火と風と水と器
北海道は秋モードが日に日に強まり、
朝晩めっきり冷えこんできた今日この頃、
「どーしようかな~、ボクも長袖にしようかな~」。
既に長袖のパジャマにスイッチした私を見て、昨夜、夫が呟く。
「半袖、短パンはもう寒い?」と聞くと、
「う~ん、寒くないとは言わないけど・・・」と
何と戦っているのかわかりませんが(笑)、素直に寒いと認めない。
結果、上は半袖Tシャツに下はパジャマの長ズボンという、
実に中途半端な秋仕様でお休みあそばしたようだ。
ま、体感温度も個々人のパーソナリティー、温かく見守りましょう。
さて初秋の沖縄で「ちいさな秋」を探す旅。
まずは本島北部を精力的にドライブ、数々の素敵な出会いに恵まれ、
夕食は海を眺めながら瀬長島の絶景オキナワン・イタリアンを満喫しました。
あんなに爆食したのに、朝起きたら、ちゃんとお腹が空いている。
沖縄に来ると全身の細胞が活性化するのか、実に代謝がいい。
心身共にやはりこの地とは運命的に(笑)相性が良いようだ。
那覇の眩しい朝日を部屋の窓越しに浴びながら、
軽いストレッチ&なんちゃってヨガで体もすっきり目覚めました。
ホテルの朝食レストラン、シェフが目の前で作ってくれるオムレツが美味しくて、
特製のアンダンスー(油味噌)が実に合う。
たっぷりのフルーツ&野菜&ヨーグルトにシリアルの種類も豊富、
ゴーヤーチャンプルーや人参シリシリ、ゆし豆腐など沖縄料理も並び、
ついつい、毎朝食べ過ぎてしまいます。
でも、大丈夫、沖縄に来ると、私、代謝いいから(笑)。
さ~てと、今日はどこに行きましょうか。
今回はその日の気分で行先を決めるゆるやかな旅スタイル。
海と山は昨日のやんばるでかなり楽しんだので、
今日はちょっとカルチュアル系で。
よし、ず~っと気になっていた陶芸家さんのギャラリーを訪ねてみましょう。
本島中部の中城村にある陶房「火風水」(ひふみ)です。
自宅をギャラリーとして開放している陶芸家奥平清正さんの陶房は
窯元が集まる読谷村「やちむんの里」とは少し離れているので、
なかなか行けずにいたのですが、今回は時間もたっぷり、チャンスチャンス。
事前に連絡すれば、訪問も可能ということ。
朝食の後、ちょっとドキドキしながら電話を入れてみます。
「はい、火風水(ひふみ)です」。
穏やかで優しそうな男性の声。ご本人でしょうか。
「あの、今日、そちらに伺いたいんですけど、
器など見せて頂くことはできますか?」
「はい、大丈夫ですよ。那覇からお車でいらっしゃいますか?
