まちぐゎー珈琲
「真冬襲来」。
昨日の北海道新聞の夕刊一面の大見出しは
まさに言い得て妙な四文字熟語。
外は一面の雪景色、今朝もしんしんと降り続き、
電信柱はもっこりと白い雪帽子をかぶっています。
あのぉ~、まだ11月ですよ。クリスマスまでひと月以上もあるというのに、
札幌はまるでホワイトクリスマス、
とんだ冬将軍の勇み足に、サンタさんもあせってしまいますね~。
昨夜は今季初カレー鍋で温まりましたよ。
明けて今朝のこと。
ん?どこからかエキゾチックな香りが漂ってくる。シナモン?
「ねえ、シナモンの匂いしない?」
「うん、シナモン入れてるもん、コーヒーに」と夫。
間抜けな会話が平和な土曜日の朝であります。
スパイスの特集番組に触発され、シナモン入りコーヒーを試してみたらしい。
外は真っ白な雪景色、家の中はモロッコあたりの迷宮市場の香りが漂い、
何ともシュールなムードでありますが、
市場の珈琲・・・まちぐゎー珈琲・・・至福の一杯を思い出しました。
初秋の沖縄旅も終盤、
沖縄食材など買いだしがてら、午後の市場通りをぷらぷら散策。
初秋と言っても日中の最高気温は連日30度超え、立派に暑い。
「ちょっとひと休みしたいな~」と歩いていたら、おっと、見つけた見つけた。
牧志公設市場のたくさんある出入り口のひとつに面した
茶色の庇をかかげた小さな小さなコーヒースタンド。
その名も「THE COFFEE STAND」。名は体を表すシンプルな店名。
店先に置かれた二つの小さなテーブルは4人座れば満員御礼、
極小サイズの小さなコーヒースタンドの一杯をめがけて
全国からお客さんがやって来るという隠れた名店なのであります。
間口の狭い店内の奥で一人の男性が真剣な眼差しで
エアロプレスで珈琲を抽出しています。
その姿は難しいデリケートな実験に取り組む研究者のようで
すぐには声をかけられない雰囲気。
渾身の一杯を入れ終わったタイミングで、
「こんにちは・・・ここ、座ってもいいですか?」とご挨拶。
「ああ、どうぞどうぞ、ご注文はどうしますか?」
優しい誠実そうな笑顔にほっ(笑)。
この方が珈琲には厳しく妥協しないが、
お客さんには優しい店主の上原さん。
珈琲愛あふれる上原さんの厳しい目でピッキングした豆を自家焙煎、
そのフレッシュな豆をその特徴を最も引き出す抽出方法で
一杯ずつ丁寧に淹れてくれるのです。
提供されるのは単一品種の豆だけで淹れる「シングルオリジンコーヒー」。
毎日提供する豆が変わるので、
カップにはその日の豆の説明を書いたタグが変わらず貼られます。
毎日毎日新鮮な食材が入荷する目の前の市場と同じ。
原産国、農園、生産者、豆の特徴が細かく書かれたタグは
貴重なデータを記した実験ノートのようで、
この紙をコレクションしている人も多いそうです。
この日の豆は
ブラジル ミナスジェライス州セラード地区にある
トミオフクダ バウ農園のブルボンコーヒー100%。
ん?セラード地区・・・
そう、港川の自家焙煎工場「沖縄セラードコーヒー」で聞いた名前。
緑の革命ともいわれる農地改革によって開拓されたコーヒー産地でしたね。
トミオフクダさんかぁ、日系のお名前に親近感が更に湧いてきます。
「アイス、ホット、どちらにします?」
「豆の味がよくわかるのはどっちですか?」
「暑いけど、ホットですね~」
「じゃ、ホットで」。当然です。心頭滅却心頭滅却(笑)。
圧力で抽出するエアロプレス器具に向き合う上原さん、
また声をかけられない瞬間です。
「お待たせしました。バウ農園のブルボン100%です」。
30度を超える南国の昼下がりに
湯気を立てる熱いコーヒーを一杯・・・。
こんなに美味しいものとは、思いませんでした。
柔らかく甘い香りが鼻腔を通り抜けて
次にしっかりとしたコクのある味わいがやってきます。
その熱い一口をごくんと飲みこんだ後、
不思議なことに軽やかな清涼感に包まれました。
まちぐゎー(市場)珈琲の魔法?
上原データが記されたタグによれば
バウ農園があるエリアは昼夜の寒暖の差が大きく、
コーヒー栽培には最適な環境にありますが、
このブルボンは生産性が低く流通が少ないないため、
希少となっている豆とか。
市場通りの真ん中で世界のレアな珈琲を楽しめるなんて
日本中から珈琲好きが訪れるわけですね~。
もちろんアイスもこだわりの牛乳を使ったラテも美味しそう。
「よっ、アイス三つ頼むよ、10分後取りに来るからさ」。
市場で働く人たちが配達がてら、オーダーを入れていきました。
小さなテーブルの目の前の酒屋さんの店先では
名物ネコちゃんが堂々と昼寝を決めこんでいます。
酒瓶の間の赤い座布団はもはや彼の定位置らしい。
人とモノが行きかう賑やかな南国の市場、まちぐゎー。
その心地よい喧騒が何よりのBGM。
沖縄食材の買い出しやお土産選びに歩き疲れたら、
茶色の庇の小さなスタンドで至福の一杯はいかがでしょう。
目の前の酒屋さんのネコちゃんと一緒に
琥珀色の白昼夢が見られる、かも。
(写真は)
珈琲色の庇が目印。
後から来たお客さんが温かいラテをオーダー。
ミルクの温度にもこだわっている上原さん。
小洒落たラテアートなど温度が下がるから、なし。
白いミルクの日の丸模様が潔かった。



