ロンリーバード

まさか・・・

本物の生きている「幻の鳥」に会えるとは。

沖縄本島北部へのロングドライブ、出会ったのは

村認定スイーツ「クニガミ・ドーナッツ」だけではありませんでした。

何と・・・「ヤンバルクイナ」に会うことができたのです!

しかも30cmの至近距離で国の天然記念物に接近遭遇。

サプライズな沖縄やんばる旅でありました。

「ヤンバルクイナ」。

世界で沖縄本島北部のやんばる地域にのみ生息する飛べない鳥。

1981年に発見されたやんばる固有種ですが、

日本の鳥類で最も絶滅が迫っている種のひとつで

2006年には「絶滅危惧種1A種」としてレッドリストに記載されています。

赤いくちばしと脚、お腹の縞模様が特徴で、

生態についてはまだわからないことが多く、

調査研究が続けられている希少な鳥。

つまり、めったやたらには会えないレアな鳥さんであります。

が、会えちゃったのです。

2013年9月、昨年の秋にオープンしたばかりの

「ヤンバルクイナ生態展示学習施設」。

新しすぎて、まだガイドブックにも載っていないし、

テレビなどでもまだ紹介されていないため、

沖縄を訪れる人たちにもほとんど知られていない施設なのですが、

なんと、「いつでもヤンバルクイナに会える」場所なのです。

私は許田インターで出会った

名護のボランティアガイドさんからこの貴重な情報をゲット、

やはり、旅の情報源は地元の人に限ります。

海沿いの国道58号線からやんばるの森を横断する県道2号線へ。

亜熱帯のジャングルが道の両側から覆いかぶさるように生い繁っています。

深い森に分け入るうちに

車がやんばるの胎内に飲み込まれていくような錯覚さえ覚えます。

未知なるロングドライブ。

アップダウンとコーナーが続く山道を慎重に運転していくと見慣れない標識が。

「ヤンバルクイナ とびだし注意!」

黄色の標識にはちゃんと「ヤンバルクイナ」の絵まで描かれています。

そうか、今、私は彼らのお住まいにお邪魔しているのですね。

ますますハンドルを慎重に握り直して走り続け、

カーナビを頼りにたどりついたのが例の施設。

美しいパークゴルフ場が広がる安田(あだ)くいなふれあい公園内に併設された

「ヤンバルクイナ生態展示学習施設」は

国頭村が設置し、NPO法人やんばる・地域活性サポートセンターが運営管理、

絶滅の危機に瀕する野生動植物の保護、貴重な自然環境保全についての

関心と理解を深めてもらうために新設されました。

その大切な活動の柱が

「生きたヤンバルクイナ」の飼育と生態展示なのであります。

真新しい白い建物を入り、入口を曲がると

3面ガラス張りの大きな大きな展示ケージが。

亜熱帯の照葉樹に低木の繁みや池が配置され、

天井は外敵防止の網が貼られただけのほぼオープンエア。

やんばるの森がそのまま再現された「リトルやんばる」の一角に・・・

赤いくちばしに赤い脚、鳩よりも大きく鶏よりもちょっと小さな可愛い鳥。

「ヤンバルクイナ」ちゃんではありませんか!

本物が・・・ガラスのすぐ向こう30cmの距離で、

まんまるい体を膨らませて毛づくろいをしています。

彼女がこの施設のヒロイン、2歳のメス、愛称募集中の

正真正銘のヤンバルクイナであります。あ~ビックリした。

何故、彼女がここにいるかというと、

ヤンバルクイナの保護活動の一環なんだそうです。

外敵がいない楽園に暮らしているうちに飛ぶための筋肉が衰え、

飛ぶことを忘れたヤンバルクイナですが、

外から持ち込まれたマングースや捨てられたネコに襲われたり、

森を横断する道で車に轢かれる「ロードキル」などにより、個体数が激減、

官民一体となった保護活動が続けられています。

こうした森林保護活動で森の下草を刈った後などに

ヤンバルクイナの卵が見つかることがあるそうですが、

一度、人に見つけられた卵は親が警戒して放棄してしまうため、

卵を保護し、人工孵化させ、飼育した個体の一羽がここで暮らしているのでした。

それにしても、たった一羽は可哀そうじゃない?

「いえいえ、ヤンバルクイナは1羽単位のテリトリーを物凄く大事にするんです。

一羽で暮らすことが彼女のベスト。

人工飼育でもペアリングがとっても難しい鳥なんですよ」。

NPO法人の女性スタッフが教えてくれました。

5個あった卵から孵化した彼女は5羽きょうだいになりますが、

それぞれ「個体差」、つまり「個性」があって、

別の血統の個体とペアリング「お見合い」がうまくまとまった子もいれば

彼女のようにその「物おじしない性格」から

こうした「広報活動」を担う子もいるとのこと。

同じ天然記念物でも個性によって進む道は色々なのですね。

冒険家並の覚悟で亜熱帯のジャングルに行かなければ

絶対見られないと思っていた幻の鳥に身近に会える貴重な施設ができたことは

私たち人間にとっても

自分のテリトリーを気高く守りながら森に暮らすヤンバルクイナにとっても

幸せなことであることは間違いありません。

百聞は一見にしかず。

レンタカー借りて安全運転で島の北を目指せば、

誰でもいつでも彼女に会うことができます。

一度でも愛らしいまるっこい姿を見れば、

「守らなくちゃ」、その一心が湧きあがってきます。

やんばるの森の「リトルやんばる」で

たった一羽で水浴びをし、落ち葉や小石の下の餌をついばみ、

夜には古代の習性のまま、木の上で眠りにつく飛べないロンリーバード。

愛らしくて、どこか切なすぎるたった一羽のキミに会いたくなって、

またきっと私は森を走るだろう。

大事な大事なキミの仲間の邪魔をしないように、

慎重に慎重にハンドルを切りながら。

本物のヤンバルクイナに、

会いに行ってみませんか。

冒険ルックは要りません。

(写真は)

スマホで至近距離で撮影も可能。

あまりに近すぎて、上手く撮れない(笑)

本当に可愛い。

真っ赤なくちばしと脚がキュートすぎる。

一瞬広げた翼の大きいのに驚く。

翼はあるけど、翼を動かす筋肉が退化しているのだ。

飛ぶ必要のなかった楽園を誰が壊しているんだろう。

キミの赤い目を見ながら考える。

また、会いに行くからね。