一瞬の雪花
お江戸も桜咲く。
昨日、東京にも桜の開花宣言が出ました。
あいにくしばらくは花冷えの日が続きそうですが、
その分、慌てて咲いて、ぱっと散ってしまう心配もないわけで、
お江戸のお花見、今年は長く楽しめそうですね。
咲く花、散る花・・・花を思う春によって年々を重ねる日本には
桜に心を寄せた和歌集などがたくさん編まれてきました。
古今和歌集、新古今和歌集、玉葉和歌集などなど。
中でも「桜うた」に関する分類が最も細やかなのが風雅和歌集です。
桜に寄せる思いが繊細な八つの季節に分けられています。
「待花(まつはな)」「初花(はつはな)「見花(みるはな)」
「曙花(あけぼのはな)」「夕花(ゆふはな)」「月花(つきにはな)」
「惜花(おしむはな)」「落花(らっか)」
この世でいちばん美しい桜の分類かもしれません。
桜の一生に人生を重ねる古人(いにしえびと)の感性の豊かさに
平成の世に生きる現代人の私たちも深い共感を覚えます。
風雅和歌集に収められた桜うたの数はお題によって多い少ないがあり、
「見花」と「落花」の歌の数が圧倒的に多くなっています。
専門家によれば他の題は時間的に限定されるが「見花」は比較的長く、
散る花というのは日本人の感性によく響くからだということです。
一方、長い冬を耐えてきた北国の人間にとって格別なのは「待花」。
桜の待ち時間は自慢じゃないけど、そりゃあ長い。
雪に埋もれながら桜咲く春を待って待って待って・・・・。
そう、昨日の昼下がりの出来事です。
まだ固いつぼみを閉じたままの桜並木を見ながら我が家へと帰る途中、
ふと、目の前にふわふわと何かが舞い始めました。
薄曇の空から淡い日差しがさす昼下がり、
冷たい春風に吹かれて、白い花びらが舞っているではありませんか?
え・・・?まさか・・・桜・・・?
向こうから歩いてきた老婦人も私と同時に足を止め、
はらはらと舞う白い花びらを見上げています。
「まさか・・ね?」と問うように老婦人がこちらを一瞬見つめました。
「・・・雪・・・雪ですね、桜じゃなかったですね、残念ながら(笑)」
「ほんと、雪なのね~、雪だったのね~」。
老婦人は花がほころぶような微笑みを返してくれたのでした。
そう、彼女も私も各地の桜便りに心が浮き立つ「待花人」。
桜を待ち焦がれる余りに春の雪さえ花に見えてしまう。
淡いはかない弥生の雪花に一瞬の春を共にしたのでした。
なんて素敵な一期一会。
桜を恋焦がれる北国。
「待花」「初花」「見花」「曙花」「夕花」「月花」「惜花」「落花」・・・
美しい桜うたの分類にもうひとつ
「雪花」を加えてほしくなる、
そんな一瞬の春でありました。
(写真)
桜を待つ「待花」ネイル♪
桜色とグレーと紅をひきたてる雪の白。
季節は指先からやってくる。うふふ。

