オスロ発のテキスト

今朝の朝刊トップは各紙揃ってストックホルム発、

ノーベル賞授賞式での日本人受賞者3人の笑顔でした。

そして同時にオスロから発信された歴史的なスピーチに心から感動しました。

史上最年少でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんの受賞演説です。

「戦車を作るのはとても簡単なのに、

学校を建てるのがとても難しいのはなぜ?」

「教室が空っぽのままなんて終わりにしよう。

今すぐに、ここから、ともに『終わり』を始めましょう」。

ニュースで耳にしたマララさんのスピーチ、

彼女のその澄んだ高い声はオスロの会場をはるかに飛び越えて

世界中に響き渡りました。

その全文要旨が今朝の朝刊に英語と日本語の両方で載っています。

世界中で過激派の抑圧や紛争、貧困のために

教育を受けられない子供たちがまだまだ大勢いること、

子供たち全てが無料で良質の初等、中等教育を受ける権利を

補償すべきだと訴えるスピーチは

難解な専門用語や回りくどい表現など一切ありません。

苛酷な体験の中でも決して失わなかった強靭な意志が紡ぎ出した言葉は

シンプルで力強く、そして実にわかりやすい。

世界中の子供たちにとって、これ以上のテキストはないかもしれません。

ユネスコによると世界で推定5700万人以上の子供が

初等教育を受けられないでいて、

その半数以上の3200万人は女の子だそうです。

国際労働機関(ILO)の報告では

働かされている18歳未満の子供は世界で1億6800万人、

これは子供全体の11%にあたります。

つまり世界の子供の10人に1人以上が学校に行けず働かされているということ。

最も多いのはアジア太平洋地域の7770万人、

次いでサハラ以南アフリカ地域の5900万人。

小さな細い指が握るべきは一本の鉛筆であるべきなのに。

10年ほど前にエジプトを旅した時の風景が蘇ります。

今よりは治安は安定していましたが、個人旅行は安全上見送り、

ツアー旅行で10日間ほど遺跡を中心にエジプト各地を回りました。

その旅程に組み込まれていたのが「絨毯工場の見学」。

精緻な絨毯作りで有名な村を見学するものでしたが、

バスの中で現地ガイドの男性が言った言葉が忘れられません。

「これから皆さんをご案内する絨毯工房では小さな子供たちが働いています。

でも日本人の皆さん、彼らをかわいそうとか、思わないで下さい」。

彼の本心は今でもわかりません。

安っぽい同情心で子供たちを見るなと言いたかったのか、

児童労働がまかり通る国の現状を恥じ、憂いての言葉か、

上から目線でかわいそうと思って済ますな、

この現場を見て、あなた方は、何をすべきなのかと問いたかったのか。

それ以上多くは語りませんでしたが、

カイロ大学を卒業し、英語も日本語も堪能な彼がガイドとして

子供が働く自国の絨毯工場を観光ルートとして案内することに

複雑な思いを抱えていることはわかりました。

そし「観光客として訪れた自分も、複雑な思いしか残りませんでした。

より緻密で複雑な模様の絨毯を織るには

子供たちの繊細で細い指先でなければできないこと。

そうした子供たちの細い指で織られた絨毯ほど高価な値がつくこと。

ため息が出るような美しい絨毯ができあがるまでには

鉛筆やノートを手にする機会を奪われた多くの子供たちがいることを

思い知らされた旅でもありました。

あれから10年以上の月日が経ち、

あの絨毯工場がどうなったかはわかりませんが、

ユネスコやILOが報告する数字は世界中でまだまだ大勢の子供が

学校へ行けず、働かされている現実を物語っています。

その数字が何を意味するのか。

それを知ったあなたは何をなすべきか。

マララさんのスピーチほど最適なテキストはありません。

今日の英語や世界史や現代社会や総合学習の授業に

今朝の全文要旨は何よりの教材ではないだろうか。

その内容、メッセージ、英語表現、スピーチ力、プレゼンテーション力。

「Together、today、 right here、 right now、

             let’s begin this ending now.

今日、ここから、今すぐに、ともに、「終わり」を始めましょう」。

私たち大人にとっても大切な教材であります。

朝刊を開き、コーヒーカップを持つ手が思わず止まった朝でした。

(写真は)

沖縄の昔ながらのおもちゃ。

琉球張り子。

子供の手に渡してあげたいのは

おもちゃと勉強道具。

キミの未来に必要なもの。