巡礼の道
山道を登る。
急なこう配のアスファルトの上には大きく白線で「桜」と書かれている。
こんな春らしい道案内があるだろうか。
この道の先に一本桜が待っている。
誰もが迷わずに行き着けるはずだ。
五百年以上、人々を見守ってきたひょうたん桜のもとへと。
高知県仁淀町の「ひょうたん桜」。
桜紀行の特番を見て以来、いつかは訪れてみたい桜になりました。
役場の横の山道、「桜」の矢印に従って登っていくと、
樹齢五百年、樹高21m、根元廻り6mの桜の古木が悠揚と迎えてくれます。
学名はウバヒガンですが、つぼみの形がひょうたんに似ているから、
いつしか「ひょうたん桜」と呼ばれるようになりました。
これほど地元の人に愛されている桜もないかもしれません。
なんてたって地区の名前を「桜」に変えてしまったのですから。
ひょうたん桜のある地区は元々「大藪」という字名でしたが、
一年を桜とともに過ごす人々の熱い思いから
昭和33年、「桜地区」に改称されたのです。
冬を越し、春いちばん、
桜地区の人々は総出で〆縄を手作りし、ひょうたん桜をおめかし、
花の見頃には手作りのお菓子や柚子の砂糖漬けなどをふるまって
遠来の花見客をおもてなしするのでした。
冬の間、ひょうたん桜の花咲く春を思い浮かべながら、
それぞれの家で丁寧に作られた柚子の砂糖漬けは
切り方も甘さも一様ではないところがなんとも温かい。
いよいよ花が咲くと桜地区の家々の縁側は鷹揚に開け放たれ、
「どうぞ、いっぷくしてください」「休んでってください」と
ひょうたん桜を目指す人々に優しい声がかけられます。
そんな様子が同じ四国のお遍路の情景に重なってみえてきました。
厳しい旅を続けるお遍路さんにいっぷくの水やお茶やてぬぐいを差し出す
地元の人々のおもてなしの心。
花咲く桜地区はひょうたん桜の善根宿のよう。
桜巡礼の道。
巡礼の道は善意に支えられている。
1000年以上の歴史を持つキリスト教三大巡礼地のひとつ、
スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路も
古くから道沿いには無料の宿泊所が整備され、
なかには11世紀頃の礼拝堂を修復した宿などもあり、
今でも中世さながらの「洗足の儀式」などが行われているそうです。
また以前、これも旅番組で観たのですが、
巡礼路にあるイラーチェ修道院には門の前に二つの蛇口があって、
右の蛇口には「AGUA」、左の蛇口には「VINO」と書かれていました。
そう、右の蛇口をひねると泉のように赤ワインが出てくるのです。
これが有名なイラーチェのワインの泉。
スペインのワイン会社が奉仕の心で提供しているワインらしいのですが、
善意のおもてなしは善意で受け取るのが旅のマナー。
ほとんどの巡礼者はワインはほんの一口たしなむ程度、
もっぱら左の蛇口から出る水で持参の水筒を満たしていくとか。
「ラッキー!ただだから、ガブガブ飲んじゃえ~」とか、
「水筒めいっぱいワイン詰め込んじゃえ~」とか、
そんな卑しい心は長く厳しい巡礼の旅によって
浄化されていくのでありましょうか。
善意のおもてなしには善意をもって応えるべし。
桜前線は盛岡に到着。
津軽海峡を渡って、北海道に上陸する日もそう遠くありません。
桜巡礼の道。
地元の人々の桜愛に敬意を忘れずに
さあ、どこの桜を訪ねましょうか。
(写真は)
春のウェディングパーティーに咲いた
満開のデザートブッフェの花。
みんな嬉しいおちょぼ口サイズ♪
甘い巡礼の道、
節度を持ち続けるのは・・・難しい(笑)
全種類、食べてみた~い!

