ソチの散歩道

トリノでは「誰も寝てはならぬ」、

ソチでは「パリの散歩道」。

冬のオリンピックは思わぬ音楽の贈り物をしてくれます。

金メダルの輝きと共に再び脚光を浴びた名曲。

急遽CDが復刻プレスされたり、着メロランキング1位になったり、

プッチーニもゲイリー・ムーアも天国でちょっと照れ笑いでしょうか。

羽生結弦選手の完璧なSPに採用され、強い印象を残した「パリの散歩道」。

北アイルランド出身のギタリスト、

ゲイリー・ムーアの70年代のヒット曲ですが、

羽生選手が使用したのはインストゥルメンタルのライブ音源だそうです。

音楽評論家の方が夕刊コラムに書いていました。

元々は78年の初ソロアルバムに歌入りで収録されていたということです。

あの哀愁漂うギターナンバーにどんな歌詞がついていたのでしょう。

パリ・・・散歩道・・・切ないギターバラード・・・とくれば、

枯葉舞い散る秋のパリ、と勝手にイメージしていましたが、

訳詞をちょっと検索してみると

「古い写真を見ると思いだす

コンコルド広場で過ごしたあの夏の日」とあります。

どうやら、恋人と過ごしたパリの夏の思い出を振り返っているらしい。

冬でも、秋でもない、夏のパリだった?

歌詞には「49年のパリを思い出す」とありますから

相当、古い恋の思い出に浸っていることになります。

シャンゼリゼ大通りやサン・ミシェル通り、そしてボージョレ。

セピア色のパリの写真の中であの夏の日の君が微笑む。

そして、僕はひとり。

そんな男のほろ苦いバラードだった。

いや、ちょっと待て待て。

男が古いパリの写真を眺めている。

その窓の向こうに見えるのは、

きっと落ち葉の秋、冬枯れのモノトーン、または悲しいほど美しい雪景色。

やはり、寒い季節がふさわしい。

「パリの散歩道」は暑い熱風よりも冷たい北風がよく似合う。

記事によれば、羽生選手がソチで初めてこの曲で踊ったフィギュア団体当日、

現地時間の2月6日は、奇しくも

2011年に58歳でこの世を去ったゲイリー・ムーアの命日だったそうです。

あの日、ソチの氷の上で自らの曲にのり、

しなやかな若者が完璧な4回転を決め、長い手足で優雅に舞う姿を

往年のロックスターはちょっと照れながら天国から観戦していたことでしょう。

ソチの散歩道。

音楽の神様とスケートの神様が結んだ

ちょっと粋なご縁です。

(写真は)

我が家の前の散歩道。

桜並木は腰まで雪に埋もれています。

こんな厳しい冬を耐えて咲くのだから

北国の桜はことさら美しく見える。

目をつぶって春爛漫の散歩道を思い浮かべる。

春よ、こい。