役を生きる
その人が画面に出てくると安心した。
絶対に犯人でも悪人でも裏切り者ではないと確信できた。
いつも優しく温かくカッコいいお父さんだった。
「宇津井健」は理想のお父さんの代名詞だった。
14日に82歳で亡くなった俳優の宇津井健さん。
世に出るきっかけとなった「ザ・ガードマン」は
子供には遅い放送時間だったので、あまり見せてもらえなかったけれど、
同世代の山口百恵のお父さん役だった「赤い」シリーズを見るたび、
「この人がお父さんだったら素敵なのに」と
トレンチコートなど絶対に似合わない現実の父に
大変可哀そうな妄想をしていたものでした(笑)。
そう、トレンチコートやスーツも格好良かったし、
本当に上質な普段着が良く似合う俳優さんでした。
カシミアのセーターなど着てゆったり居間でくつろぐ姿が実にさまになる。
間違っても上下スウェットでだらだらなんかしない(笑)
いつ友達を家に連れて行っても恥ずかしくない理想の昭和のお父さんだった。
でも、ご本人はほとんど悪人を演じることがなかった役者人生を
どう思っておられたのだろう。
「役に重い軽いはあっても、役者に重い軽いはない」。
あるインタビュー番組で語る姿が紹介されていました。
善なるキャラクターを生涯演じきった役者の矜持があふれた言葉です。
作品の構成上、役に重い軽いはあるけれど、演じる役者の価値観とは一致しない。
ガードマン出演中は夜の外出も控えて、役のイメージを守っていた宇津井さんは
80代を過ぎてもその当時の体重を維持していました。
お酒もたばこもやめ、徹底した自己コントロールによって
いつでも娘とトレンチコートでデートできるお父さんであり続けた役者人生。
あっぱれであります。
ある追悼記事によれば、
ほとんど悪人を演じることがない自分は「役の幅が狭い」と認めながら
でも「この範囲の役だけは人に絶対負けない」と語っていたそうです。
誠実で、真面目で、温かく、時に厳しく、優しい・・・そんなお父さんの役。
宇津井健さんがいなくなった今、
キャスティングする人々は大いに悩んでいることでしょう。
この役、誰ができるんだと。
役に重い軽いはあっても、役者に重い軽いはない。
人の価値に重い軽いはない。
人の命に重い軽いはない。
大切なことを優しい笑顔で教えてくれた昭和のお父さんが天国へ旅立ちました。
今頃は空の上の居間でカシミアのセーターでくつろいでいることでしょう。
お疲れさまでした。
(写真は)
お菓子の価値も重い軽いでは決まらない。
天使の羽根のように軽いけれど満足度高い「リーフパイ」。
銀座「ウェスト」の名物お菓子はバターの風味が本物。
ホワイトデーに頂きました。
HBCの東京支社のお向かいにお店があって、
東京出張のお土産の定番だったな~。
「カフェ」というよりも「喫茶室」と呼びたいサロンの雰囲気が大好き。
白い清潔な布カバーがかかった高い背もたれの椅子に座ると
淑女のように、すっと背筋が一瞬伸びるような気がした。
「銀座ウェスト」、宇津井健さんみたいなパパとデートしたい空間であります。

