みっつになったよ

あの日から3度目の3月11日の朝です。

あの日、あの時間、どこにいて、何をしていたか、くっきりと覚えています。

言葉を失うとは、こういうことなんだ。

信じられない映像が映し出される自宅のテレビ画面の前で

ただ立ちすくむしかありませんでした。

3月11日は、日本人すべてにとって、特別な日になりました。

その混乱と混沌のなかで生まれたいくつもの命がありました。

岩手・宮城・福島の被災3県で104人の赤ちゃんが生まれていたのです。

彼らのお誕生日は3月11日。

「生まれてきてくれてありがとう。

君の居場所はここにあるからね」

小さな木の椅子が一人一人に手渡されました。

その誕生の物語が一冊の本になりました。

「3月11日に生まれた君へ」(北海道新聞社)

町内で生まれた子供たちに、故郷の職人手作りの椅子をプレゼントする

「君の椅子プロジェクト」。

北海道東川町で始まった試みは周辺の自治体にも広っています。

「あの日」に生まれた子供たちに、「君の居場所」椅子を届けたい。

プロジェクトは連絡のとれた一人一人に一つずつ椅子を手渡し、

同時に震災時の記憶とわが子への思いをつづってほしいと

お父さんお母さんにお願いしました。

この本にはそんな31の「いのち」の物語が納められています。

天地が逆転するような分娩室で

看護師や医師がお母さんに覆いかぶさり、生まれようとする命を守ったこと。

出生届の日付、時刻を見た役場の職員が

大きな声で、震えながら「おめでとうございます」と言ってくれたこと。

壮絶な状況で、多くの人々が、

水やミルクやおむつや産着を確保するのに奔走してくれたこと。

小さな「いのち」が人々の1秒1秒の力の源になっていたこと。

3月11日。

いちばん嬉しいはずの子供の誕生日を

心の底から祝えない複雑な思いを抱えていたと

何人ものお父さんお母さんが綴っていました。

でも、小さな木の椅子が届いて、

ああ、喜んでいいんだって、少し心が救われた。

そうも書いていました。

北海道で作られた小さな木の椅子は

3年間、我が子の誕生日を、どこか心のつかえを感じながら過ごしてきた

お父さんお母さんにとっても、

ほっとできるひとときの「居場所」になったようです。

3月11日に生まれた君へ。

生まれてきてくれて、ありがとう。

お誕生日、おめでとう。

みっつになったんだね。

今、朝のテレビニュースが

「避難生活を続ける人は26万人」と伝えていました。

3度目の3月11日をいまだに故郷から離れて暮らさざるを得ない人26万人。

遠く北海道まで逃れて避難生活を送る人も大勢います。

きょうの「さあ!トークだよ」の特集は

「東日本大震災から3年、避難者と道民のきょう、あした」。

札幌で母子避難生活を送るお母さんの暮らしを追いながら、

「今、必要なこと」について考えます。

3月11日。

明日が見える今日でありますように。

(写真は)

我が家の琉球張り子コレクションから

「鯉乗り童子」

すこやかな成長を願う親心がこめられた

素朴で愛らしいフォルム。

3月11日に生まれた君へ。

みっつになったんだね。

好きな遊びは何かな?

好きなおもちゃは何かな?

大きくなったら、何になるのかな?