お雛さま外交

お雛さまは、外交官。

日本とアメリカの外交史にとっても温かなエピソードが加わりました。

主人公は半世紀前に海を渡ったお雛さま。

おちょぼ口のお人形たちは立派なお役目を果たしていたのでした。

1962年、故ジョン・F・ケネディ大統領に贈られた雛人形。

愛らしいお人形に魅せられ、日本という国に親近感を持ったのが

先日、札幌を公式訪問した長女の駐日米大使キャロライン・ケネディ氏。

自身が日本文化に興味を抱くきっかけになった雛人形ですが、

北見市の「マツモトツヤコ」という女性から贈られたことしかわからない。

ぜひとも「お礼を言いたい」とメディアを通じて呼びかけたところ、

なんと、贈り主が判明したのです。

きょうの朝刊が伝えたその贈り主は

北見市に住む松本艶子さんという92歳の女性。

その当時、各国の首脳に手紙を送っていた松本さんは

ケネディ大統領から返事が届いたことに喜んで、

市内の人形店で雛人形セット一式を買い求め、店員さんに頼んで、

ホワイトハウスに直接送ったもらったのだそうです。

ご本人は「今となってこんな話になるとは驚いています」とのこと。

お雛さまが紡いだ日米友好の素敵な絆が半世紀ぶりに明らかに。

ほっと心があったかくなるニュースです。

新聞の写真に写っていたそのお雛さまは実に懐かしい古風なお顔立ち。

おめめぱっちりな現代風のギャル系お雛さまとは違います。

この人形がホワイトハウスに贈られたのが1962年。

我が家では4歳違いの姉の誕生とともに、

父と母が少しずつお雛様を揃え始めた時期と一致します。

北見の人形店と室蘭の人形店、

たぶん同じようなお雛さまを扱っていたでしょうから、

私が眺めていた実家のお雛さまとホワイトハウスのお雛さまが

良く似た姉妹のようなお顔立ち、お姿だったことに、ちょっと感激です。

そして同時に感動したのが、

アメリカの政治の中枢、ワシントンのホワイトハウスで半世紀もの間、

日本の一市民から贈られた雛人形が大切に保管されてきたということ。

七段飾りの雛人形一式の出し入れは大変な作業、段を組み立てるのも力仕事だし、

何と言ってもお人形を扱うにはとても繊細さが必要です。

一体一体、桐の箱からお人形を出して、お顔を覆った薄紙をそっとはがし、

くしゃみをしたら吹き飛んでしまいそうな小さなお道具をひとつひとつ出す。

そして、触れれば折れそうな華奢なお人形の手に小さな扇を持たせたり。

日本人でも気を使うデリケートな作業をホワイトハウスの職員さんたちが

実に半世紀も間、引き継ぎ、続けていたことに深い感動を覚えます。

分厚い日米外交史の本に載ることはないけれど、

両国の友好関係を物語るとても素敵なエピソードではないでしょうか。

この50年の間に日本とアメリカを含む国際情勢は大きく変化しました。

今だったら、個人がホワイトハウスに贈り物を届けるなんて、

9・11以降、ますます緊張の度が増すセキュリティー上、まず不可能でしょう。

半世紀前は、「そうだ、アメリカの大統領さんに、日本の春をお届けしよう」、

そんな素朴な市民レベルの草の根外交が可能だったのだなぁと思うと

ホワイトハウスで愛されてきた雛人形の歴史的なお役目を果たしたとも言えます。

北海道からワシントンにお嫁に行った小さなお人形たちは

これからもず~っと大事にされていくことでしょう。

ワシントンは桜の名所。

そしてホワイトハウスには北海道からお嫁入りしたお雛さまが

大切に半世紀以上も保管されている。そう思うと

小さなお人形のおかげでワシントンまでの心の距離が一気に縮まります。

お雛さまは世界で一番愛らしい外交官かもしれません。

(写真は)

道東土産シリーズ「丹頂鶴の卵」。

ケネディ駐日大使にも

真っ白い雪原に舞うタンチョウの美しい姿を

お見せしとうございます。

特別天然記念物の食べられる卵(笑)。

ホワイトチョコの殻と黄身餡が美味。