しゃららん
うーっ、寒っ!
とうとう覚悟を決める朝がやってきました。
北海道上空に強い寒気が入り込み、今朝の冷え込みは本気。
窓ガラスは冷気で曇り、えいやっと開けて深呼吸すれば吐く息は真っ白に。
ああ・・・冬の足音が聞えてきます。
昨夜から札幌ももしかすると明け方にかけて初雪かとの予想でしたが、
どこかで白い使者が降りてきていてもおかしくない、この寒さ。
きょうのおでかけはスウェードのコートにしようっと。
連日ノースリーブが今となっては夢幻のように思えます。
初秋の沖縄旅6日目リポートは秋雨の首里散歩。
石垣島のジュエリー「TILLA EARTH」首里店で青い天然石ピアスをゲット、
実はもう一つ、ず~っと訪ねたかった工房がありました。
金工作家喜舎場智子さんの制作工房&ギャラリー
「ci.cafu(チ・カフー)」です。
那覇のセレクトショップで何点かの作品を見て以来、
首里の工房でもっともっとじっくり拝見したいと思っていました。
いよいよ雨が強く降る中、車は龍譚通りから儀保大通りへ。
ゆいレール儀保駅に向かうこの道はかなりの渋滞、
難儀しながらやっとのことでビルの一階に小さな工房を発見。
可愛らしいドアを開けて駆け込むと、金銀細工の工房には珍しく男性客がひとり。
小さなお店の奥は喜舎場さんやスタッフがモノ作りする工房になっていて、
その手前が2、3人入れば満員のショップスペース。
先客の男性がスタッフの説明を熱心に聞いている後ろで
耳をダンボにしながら(笑)店内のアクセサリーを眺めます。
沖縄伝統の古典モチーフと現代のセンスが見事に融合されたデザイン。
美しい・・・ため息がもれます。
かつて首里には琉球王のお抱え職人たちが暮らす町並みが
それぞれの職分ごとに広がっていたといいます。
王朝の装いを華麗に彩った金細工の職人たちも奏でであろう、
テトテトトトン・・・リズムミカルな金鎚の音。
途絶えかけた伝統を刻む音が儀保町のこの工房に受け継がれ、
今も毎日首里の街から聞こえてくるのでした。
喜舎場さんご本人は残念ながらお留守のようですが、
笑顔の女性スタッフが実に丁寧に説明をしてくれています。
「ああ、ボク、もう大体決まりましたから、どうぞ」。
先の男性客がさっとスマートに場所を譲ってくれました。
奥さまか彼女へのプレゼントを選んでいたようです。
30代くらいのカジュアルな装いながら、これぞ本物の紳士、
わが息子もこんな素敵なジェントルマンに成長してもらいたいものだ。
さっそく説いて聞かせよう(笑)。
「何かお探しでしたか?」の問いかけに待ってましたと切りだします。
「あの、房指輪、見せていただけますか?」。
「房指輪」。沖縄の貴族のお祝いの儀式で用いられていた美しい指輪です。
以前に一度だけ、那覇のセレクトショップで見せてもらったことがあります。
「来世までも守られ幸せでありますように」との願いを込めて、
指輪には7つの飾りが房となってつながれていて
それぞれに幸せへの願いが込められています。
桃は子孫繁栄、亀は不老長寿、魚は食べ物に困らないように・・・。
その形も物語も美しい房指輪にすっかり魅せられ、
作ったのが首里の喜舎場智子さんと聞いていたのでした。
工房には今では現存するものも少ない戦前の房指輪のひとつを元に
飾りの意味は変えずにアレンジを加え再現した「古典房指輪」と、
琉球の房指輪の七房に日本や世界で使われている吉祥文様を加えた
「オリジナル房指輪」の両方を目にすることができました。
それぞれに銀と真鍮、素材違いで両方作られていて、
どれもこれもが・・・美しい。
「どうぞ、全部、つけてみてください」と寛大なお言葉、
琉球のお姫様気分でそ~っと指にはめてみる・・・。
しゃららん・・・。
なんて雅な音でしょう。
女性の幸せを願う飾りが触れあって奏でる軽やかな音。
房指輪は形も物語も、音までもが美しい。
古くから儀礼用の指輪として使われてきた房指輪は
左右の手にひとつずつはめたといわれます。
多くは嫁ぐ娘の幸福を願って贈られたものですが、
琉球舞踊のいくつかにはこの房指輪を身につけて踊る曲があるそうです。
しゃららん、しゃららん・・・
軽やかな音に載せてしなやかに舞う琉球女性の姿・・・
想像するだけでもうっとりしてきます。
シンプルなリトルブラックドレスにこの房指輪ひとつなんて
めちゃくちゃ素敵だけど・・・
そんなパーティーの予定もないし、
これから嫁に行く予定もない(笑)、
いるのは息子、嫁には出せない(笑)。
泣く泣く房指輪をお返しする私にスタッフの救いの言葉。
「お好きなモチーフでネックレスにアレンジできますよ」。
おお~、決まった!自分スーベニア第2弾。
色々楽しく迷いながら、
真鍮の蝶と銀のお魚モチーフをネックレスに仕立ててもらいました。
琉球つながり、石垣の島ピアスとの相性も最高、良く合います。
東京やフィレンツエジュエリー制作を学んだ喜舎場さんの作品は
身につけやすく、それでいてさりげなく沖縄の伝統を感じさせてくれます。
彼女や奥さまへサプライズプレゼントにも最適。
沖縄に関心ある人もない人も、ジュエリーとして気にいってくれるはず。
「それじゃあ、お先に」。
お花のモチーフをペンダントに仕立ててもらった先の男性、
小さなジュエリーの袋を大切にデイパックにしまって、
お店のドアを開け、雨のなか、首里のまちへと去っていきました。
どうぞ、良い旅をお続け下さいね。
大切な誰かの首元をその花のペンダントで飾るまで、
ご無事でお帰り下さいね。
いつか、
きっと、
何かの機会に、
この房指輪を手に入れよう。
人生の大切な節目にふさわしい逸品。
心のジュエリーケースに面影だけをそっとしまって、
さあ、私も雨の首里さんぽをもう少し続けましょう。
(写真は)
嫁に行くわけでもないのに、
喜色満面で房指輪をつけちゃった。
真鍮製のははじめて。
ね?素敵でしょ?
私を長年虜にしている罪なジュエリー。



