あんみつマダム
根室で日本一遅い開花宣言が出され、
日本列島を北上した桜前線も2カ月の旅を終えました。
円山の新緑も日に日に鮮やかさを増しています。
早起きがますます楽しくなり、
お散歩がますます楽しくなる季節ですね。
そんな皐月の銀ブラに「あんみつ」は欠かせません。
運よく歌舞伎座「団菊祭五月大歌舞伎」の一幕見席のチケットが手に入り、
開演までの待ち時間をどう過ごそうかと思案。
そりゃあ、もう、銀座で「あんみつ」、それも「元祖あんみつ」でしょう。
目的のお店は確か東銀座、歌舞伎座から近いはず。
晴海通りを4丁目交差点方向へ戻ると、
粋な三春小路側にもそのお店の入り口がありました。
昭和5年にはじめて「あんみつ」を売り出した「若松」です。
老舗ではあるけれど気どりのない甘味処「若松」。
「いらっしゃいませ~。お好きな席にどうぞ~」。
ごく普通の中年の女性店員さんがごく普通の笑顔で迎えてくれる。
「元祖」にありがちな権威主義などみじんもない「ごく普通」の対応が嬉しい。
先客はひそひそ話に夢中のおばちゃま二人連れだけ。
連休真っ只中の夕暮れの銀座にあって
まるでエアスポットのような「ごく普通」の静けさがこれまた嬉しい。
席に着くや、とりあえずお品書きなど一応眺めてみるものの、
注文は決まっています。
「あの、あんみつ、ひとつ下さい」。
昭和5年(1930年)にお汁粉屋だった「若松」の二代目が
みつ豆にあんこをのせて出したところ大評判となったという
正真正銘の「元祖あんみつ」をいざ、実食。
「お待たせしました~、あんみつです」。
ほどなく目の前に全容を表した「元祖あんみつ」は・・・
これまた「ごく普通」のヴィジュアル。
寒天、赤えんどう豆の上にみかん、桃、さくらんぼに
ピンクとグリーンの求肥にあんこが載せられ、
特徴といえば「若松」のシンボルである松をかたどった緑の羊羹が
添えられていることくらいで、
奇をてらった派手なトッピングなど一切ない、
ザ・あんみつといった風情が実に好ましい。
どれどれ。
昭和5年から女心をわしづかみにしてきた「元祖あんみつ」に
黒蜜をたら~りとひとまわし、ふたまわし、ゆっくりとかけて・・・
いただきます。
ほほほ・・・ジス・イズ・あんみつ♪
誰もが思わずにんまりしてしまう、ほっとする甘さ。
一見「ごく普通」に見えますが、
「元祖だから良いものを」と産地限定の素材にこだわり、
年季の入った職人さんが丁寧に作るあんみつは
一日300食は出る超ロングセラー甘味なのでありました。
「もっとあんこを」。
そんなお客の声に応えて生まれたとも言われる「元祖あんみつ」。
あんこ好きにとっては「もっと光を」ゲーテ最期の言葉並みの名言とも言えます。
よくぞ、わがままを言ってくれた。
おかげで誕生以来80余年、
寒天、果物、求肥にあんこ、ちょっと見バラバラなメンバーが
黒蜜によってひとつにまとめられ奏でる
この美味しいハーモニーの恩恵にあずかれるのです。
銀座はあんみつの街。
7丁目中央通り西側あたりはまさに「あんみつ銀座」。
「立田野」「虎屋菓寮」「松濤 粋」などが軒を連ね、
それぞれに味わいのあるあんみつを提供しています。
私のお気に入りは4丁目交差点そばにある「鹿乃子」の「鹿乃子あんみつ」。
大ぶりの器に虎豆や白花豆、紫花豆など名物の豆の甘露煮が
これでもかと寒天が見えないほどにぎやかに載せられた一品。
ひと釜ひと釜丁寧に炊き上げたお豆は
皮もピンと張って見た目しっかりしていながら、口に含むとあくまでふっくら。
豆好きにはたまらない豆尽しあんみつですが、ボリュームもなかなか、
私などは二人でシェアしてちょうど良いので、今回は無念の見送り。
そうそう「鹿乃子」には
夕方5時からはビールと煮豆のセットもあるのでした。
晴海通りに面した席から「銀ブラ」の人の波を眺めながら煮豆で一杯・・・。
う~ん、惹かれるな~。
しかし、うっかり長居をして「春興鏡獅子」を見損なっては大変大変。
白デニム姿のあんみつ姫、もとい、あんみつマダム(笑)は
「若松」のすっきりした甘さの「元祖あんみつ」をゆっくりと味わい、
宵闇に一段ときらびやかな美しさが映える歌舞伎座へと戻るのでありました。
(写真は)
ね?ごく普通でしょ?
それでいて、美味しそうでしょ?
銀座「若松」の「元祖あんみつ」。
松型の羊羹にうっかり黒蜜をかけてしまって、
よく形が判明できず、すみません(笑)
「銀座あんみつ旅」、次なる機会があるならば
「松濤 粋」の「塩あんみつ」からスタートしよう。
塩味のきいたあんみつからなら、はしごもできよう。
甘い夢は広がる。

