豊穣の時間
イブの朝、札幌は静かに雪が降り続いています。
真っ白な雪景色が美しいホワイトクリスマスイブ。
今頃、遠い遠い北の国では
サンタさんが今夜の重要ミッションに備えて
そりのチューンナップやトナカイさんたちの直前調整に
あわただしい朝を過ごしているのでしょうか。
大人もそんな想像をしてしまう、ちょっと特別な朝です。
一足お先に昨日23日に我が家のクリスマスパーティーは
ささやかに、美味しく、無事に決行されました。
料理番としては全力出し切った充実感でいっぱいです(笑)。
今年のメイン料理「コック・オ・ヴァン」、大成功でした~。
うふふ、ちょっとしたお家ビストロ気分、
前日から下準備しておいて良かった。
にわかシェフ、極上の一皿は一日にしてならずを実感いたしました。
「コック・オ・ヴァン(Coq Au Vin)」の
「コック」とは雄鶏、「ヴァン」はワイン、
つまり「雄鶏の赤ワイン煮込み」のことで、
フランスのブルゴーニュを代表する郷土料理です
フランス料理の学校でも基礎コースに組み込まれているそうで、
ま、フレンチの王道にして、基本のお料理。
調理方法自体はそれほど難しくないのですが、
思いたってすぐに、ぱぱっと作れる時短料理とは180度違います。
遅くとも前日には、思いたって下さい(笑)。
まず前日に骨付きもも肉と手羽先などを保存容器に入れて
玉ねぎ、セロリ、人参、にんにく、ローリエ、黒粒コショウなどと共に
たっぷりの赤ワインを注いで、一晩じっくりとマリネします。
ブルゴーニュのお料理なのでピノ・ノワールを使いたいところですが、
主婦的に勇気が出ない(笑)、
ここは堅実にリーズナブルなチリのメルローをセレクト、
しかし、大胆に、ボトル一本丸々下ごしらえに使う快感がたまらない。
飲んで充分にイケるワインを
どぼどぼと香味野菜をまとった鶏肉に惜しげなく注ぐ快感。
「あー、気持ちいい!」
日頃の「もったいない」という単語はすっかり忘却の彼方、
気分はすっかり白いコックコートをきりりとまとった一流シェフ。
そう、コック・オ・ヴァンは作っていて幸せになれるお料理。
作る贅沢を味わえるお料理であります。
翌朝、赤ワインに一晩浸かったほろ酔い加減の鶏肉を取り出し、
香味野菜とマリネ液はざるなどで分けておきます。
まず鶏肉の丁寧に水分を拭き取り、小麦粉をつけてフライパンに。
美味しい焼き色になったら、お肉をいったん取り出し、
拍子木に切ったベーコンと香味野菜を焦がさないように炒め、
そこに取り分けておいた赤ワインたっぷりのマリネ液を投入、
アルコール分を飛ばしていきます。
ジュッワ~~~、おおお~、何と美味しい音、美味しい匂い。
この時点で既に勝利の予感がする。
これは・・・イケるぞ。
前日からの美味しい時間がたっぷりしみ出したフライパンの中身を
長年愛用のオーヴァル型のル・クルーゼに移し、
取りだしておいた鶏肉を優しく戻し、生のタイム、完熟トマト缶を半分ほど加え、
鶏肉が少し肩を出して寒そう(?)なので、赤ワインをさらに少し足す。
おおお、もう一本以上のワインを使っちゃった~、快感。
あとはあくを丁寧にとって、蓋をして弱火で40分~1時間ことこと煮込むだけ。
と、ここまでは基本のレシピ通りなのですが、野宮センサーがピピッと反応、
これでコクも香りも味も充分な予感はしますが、あの隠し玉を入れてみよう。
そう、黒糖であります。
家庭用レシピによってはトマトケチャップを足したり、蜂蜜を入れるものもあり、
まあ、正統フレンチからすれば邪道でしょうが、
カレーだって、色々そのお家の隠し味を入れるでしょ、
「コック・オ・ヴァン」もブルゴーニュの郷土料理、
家々の味があっていいよね~、
で、蓋をする前に伊江島の黒糖の小さなかけらを二粒三粒投入。
ブルゴーニュ・ミーツ・琉球、きっといいマリアージュが生まれるはず。ふふふ。
オレンジ色のル・クルーゼがことこと、ことこと、いい仕事をしている間に
付け合わせのマッシュポテトやきのこのソテーの準備をし、
牡蠣の前菜や、マグロのタルタル、自家製オニオンジャムなどを
パーティー開始のタイムスケジュールに沿って作っていく。
合間にテーブルの準備をし、グラスやお皿をセットし、
またお鍋の前に戻って「コック・オ・ヴァン」のご機嫌を伺う。
う~む、ほとんどイベントプロデューサ兼料理番。
忙しいけれども、何ともいえない充実感に包まれる。そうなんだよね~、
お料理って、作っているこの時間が何より幸せなんだよね。
「わ~、美味しそう」って喜んでくれる顔を想像して、あれこれ働く。
どんな仕事にも共通するモチベーションだ。
さあて、いよいよ「コック・オ・ヴァン」の仕上げに取りかかります。
ほろほろに煮込まれた骨付き肉を崩さないように、そ~っと取り出し、
くたくたになった香味野菜をざるで丁寧につぶさないようにこし、
濃厚なソースを作っていきます。
少しずつ水分を飛ばして、ソースにとろみをつけていく一方で
小鍋に新たな赤ワインを200ccほど入れて、
焦がさないようにじっくりと煮詰めていきます。
小鍋の底にひりつきそうなほど濃く凝縮された濃いワインを
隣の鍋のソースに加えると・・・おおお・・・完璧。
フレンチレストランの「コック・オ・ヴァン」の深い深い色になりました。
隠し玉に加えた伊江島の黒糖も一役買っているかもしれません。
最後の仕上げのバターで風味をつけて、出来上がり。
とろり・・・。
真っ白なお皿の上に豊穣な色が幸せな絵を描く。
太陽と大地の恵みをいっぱいあびて育ったワインや鶏肉や野菜が
ことこと、ことこと、優しく優しく煮込まれて、
最高の一皿に仕上がりました。
ありがとう。
こんな幸せなお料理の時間を与えてくれて、ありがとう。
イブイブの夕方の早い時間、
ハッピーアワーにスタートした超朝型家族のクリスマス。
健やかに食べられることに、
誰かのためにお料理できることに
いっぱいいっぱい感謝をかみしめたちょい早な聖夜の晩餐でした。
(写真は)
この深い豊穣の色。
ワインと香味野菜と鶏肉とほんのすこしの黒糖と
贅沢に使った「時間」が作り上げました。
フレンチの奥深さを実感素人シェフでした。



