コーヒー好きの神様

孤独と孤高は違うんだ。

その違いを教えてくれた人だった。

俳優、高倉健さんが亡くなりました。

享年83歳。

老いを演じる健さんをもっともっと見たかった、です。

「神様のような人が本当に神様になってしまった」。

共演した大竹しのぶさんが語った言葉が

高倉健さんの人間力を物語っています。

北海道は「幸せの黄色いハンカチ」や「駅」「鉄道員」など

ゆかりのロケ地がたくさんありますが、

今朝の北海道新聞に意外なゆかりの場所が紹介されていました。

それはある珈琲店の健さん専用席。

札幌豊平区にある喫茶店「カフェ・ノエル」。

映画やCM撮影で道内を訪れるたびに足を運んでいたそうです。

1991年ごろ、店の常連客に勧められて初めて店を訪れ、

お気に入りのカウンターの一番奥に座り、

苦味の強いフレンチコーヒーを注文するのがお決まりだったとか。

このお店、知人に連れられて何度か入ったことがありますが、

とっても落ち着く空間で、私もここのカフェ・オ・レが大好き。

そうかぁ・・・。

健さん、あそこの奥の席がお好きだったのね。

酸味よりも苦味のある珈琲が、

浅煎りよりも深煎り、ダークローストがお好みだったのね。

交流のあった長嶋名誉監督は選手時代、

試合前によく二人でお茶を飲んでいたと語っていますし、

美術家の横尾忠則さんも

「喫茶店でコーヒー飲みながら、よく話しました。二人とも甘党で」。

今朝の新聞で名優を偲ぶ文章を寄せていました。

映画の中では寡黙で不器用で一人酒が似合うイメージがありますが、

実際の健さんは気心の知れた友と

喫茶店でコーヒー飲みながら気さくにお喋りを楽しむ一面もあったのですね。

しかも、甘党。

確か、羊ヶ丘展望台に近いあの喫茶店、ケーキも美味しかったような。

健さんも一番奥の席で食べたのかな・・・。

窓の外の白い雪景色を眺めながら

ゆっくりと香り高いダークローストのコーヒーを口に運ぶ健さん。

どんな服装だったのかなぁ。

勝手に黒いタートルネックに上質なストールなど巻いた姿が浮かぶ。

冬の喫茶店に座っているだけで

シネマのワンシーンのようだったに違いない。

ロケ地など健さんのゆかりの場所には献花台が設けられるそうで、

多くのファンが花束を手向けることでしょう。

「鉄道員」の撮影が行われた99年が最後の来店だったというあの喫茶店を

そのうち、訪れてみよう。

日本一雪が似合った俳優さんが愛した苦みのきいた一杯を

外の雪景色ととも味わおう。

ちょっと寡黙に、不器用に、健さん気分で。

コーヒー好きの神様は

今頃、ゆっくりくつろいでいるのでしょうか。

天国の喫茶店の一杯はいかがですか。

(写真は)

南国の珈琲焙煎所。

夕暮れときの逆光に

年季の入った焙煎機が浮かび上がる。

ここの深煎りマンデリンも

健さんがお好きなタイプの苦みだと思うなぁ。

名優を偲んで、心静かに、コーヒーを一杯。