両膝の美

美しい銀メダル。

フィギュアスケートの世界選手権、男子は前年王者の羽生結弦選手、

女子は17歳の宮原知子選手がそろって銀メダルを獲得しました。

羽生選手の2連覇はなりませんでしたが、

衝突事故、腹部手術、捻挫といった数々のアクシデントを乗り越えての演技は

繊細さのなかにより力強い美しさも加わり、

観る者すべてを感動する引力にあふれていました。

そして身長147cmの「ミス・サイゴン」。

真っ赤な衣装に身を包んだ宮原選手が正確なジャンプを繰り出すたび

銀盤に赤い蓮の花がぽんっと軽やかな音をたてて花開くようでした。

誰にも負けない練習量で一歩ずつ階段を上っていった少女は

初出場の世界選手権でメダル獲得の快挙、

「練習はうそをつかないことを証明した」。

彼女を見つめ続けてきた浜田コーチの言葉が印象的でした。

テレビ中継を見ていて、さらに印象的な場面がありました。

演技後、その時点で上位3位までの選手がキス&クライから移動し、

別コーナーで待機してる様子が画面に映し出されます。

コの字型のソファが置かれた小さな空間で

後続の選手たちの演技と得点を見守る様子がリアルタイム中継されるのですが、

そこには極度の緊張と集中と疲労から解放された選手たちの「素」が

はからずも対照的な画として映し出されていたのでした。

その時点で3位以内に入っていたのは

優勝したトゥクタミシェワ選手と3位のラジオノワ選手、宮原選手の3人。

二人のロシア人選手は中央のソファにぴったり並んで座り、

その横のソファに小さな宮原選手がぽつんと一人。

ロシアの少女二人はソファの背に体を預け、親密そうに肩を組み、頬を寄せて、

モニターを見ながら何やらひそひそ言葉を交わす一方で

宮原選手は背もたれにもたれることなく、姿勢よく両膝をそろえて、

きちんと座り、真っ直ぐ画面を見つめていました。

その場面はまるで、ちょっと意地悪なロシア人美少女たちにシカトされる

可哀そうな日本の転校生・・・に見えなくもなく、

もちろん世界的アスリートたちにそんな意図は断じてありませんが、

学園漫画のワンシーンが重なるような風景に見えてしまったのでした。

おまけに紐を緩めたスケート靴を投げ出すように座る彼女たちの横で

宮原選手は青いスニーカーに履き替え、

脱いだスケート靴を足元にきちんと揃えて置いていたのです。

それは実に美しい日本の所作のお手本、やまとなでしこ的でありました。

そんな佇まいは競技の点数には一切反映されませんが、

演技終了後もなお、宮原選手は美しいフィギュアスケーターでありました。

指先の一本一本にまで神経を注ぐ繊細さが要求されるスポーツ、

演技後も背筋を伸ばし、脱いだスケート靴もきちんと揃える宮原選手の銀メダル、

それは金色以上の輝きを放っているように見えました。

誰にも負けない練習量でいつかきっと本物の金メダルを獲得する日は

そう遠くないことでしょう。

おっと・・・地下鉄車内で座るとき、

私も、両膝両膝、きちんと揃えましょっと。

内転筋も鍛えられるし、ね。

(写真は)

やまとなでしこのおちょぼ口にお似合い。

週末ご飯の鶏料理屋さんでの春の前菜。

繊細なお料理にふさわしく

先端が細く華奢なお箸が用意されていました。

そんな小さな心遣いもやまとなでしこ的♪