甘いご縁

ほっとココアの季節がやってきた。

駅のホームで秋風に身を縮めながら電車を待つとき、

両手に包みこんだ自販機ココアの紙コップの温もりに

身も心もほっ・・・温められる。人心地つくとは、まさにこのこと。

HOTココアはほっとココア。

札幌からJRの特急で30分の距離にある美唄まで

昨日までの3日間、講師のお仕事で連続日帰り出張だったのですが、

とっぷり日が暮れて帰りの電車を待つ駅のホーム、

手袋が欲しくなるような冷え込みに、思わず自販機でココアをセレクト。

晩秋のこのシチュエーション、

ノンシュガーコーヒーとかアメリカンコーヒーじゃないんだな~、

両手でほっと包みこむココアでなくちゃ。

甘さと心とろかすあの香りがママに甘える幼子気分にしてくれる。

ココアが恋しくなると・・・いよいよ初雪も・・・近いかな。

甘さがとりもつご縁で「カミ」さんのお菓子が生まれた。

初秋の沖縄旅6日目、雨の首里散歩は「新垣カミ菓子店」にやってきました。

琉球王朝時代、王府に使えた包丁役、新垣親雲上淑規を開祖とする

創業200年の老舗でお店はここ首里赤平町の一店舗だけ。

しかも店舗といっても現在は製造工場しか開けていないので

訪ねる時はお電話一本入れておくのをおすすめします。

日中両国の製菓技術を取り入れ、

独自の琉球菓子を生み出した開祖の流れをくむお店は現在3店あって、

すべて屋号に「新垣」がつきますが、

ここ首里の「新垣カミ菓子店」の「カミ」とは・・・?

気前よく試食を勧めてくれるおかみさんに問うてみると

「ああ、カミさん、新垣カミ、ご先祖さんの名前ですよ~」との答え。

カミさん。

明治33年、首里の当蔵の上流階級に生まれたカミさんは

琉球王家である尚家のチーアン「守娘」として

尚順男爵のお屋敷「松山御殿」に奉公にあがっていました。

当時、チンスコウや花ボールといったお菓子は

王族や貴族しか口にすることのできない高級品。

カミさんは首里赤平にある尚家代々の御用菓子店「新垣菓子店」へ

よくおつかいにいっていたところ、見染められたのでしょうか、

18歳の時、菓子店の息子淑正と結婚することになったのでした。

まさに甘いご縁で新垣カミさん、となったわけです。

三男三女6人の子宝に恵まれ幸せな暮らしを送っていましたが、

昭和9年に夫が35歳の若さで急逝、

戦時中は原料も入らなくなり、菓子作りも中断、大分へ疎開、

戦後戻った首里は一面焼け野原、

しかしカミさんは一家の大黒柱として女手ひとつで再び赤平の地で

菓子店を開業、それが「新垣カミ菓子店」でありました。

1981年に80歳で生涯を閉じるまで

ひたすら琉球菓子作りとその伝授に励んでいたそうです。

「昔からの味は絶対に変えてはならない」

「お客に対して常に立派なお菓子をお出しするのが当たり前」。

伝統の味を守り伝えることを使命としたカミさんの固い教えが

この目の前のチンスコウや花ボールに息づいているのですね。

「これ、花ボール、卵と砂糖と小麦粉だけしか使ってないからね、

昔っからの、そのまんまの味だからね」。

試食を勧めてくれるおかみさんはの言葉には枕詞のように

「昔っからの味」と何度も口にします。

カミさんが大切に守り伝えたかったことが

首里赤平の新垣家にしっかりと受け継がれていました。

チンスコウ、花ボール、クンペン、チイルンコウ。

現在おもに作られているのはこの4種類の琉球菓子ですが、

その原材料名をしるした欄にはカタカナのケミカル系単語などなく、

卵や黒砂糖、小麦粉、胡麻、落花生などなど

琉球王朝時代のレシピそのままの自然な素材だけが並んでいます。

「昔からの味を絶対変えない」で作り続けてきたお菓子は

首里城内に復元された鎖之間(さすのま)のお茶セットでいただくことができ、

王朝文化の甘い体験は観光客の人気の的。

「あのぉ~、クンペンはありますか?」

雨の中、観光客らしきご夫婦が小さな工場を訪ねてきました。

「あらぁ~、ごめんね~、午前中で売り切れちゃったのよ~」。

何せ手作り、首里城におさめるだけで手一杯らしく、

わずかな在庫もこうして訪れてくる甘いもの好きが買い占めていくらしい(笑)。

「残念~、首里城で食べて、すっごく美味しくって、わざわざ来たんです~」。

あきらめきれない奥さまのお気持ち、よ~くわかります。

そっか・・・クンペン、売り切れか。

「えっと~、じゃあ、私はチンスコウと花ボールと・・・」と

試食に満足、ようやく品定めする私に

「そうそう、今日はチイルンコウがあるよ、どうする?」

チイルンコウ!大好き!

「もっちろん!下さい下さい!」。

持てるだけの琉球菓子がどっさり詰まった袋に

「はいはい、これ、おまけね、

あ、これもちょっと焼き過ぎで焦げてるけど持ってって、美味しいから」

出来たての黒糖チンスコウをささっとアルミホイルにくるんで

どっさり気前良く入れてくれるカミさんとこのおかみさん。

女手ひとつで守りぬいてきた琉球王朝伝統のお菓子。

甘いご縁がつないできた歴史のおやつ、

さあ、お家に帰ってから、ゆっくりと追想のお茶時間ができそうです。

また、遊びに来ますね。

お元気で、カミさんとこのおかみさん。

首里の雨はまだやまない。

城下町は秋雨に濡れていた。

(写真は)

せっせと出来たてのお菓子をパッケージに詰めてくれる

「新垣カミ菓子店」のおかみさん。

今度は売り切れだった薫餅(クンペン)買いに

きっとまた訪れますね。

たっくさんの試食とおまけ、嬉しかったです。

美味しかったです。

ごちそうさまでした。