黄朽葉色の雨
今年も金色の雨が降っているだろうか。
晩秋の土曜日、北大の銀杏並木までロングお散歩と洒落こみました。
円山から北大までのんびり歩いて1時間と少し。
構内をのんびり散策、往復3時間のちょうどよい有酸素運動。
心も体もぐ~んと気持ちよくストレッチできました。
歩くのは、いい。一歩一歩、人間らしくなる。
北大構内の北13条通りの両側、
東西およそ380mに渡る70本の銀杏並木は晩秋の風物詩。
美しい黄金色のトンネルには毎年たくさんの市民や観光客が訪れます。
3年前からは見頃の時期に合わせて
「北大金葉祭(こんようさい)」が開催されていて、
今年も昨日と今日の2日間、
焼き芋やココアを振る舞う屋台カフェや銀杏講習会、ライブなどが催され、
秋のキャンパスをさらに盛り上げていました。
で、主役の銀杏はといいますと、
はらはら・・・はらはら・・・
かすかな秋風に吹かれ天から金色の雨が降っている。
色づきの真っ盛りだった去年の金葉祭に比べて、
今年はあはれの色濃い風景が広がっていました。
ん~、詩心があれば、ここで一首詠みたいところであります、が、
与謝野晶子さんにかの有名な一首をお願いいたしましょう。
「金色(こんじき)のちひさき鳥のかたちして
銀杏散るなり夕日の岡に」
与謝野晶子
空から降ってきた金色の雨の一葉を手に取れば、
なるほど、愛らしい小さな鳥のかたちをしています。
晶子さんが詠んだ夕刻ならば、晩秋の夕陽に照らされて。
散り行く銀杏の葉はきらきら黄金色の千鳥が舞うように見えたことでしょう。
しかし、銀杏並木を眺めるうちに、雲行きが怪しくなってきました。
天気予報通り、午後から雲が厚くなり、お天気が崩れてきそうな気配が濃厚。
晩秋の空がますますグレーになるのにつれて、
銀杏の金色も「あはれの色」を増してきました。
かすかに物憂いこの金色を何と呼んだらよいのでしょう・・・。
そう、これは、「黄朽葉色」。
秋になり、木々が葉を落としていくさまを平安朝の人々は
青朽葉、赤朽葉、黄朽葉などと表現していました。
温帯で寒さがゆっくりやってくる国なればこその季の移ろいを写した名前です。
秋が近づき、緑から紅葉へと色が移り散りゆくまでの時の経過を
さまざまな朽葉色で表すなど、実にいとおかし。
なかでも黄色を冠した「黄朽葉色」は銀杏の葉色にふさわしい名前。
萌える春の「菜の花色」とは趣を異にする晩秋の憂いを感じさせます。
生命の輝きを謳歌するようなレモンイエローともミモザの黄色とも違う
盛りをほんの少しだけ過ぎた枯れた黄色、黄朽葉色。
ゆっくりゆっくり長く暗い冬へと歩を進めるこの時期、
日本の秋ならではの季節感が生んだ色彩感覚です。
抜けるような秋空の下で眺めた去年の銀杏並木も美しかったけど、
薄曇りの空をバックに鈍く輝く黄朽葉色の並木は
何だかいつまでも心に残る風景でありました。
私も、少し、大人になったかしら・・・。
黄朽葉色の銀杏に見送られ、
さあ、また小1時間、てくてく晩秋の札幌を歩いて、お家へ帰ろう。
どこかで焼きたてパンを仕入れていこうか、
小洒落たカフェが見つかれば小休止してもいいし、
いやいや、コンビニおでんの誘惑もたちがたい、
晩秋のあはれを感じるお散歩も食欲には勝てません。
ひっくり返っても、晶子さんには、なれませんな、やはり(笑)。
(写真は)
うっすら曇り空の北大銀杏並木
かすかに憂いを帯びた黄朽葉色もまた美しい。
今日からお天気は荒れ模様。
黄朽葉色の雨が降る。

