お豆腐の都
そうだ、京都に行こう。
毎年、この時期になると、旅の虫が騒ぎだします。
本日3月8日(土)のAIR-G’「野宮的コフレ」のテーマは
「春だから、京都」。
西陣織や茶筒、京金網などなど美しい京都の伝統工芸の世界では
今、若き後継者たちによって、
世界を視野に入れた新しい風が吹いています。
フランスの有名ブランドブティックの壁が西陣織で飾られたり、
京の茶筒がイギリスの美術館の永久展示品に採用されたり。
千年の都の伝統と歴史は、常に革新によって紡がれてきたことを実感します。
古くて、いつも新しい都。
だから、何度訪れても、また京都に行きたくなる。
高校時代の修学旅行は、団体バスで大騒ぎ、
清水寺と新京極しか覚えていないのですが(笑)、
大学に入ってから女友達3人で訪れた京都の3月は
今もはっきりと心のアルバムに刻まれています。
あの旅が、本当の意味で、初めての京都でした。
春まだ浅き嵯峨野で食べた桜餅、ひっそりした大原の三千院、化野の幽玄美・・・
「北海道と、全然違う」。
ひっくりかえるような歴史のつながりが生み出す
古都の魅力を初めて実感しました。
人生で初めて「お豆腐ってこんなに美味しいんだ」と気づかされたのもこの旅。
お昼に奮発していただいた南禅寺「奥丹」の湯豆腐御膳の味わいは
今も忘れられません。
ちょっと前まで部活に明け暮れていた高校時代、
お豆腐なんてお味噌汁の具でしかなく、
食事の主役になるなど考えられなかったダサイ女子大生の舌に、
「奥丹」の湯豆腐は衝撃的でした。
口の中でとろける舌触り、次の瞬間に広がる芳醇な大豆の香り、
丁寧に作られたつけ汁のおだし。
「お豆腐って、こんなに美味しいんだ」。
湯豆腐の味わいをさらに美味しくしてくれた一番の薬味は
まだ底冷えする京都の3月のしんとした空気でした。
浅緑のお庭を望む創業360年に及ぶ老舗のお座敷につくねんと座っていると、
お尻の底から、しんしんと冷えてきて、
湯豆腐からたつ湯気がことのほか嬉しくなったもの。
弥生の底冷えもまた春を待つ楽しみに替えてくれる3月の湯豆腐。
冬の厳しい寒さ、蒸し暑い夏、決して楽ではない京都の気候こそが
数々の美味を生み出してきたことを、
20歳そこそこのお尻で(笑)、学んだのでした。
温かな湯気に包まれてゆらゆら揺れる京都の湯豆腐。
「はんなり」とは、あの白き柔肌のお豆腐を指すのだろう。
京美人の湯豆腐を掬うのは京金網の華奢な「豆腐すくい」。
その真ん中は菊の花が咲いたような「菊出し」の技法で編み込まれてきます。
美味しいものを美しくそっと掬う。
道具までが京美人だ。
早春の昼ごはん、
そうだ、京都に行こう。
東山南禅寺界隈を散歩して、
湯豆腐を食べに行こう。
いつか、きっと、もう一度行こう。
(写真は)
東山あたりで買い求めた清水焼の小さな箸置き。
春の桜と秋の紅葉が一緒に描かれている春秋模様。
だから春の食卓でも秋の食卓でも使える2シーズン仕様。
昔の人は賢いな~。
春だから、真上から桜を愛でながら、
さあ、今日は何を作ろうか。

