ときのおかし

白い季節の到来です。

本日10月28日未明に札幌で初雪を観測。

平年値とぴったり同じ日に几帳面に降りました。

平野部での初雪観測は道内で初めて。

旭川では今もしんしんと雪が降り、街はすっかり銀世界、

とうとう、とうとう来るべきものがやってきましたね~。

さあ、あったか冬ファッションを楽しみましょ、

ほっかほか鍋料理も美味しくなります。

これから始まる長~い冬、楽しまなくちゃ、もったいない。

初雪の気配を感じながら、緑茶をほっと一服。

お茶時間がことのほか心に沁みる季節でもあります。

昨日のお茶菓子はとっておきの虎屋の羊羹。

つい先日、来札された母校の先輩からお土産に戴いたものです。

ずっしりと重い立派な箱には黒地に金で重厚なタッチの虎が描かれ、

「お羊羹さま」と呼びたくなるこの存在感はさすが虎屋謹製。

ありがたくお茶のお共にさっそくいただいております。

「虎屋」といえば菓子界の大御所。

創業は奈良時代にまで遡る老舗中の老舗であることは言うまでもありません。

虎屋中興の祖と呼ばれる黒川円仲は医術の心得があり、

当時医薬品として扱われていた砂糖の調合に巧みで、

こし餡を甘酒皮に包んで蒸しあげた「虎屋饅頭」を作って

御所に献上したところ、これが大いに評判を呼び、

禁裏に御用菓子を納める「虎屋」としての足場を築いたと言われています。

その頃の甘いお菓子は、最先端技術の粋を集めた存在ともいえますな。

御所御用を務める虎屋にとって、

明治2年の遷都はエポックメイキングな出来事。

昔ながらの京都の店はそのままに、東京に進出、

東と西に二つの本店を置くことになり、

現在の赤坂に御菓子調進所を開いたのが明治13年、

一般のお客にお菓子を売るようになったのは関東大震災以降の大正12年、

気軽に虎屋の羊羹でお茶できるようになったのは90年前のこと、

100年も経っていないわけで、

ますますお土産のお羊羹さまがありがたくなります。

以降、京都店は円仲由来の「虎屋饅頭」でその名を不動のものにし、

一方東京は「虎屋羊羹」でブランドを築き上げていったのでした。

昭和の高度成長期、室蘭の製鉄所から東京へ出張へ行く父は

そのたびに「範子、虎屋の羊羹、買ってくるからな」と言い残し、

出掛けていったものでした。

甘党の父にとっては東京での会議より、

虎屋の羊羹の方が優先順位が高そうに聞こえたものでした。

出張の旅程もゆるやかな、いい時代のお話です。

「ただいま」。

出張帰り、普段着なれないスーツ姿の父が

旅行鞄のなかから大事そうに取り出したのは細長い重厚な木箱。

今でもその場面はくっきりと覚えています。

「木の箱に入った羊羹があるんだ・・・」。

美術品を納めるような立派な木の箱の蓋をそ~っと開けると

雄々しい虎の模様が描かれた掛け紙と竹の皮で包まれたお羊羹さまの姿が。

「これが、虎屋の、羊羹だ」。

重々しく宣言する父の声。

青函トンネルも新千歳空港もなかった時代、

昭和の東京出張土産は「ハレ」のお菓子にほかならなかった。

久しぶりに戴いた虎屋のお羊羹さま、

一番好きな小倉羊羹の「夜の梅」を切り、

沖縄本島北部やんばるの奥で採れた「奥みどり」の今年の新茶を淹れて

赤く色づいた桜の葉っぱを落とす木枯らしの音をBGMに

ゆっくりゆっくりと味わう。

不思議だ。

年年歳歳、羊羹の味がいとおしく、美味しく感じるのはなぜだろう。

子供のころは「甘いだけのおばあちゃんのお菓子」にしか思えなかったのに、

小豆と砂糖と寒天の三位一体が織りなす甘味の深さに感動すら覚える。

「羊羹」とだけ記された簡素な栞を開く。

「記載の羊羹は小豆・砂糖・寒天を主原料に100℃を超える温度で

炊く時間を含め、1時間かけて練り上げています」

ゆえに賞味期限は室内保存でも1年間、

開封しなければ糖蜜は出やすくなるが、

その後1年はお召し上がりいただけるとのこと。

奈良時代からお菓子を作り続ける老舗が

寒天が発見された江戸時代から丁寧な練り羊羹作りを始め、

今も1時間はじっくり材料を練り上げて作られるという虎屋のお羊羹さま。

関東大震災以降に庶民の口にも入るようになりましたが、

室温保存で1年、開封しなければ2年は美味しく食べられるこのお菓子は

今日にあっても貴重なカロリー源であり、

災害時にあっては優れた非常食としても再評価されています。

時を超えるお菓子か。

そうかぁ・・・

ときを味わうお菓子、なんだな。

羊羹が年々、美味しく感じるのは、

味わうこちらもそれなりに年を重ねてきたからなのか。

羊羹が旨いな・・・と感じたら、

ちょっとは大人になった証拠かもしれません。

(写真は)

先輩の東京土産。

平成の虎屋羊羹。

「空の旅」は昭和26年(1951年)、15代目店主が飛行機の窓から見える

夕焼けの美しさにインスパイアされ考案した羊羹。

紅色の練り羊羹に白小豆で夕焼け空と白い雲を表現ししているそうです。

2011年、羽田、成田空港限定として新装発売、

空港限定の美しいお羊羹さま。

出張土産に重々しくお持ち帰り下さい♪