チェンジ!

自分は無力だ、役立たずだって思う。

やめようと思っても食べちゃう。

家中にチョコバーがあるのよ・・・。

そう嘆きながらも、スナックを食べる手を止められない。

キャシー・ベイツ演じる中年主婦エブリンは嘆息する。

「もう若くないけど、まだ年寄りでもない」。

頭がおかしくなりそうと鼻水をすすりながら、またおやつを食べてしまう。

91年のアメリカ映画「フライド・グリーン・トマト」の中の一場面。

何度も観たけど、BSで放送してたのでまた観てしまった。やっぱりいい映画だ。

こういう女性心理、わからなくない。

人生の中途半端な踊り場で立ちすくみ、

にっちもさっちもいかなくことって、誰でもある。

男ならお酒や他の手段に走るのかもしれませんが、

女は、食べちゃう。

太るのに、エブリンの場合、充分に太っているのに、食べちゃう。

そんな自分から目をそむけるために、また食べちゃう。

ビールとテレビのスポーツ中継しか興味のない夫、

日々、欲求不満を貯めながらも、それをぶつける勇気もない。

そんなある日、エブリンは老人ホームで一人の老女ニニーに出会います。

彼女が語る50年前のアラバマの物語をきっかけに

徐々に自分に目覚めていくというストーリーなのですが、

押し込めていた内面の弱さをニニーに初めて打ち明ける場面が

冒頭の台詞です。

「もう若くもないけど、まだ年寄りでもない」。

わぁ~ん、何だかよくわかるよ~、エブリン。

スナックの箱を取り上げながら、銀髪のニニーがふんわりと質問します。

「ホットフラッシュとか、急に汗かいたりとかしない?動悸がしたりしない?」

「え、ええ・・・そういえば」

ニニーが明るく笑い飛ばします。

「Simple! honey You’re going to the change!」

「何てことないわよ、エブリン、それは更年期よ!」。

あなたが悪いのでも、おかしいのでもない、人生のチェンジを迎えただけよ。

更年期。

女性ホルモンの変化とともに、心身に変調をきたす時期を指す言葉。

英語では「menopause」、メノポーズと訳されますが、

口語では「the change of life」と表現されます。

シンプルに「the change」とも。

何と素敵な表現でしょうか。

妙齢の女性がいらいらしたりすると、陰でひそひそと「更年期?」なんて、

従来の日本語の「更年期」という言葉には、

ややもするとちょっと湿ったニュアンスが含まれたりする場合がありますが、

「ザ・チェンジ」はカラッっと晴れ渡った青空のような、

突き抜けた明るさがあります。

長い冬に鬱々として、ついつい食べ過ぎちゃって、自己嫌悪・・・

なんて湿ったサイクルからは、笑ってサヨナラ。

「We’re going to the change!」

そう、チェンジ!

呵々と笑い飛ばせばいいのよ。

さらにニニーはエブリンのぷにぷにの背中を押します。

「あなたは、お肌がキレイだから、美容の仕事をするといいわ」。

かくしてエブリンは化粧品セールスの仕事を始め、

自分で稼ぐようになり、自信もつき、夫との関係も良好になっていきます。

親子以上に年の離れたニニーとエブリンですが、

いくつになっても「親友」になれる。

いちばん辛い時に、自分のいいところを見つけて、背中を押してくれる「親友」。

人生にとって、それは大切な宝物。

焼きたてのベーコン、アップルパイにブルーベリーパイ、

バックヤードで豪快に焼き上げるバーベキューにとうもころし。

はじかれ者のアル中男にも温かいスープを差し出す心の拠り所。

そんなアラバマの小さなカフェを舞台に

50年の年月を隔てた4人の女性の生き方を通して

人生の素敵な宝物をたくさん見つけられる映画「フライド・グリーン・トマト」。

青いトマトだって、こんがりフライにすれば、美味しいのだ。

人生は、そう悪くない。

苦しいときは、きっと、「going to the change」の途中なんだ。

明日は雛の節句。

もうすぐ、まちがいなく、春が来る。

(写真は)

娘のいない我が家のお雛さまは

小指の爪よりも小さな豆雛さま。

チェストの片隅でそっと春の兆しを教えてくれています。

さてと・・・お雛さまイブ、簡単ちらし寿司でも作ろっかなっと。