江戸グラフィック
青葉すがしい皐月の江戸散歩。
初夏の陽ざしが眩しい浅草をぶらり歩き、
粋な男前甘味「梅むら」の豆かんでひと休み、
体の内側から心地よく汗がひいたところで
さあて江戸土産でも探しにまたぷらりぷらり一人歩きの再開です。
言問通りをまた渡って浅草寺方面へ戻ります。
提灯や扇、つげの櫛、鼈甲細工など
江戸の伝統を今に伝える手仕事のお店が
資料館や博物館ではなく現役で商いしているところが魅力。
連休の大混雑で人があふれ返る仲見世通りの真ん中あたり、
大好きな人形焼き「亀屋」の角から一本浅草寺寄りの筋道に抜けると
お目当てのお店がひっそり佇んでいました。
「染絵手ぬぐい ふじ屋」です。
江戸の中期、従来の麻布に代わって、
柔らかく染付も自由な木綿が庶民に浸透したことから
江戸手ぬぐいの歴史は始まります。
浅草「ふじ屋」は江戸伝統の柄からオリジナルの意匠までが揃う老舗ですが、
特筆すべきは天明4年(1784年)の「手拭合(てぬぐいあわせ)」の復刻版。
戯作者の山東京伝らが江戸の粋と洒落を追求した
手ぬぐいのデザイン展を企画、それが「手拭合」です。
当時出品された江戸の傑出した手ぬぐいのデザインのうち20点が
「ふじ屋」によって現代に復刻されました。
鉢植えの新緑が気持ち良い店先から一歩中に入ると
色とりどりの季節の柄や伝統柄の手ぬぐいが出迎えてくれ、
壁一面には美しく額装された「手拭合」の作品たちが展示されています。
一気に江戸の粋と洒落の世界にタイムスリップ。
江戸っ子の洗練されたグラフィックセンスと秀逸なユーモアに脱帽です。
薄藍色の天の川に牽牛と織り姫の星が染められた「ほし合い」は喜多川歌麿の作、
「トウライヤ浸」は狐拳の指遊びを影絵で描いた秀作。
傑出した江戸デザインが揃う中で運命の一目惚れをしてしまいました。
漆黒の手ぬぐいの左側に大きな「目」がひとつだけ。
作品名「熊野染」、別称「め鯨」。
黒地に目だけを染め抜き、
鯨の接写とした奇抜で斬新な発想の手ぬぐいは横に飾る。
して、その心は・・・「目くじらをたてない」。
いやぁ~、これぞ江戸の洒落と心意気。
一気にフォーリン・ラブ、恋に落ちちゃいました。
捕鯨に名高い熊野灘を洒落て「熊野染」と名付けるセンスといい、
江戸グラフィック、どこまでも粋でカッコいい、突き抜けている。
愚図愚図、ぐだぐだ、余計な言い訳や辛気臭い説教なんて野暮野暮。
ついっと粋な手ぬぐい、真横に飾っときゃいいのさ。
夫婦喧嘩なんて犬も喰わねぇ、
まあま、お互いさま、「めくじら」たてなさんなってね。
仲見世通りの筋道で捕獲した木綿の鯨一頭、
我が家の家内平和のために(笑)迷わず江戸土産に仕入れ、
ぶらりぶらぶら、皐月の江戸下町散歩は続くのでありました。
(写真は)
「ふじ屋」の店先に飾られた「め鯨」。
あまりの感動にちょっとピンぼけ(笑)お許しください。
江戸グラフィックの名品逸品揃いの手ぬぐいは
単に「手をぬぐうもの」ではありません。
美しい染め布は道中被り、喧嘩被り、新内被りなど
お洒落と実用をかねた被り物に、
十字に重ねれば襦袢に、
長い三尺は庶民の帯にもなりました。
手ぬぐいは江戸っ子のヘビロテお洒落アイテムであり、
粋と洒落と心意気を一瞬で表すハイセンスなインテリア。
しかもお手頃価格。
江戸土産には欠かせません。