場所はナビに住所を入れれば、わかると思います。
10時からですけど、いいですか?」
「はい!もちろんです!」。良かった~。
気難しい陶芸家さんだったらご自宅訪問なんて緊張しちゃいそうだったけど、
奥平さんはとっても優しそう。安心してナビに中城村の住所を入力。
いざ、陶房 火風水の台所へ。
沖縄名物、58号線の朝の渋滞をすり抜けて、
1時間ほどの快適ドライブで中城村に到着、
静かな住宅街の坂道を上りつめた高台にめざす建物が見えてきました。
2階建てのお家に「火風水」とだけ書かれた金属製のボードがあります。
玄関までの階段やアプローチでは清楚な草花の鉢や
陶器で作られたシーサーや猫ちゃんなどがさりげなくお出迎え、
そして庭にちょこんと置かれた小さな自転車が
ここが創作と生活の場所であることを物語ります。
「こんにちは~」。
開け放した玄関から声をかけると、既に先客の気配が。
30代くらいの女性二人連れが
「あ、お客さんですよ~」と中に声をかけてくれます。
「あ~、いらっしゃいませ。朝、お電話頂いた方ですよね。どうぞどうぞ」。
優しい笑顔が実に印象的な奥平清正さんご本人が出迎えてくれました。
「お邪魔しま~す」。
玄関で靴を脱いで上がる気分は、まさにご自宅訪問。
うわぁ・・・素敵。
鮮やかなペルシャ秞や繊細な絵付けの器が「暮らして」います。
ギャラリーのように「展示」されたり、「置かれて」いるのではなく、
奥平さんちの居間のテーブルで台所で現役で「生活」しているのです。
大きな木のテーブルも食器棚もすべて奥平さんちの手作り。
丸皿、角皿、大鉢、中鉢、大皿に豆皿・・・カタチ、サイズ、色、模様、
多種多様なさまざまな器が積み重ねられたその食器棚に目が吸い寄せられました。
「失敗して商品にできないよう器が並んでいるだけですよ」。
奥平さんは照れたように笑いますが、
家族が日々、いとおしんで使い続けている「日々のうつわ」の美しいこと。
売り物ではないことはわかっていても、
「この真ん中の段の青いお皿下さい!」とおねだりしたくなります。
今はお客さんの注文の応対をしている木のテーブルも夕餉どきには
奥さんと学校から帰ってくる二人の息子さんをまじえた4人家族の食卓に。
この食卓で子供たちは毎日、お父さんが作った器でごはんを食べているのです。
うらやましいですね~。こんな素敵な器で毎日ごはんが食べられて。
でも~、奥平さんちは小学生と中学生の男の子とか。
わが息子の子供時代を思い出せば、
ひょえ~、こんな素敵な器、割っちゃいそうで、ちょっと怖い(笑)。
「お子さんたちはお片づけとか、お手伝いもするんですか?」
私の質問の意図を察知した奥平パパ、
「それが、一度も割ったことはないですね~」。
目尻の笑い皴をいっそう深くして答えました。
小さな頃から父親が器と真剣に向き合う姿を見ているからでしょうか。
日常に使われ、家族の愛着が沁み込み、
味わいが深まった器たちの魅力的なこと。
そういえば、おっちょこちょいの息子も
不思議と家の器を割ることはあまりなかったっけ。両親が器好きだから?
子供って、実は、本当に大切なものって、わかっているものなのだ。
どうせ割っちゃうからいい加減な器を与えるのではなく、
小さな手にちょうど良いお気に入りの器を選んであげれば、
きっと、器を大切に、食べることを大切に、
つまり、生きることを大切にする子に育ってくれるのではないだろうか。
よくお手入れされたお鍋や数々の調理器具、メモが貼られた冷蔵庫と
土の温もり溢れる器たちが仲良く並ぶ奥平さんちのご自宅ギャラリーで、
いちばん大切なことに気づかされたような気がします。
陶房 火風水。
1000度を超える灼熱の火と
島を吹きぬける心地よい風と
命の源である水と
そして「いただきます」と「おいしかっった」と「ごちそうさま」の声が生み出す
とっておきの器に出会えます。
大切な人と大切に使い続けたい日々のやちむん。
奥平清正さんの優しさが凝縮された逸品が
実は今、器好き、雑貨好き女子たちの垂涎の的となっています。
ざっくり「1年待ち」というその秘密の器のお話はまた明日。
お楽しみに。
(写真は)
陶房「火風水」の奥平清正さんと。
ね?器は人。人は器。
温かいお人柄が優しく繊細な色遣い、モチーフに表れています。
居間の隣が「買える」器が並んでいるギャラリースペース。
どれもこれも欲しくなる気持ちと格闘しながら、
ブルーに鮮やかな赤絵付けが美しい楕円皿をセレクト。
このほかにも伝統の菊文様を奥平流にモダンにアレンジした中鉢に
赤・青・緑の水玉模様の豆皿も。
わ~ん、帰りたくないよ~。
奥平さんちで、この器たちで、私もごはんごちそうになりたい(笑)!

