海老とグラタン

「思い出の給食」は「伊勢海老」になるのだろうか。

この春で110年の歴史に幕を閉じ、閉校する三重県南伊勢町の小学校で

「子供たちの思い出に」と地元特産の「伊勢海老」が給食に出されたそうです。

200グラムほどの立派な伊勢海老を半身にして焼いたもの。

最初で最後の豪華な給食に

いつもは賑やかな子供たちも黙々と箸を動かしていたとか。

大人になった子供たちが故郷を思う時、

一度きりの「伊勢海老」給食は

香ばしい匂いとともに鮮明に蘇ることでしょう。

国内有数のカツオ一本釣り漁の基地として栄えた漁港のそばにある

宿田曽(しゅくたそ)小学校。

最も賑わっていた昭和30年代には600人を超えていた全校児童数も

人口減によって今では43人。

伊勢海老給食は

閉校を惜しんだ卒業生でもある地元の水産業者による粋な差し入れでした。

「伊勢海老を食べるのはお正月くらい。

僕にとって宝物に小学校がなくなるのは淋しいけど

いい思い出になった」。

6年生の男の子の感想です。

故郷の小学校の宝物の味。忘れないよね。

今朝の情報番組がこの話題を伝えた後、

スタジオでそれぞれの給食の思い出話になったのですが、

20代女子アナの「えっと~、私はグラタン!」の答えにまわりは騒然(笑)。

「給食にグラタン出たんですか~?」「おっ洒落~!」。

そう、「思い出の味」といえばグラタン世代は確かに存在する。

20歳になった息子が帰省するとき、必ずリクエストするのは「グラタン」。

メインが手巻き寿司でもすき焼きでも、「グラタンもね!」とオーダーが入る。

海老とマカロニ入りのなんてことない「グラタン」ですが、

彼が小さな頃からお誕生日、クリスマス、お正月もお節句も、

そういえば記念日の食卓にはいつも「グラタン」があったっけ。

小さな口でぱくぱく食べてくれるのが嬉しくて、それでまた作って、

いつのまにか、お祝い事には欠かせないメニューになっていった。

きっと彼にとって「思い出の味」、「おふくろの味」は

肉じゃがでもきんぴらごぼうでもなく「グラタン」になるのかもしれない。

かつてのハイカラ洋食も今や日本の食卓にすっかりなじみ、

もはや郷愁の味にまで浸透している。

給食やおふくろの味に登場しても、なんの不思議もない。

平成生まれは、「グラタン世代」なのだ。

時の流れと思い出の味と。

大きな伊勢海老にも

グラタン皿の中のつつましい海老にも

それぞれの大切な故郷の味が染み込んでいる。

明日から3月。卒業の春。

旅立ちの食卓には、どんな海老が花を添えるのだろうか。

(写真は)

おっと、もうひとつ存在しました、

平成版「おふくろの味」。

手作りグラタンと、手作りミートソース。

そういえば、子供たちが巣立ったとたんに

「めっきりカレーを作らなくなったわ・・・」と

友人が淋しそうに呟いていました。

「うちのカレー」もおふくろの味、か。