好きだったもの
できそこないの小さなジャガイモを油で揚げて
塩と粉チーズをふりかけただけの素朴な料理。
それが「父のおやつ」だった。
北海道出身の小説家、黒木亮氏が新聞エッセイに書いていました。
実に旨そうな、どこにもない父さん自慢のおやつです。
秩父別町で神職についていた氏の父上が
社務所の周りの野菜畑から掘り出した直径2~3cmほどのジャガイモ。
小さすぎておかずにもならないおイモたちを
男の発想で子供たちが歓声上げるおやつに料理。
その大胆さ、シンプルさ、
母の味とは一味違う、忘れられない味。
父のおやつかぁ。
極太の黒糖かりんとう、きなこねじり、味噌パン・・・。
亡き父は台所に立って子供たちにおやつを作るような人ではなく、
飯、風呂、寝るの典型的な大正末期生まれの男でしたが、
かなりの甘いもの好き.
母が買ってくる子供用のおやつでは物足りなかったのか、
会社帰りに袋入りの駄菓子などをよく買って帰り、
夕刊めくりながら美味しそうに食べていたものです。
「範子も食べるか?」なんて言いながら。
もうひとつ好物だったのがリボンナポリン。
北海道民にはおなじみのオレンジ風味の炭酸飲料です。
1911年明治44年発売開始とという歴史ある道民ソウルドリンクは
大きなリボンをつけたキャラクター「リボンちゃん」がトレードマーク。
この炭酸きつめのオレンジサイダーが
お酒を飲まなかった父は大のお気に入りで、
息子が小さな頃にはお駄賃渡して、
「好きなおやつ買っといで。じいちゃんにはナポリンな」と
孫によくお使いに行かせていました。
そんな光景もすっかり忘却のかなたになった4年前、
天国からのオファーで父は空の上へ旅立ちました。
あれは初めて迎えたお盆のこと。
お供物やらお花やら盆提灯やらの用意に追われ
慌ただしく迎えた新盆の仏壇に
オレンジ色のナポリンが一本ぽつんと置かれていました。
「あれ?誰?これお供えしたの」
「ん?俺。じいちゃん、好きだったから、ナポリン」。
誰もが忘れていた父の好物を
受験生となった孫だけはしっかりと覚えていたのでした。
お駄賃の威力は凄い(笑)。
スーパーのドリンクコーナーで
オレンジ色のリボンナポリンを目にするたびに、
いつもちょっとだけ鼻がツンとする。
もっと好きなおやつを食べさせてあげれば良かった。
行きたがっていた中国万里の長城に連れていってあげたかった。
もっともっと話をしとけば良かった。
もしかしたら、ナポリンやかりんとう以外に
好きなおやつがあったのかもしれないのに。
私は父のことを本当は何も知らないのではないだろうか。
ね、本当にお墓に布団は着せられないね。
今も変わらない笑顔のリボンちゃんに
心の中でそっと話しかける。
(写真は)
そういえばこれも父の好物だったな~。
南部せんべい。
甘党男は落花生入りの方がお気に入りだったが。
例の女子会情報に従って、ブルーチーズはなかったが、
クリームチーズをのっけて
週末ワインのお供にぱくり。
う~ん、悪くない、が、
刺激的なブルーチーズならもっとお似合いだろうと想像できる。
南部せんべい・ア・ラ・ゴルゴンゾーラ。
やはり試してみよう。

