菜の花のお浸し、帆立のカステラ焼き、

石垣島の採れたてもずく、もちもちの牛蒡餅とからすみ、そして海老しんじょ。

小さな色とりどりの器に盛り付けられた前菜の数々が

待ちに待った春の到来を告げています。

折しも昨日は北陸新幹線開通当日、

その夜に富山湾名物ぷりっぷりの蛍烏賊を味わえるなんて、超タイムリー、

「行ってみたいね~、金沢、富山、日本海」、宴の会話も弾むのでありました。

ぷっくりした小指サイズの小さな蛍烏賊はさっと湯通しされ、

上品な酢味噌がそっと添えられています。

「可愛い~、でも、ちょっと可哀そう」な~んて言いながら、ぱくり。

ぷりっ&柔らかな食感、ぱぁ~っと口の中に芳醇な日本海の旨みが広がります。

そして同時にかすかに感じるはらわたのほろ苦さがたまりません。

「蛍烏賊」は晩春の季語にもなっています。

美しく、そして、かすかにほろ苦い。

春を五感で味わう、大人な食材であります。

春、産卵のために富山湾にやってくる蛍烏賊の大群。

昼間は深い海の底にいて、夕方から夜中にかけて浮上し、産卵します。

神秘的な青白い光りを放ちながら、数百万の大群が海岸近くまで押し寄せるのは

富山湾だけの珍しい現象で世界的にも例がなく、

その沿岸域は国の特別天然記念物にも指定されています。

北陸新幹線効果で蛍烏賊漁見物ツアーも大人気とか。

海のイルミネーションのような美しい漁、一度見てみたいものですね~。

「蛍烏賊の身投げ」。

地元にはこんな悲しい名前の春の風物詩があるそうです。

夜、海面に浮上し産卵するのですが、

未明には潮の満ち引きによって沖に戻れなくなった蛍烏賊が

波打ち際にたくさん打ち上げられていることがあるそうです。

その様子を地元では「蛍烏賊の身投げ」と呼んでいるのでした。

懸命に次世代に命をつなぎ、海に帰りそこねた小さな晩春の蛍の悲しさよ。

蛍烏賊が光る理由は外敵に対する威嚇や幻惑、

または仲間とのコミュニケーションとも言われていますが、

もしかすると春の波打ち際に取り残された仲間を哀れんで

はかなく青白い哀悼の灯を放つのかもしれません。

小さな器の前菜を味わいながら、そんな晩春の夢想をしてみたり。

季節をめでる世界遺産「和食」は、やはり六感の芸術だと再認識した

50ん回目の誕生日の夜でした。

ごちそうさまでした。

(写真は)

春を告げる蛍烏賊の下には蕗が隠れています。

色、姿、味、香り、食感が織りなすお盆の上の交響曲。

ああ、日本に生まれて良かった。

春に生まれて良かった。