いろりの力
雪の朝。
今頃はどれほど美しい風景なのでしょうか。
冬の岐阜県白川郷の合掌集落。
何百年も風雪に耐えてきた茅葺き屋根が作り出す景観は
世界遺産にもなっている日本の原風景。
昨夜もテレビの画面に吸い寄せられてしまいました。
合掌作りの秘密を解き明かす番組のなかで
感心したのは「囲炉裏」と萱葺き屋根の関係です。
分厚い萱葺き屋根は夏涼しく、冬暖かい、究極のエコ建築ですが、
ひとつ弱点が。湿気に弱い。そこを補うのが「囲炉裏」。
暖房や煮炊きのために、常に囲炉裏で火を絶やさないことによって、
2~4階構造の合掌作りの最上階まで煙が昇っていきます。
この煙と暖められた空気が
萱葺きを湿気から守り、防虫効果も果たしているのだそうです。
囲炉裏の力によって、合掌作りは何百年も守られてきたのでした。
囲炉裏はグルメも作り出します。
北海道のアイヌ民族が誇る鮭の燻製「サッチェプ」。
秋に獲れた鮭をヨモギの枝でお腹を広げて、寒風干しした後、
「チセ」と呼ばれるアイヌ伝統家屋の丸太の梁に吊るし、
「囲炉裏」の煙で2~3カ月燻されて完成します。
調味料は天然の塩と、厳しい北国の寒風と、囲炉裏の煙だけ。
アイヌ民族自慢の伝統保存食「サッチェプ」。
一度だけ味見をしたことがありますが、驚くほどの旨さです。
潮と風と火と煙が作り出した極上燻製。
白老のポロトコタンにあるアイヌ民族博物館では
伝統的製法を守った「サッチェプ」を作り続け、
限定数で一般販売もしていますが、毎年売り切れの人気ぶり。
隠れた北海道グルメ、食べられたら「零れ幸い」です。
お話を伺った学芸員の方に
「どうしてこんなに美味しいのですか?」としつこく食い下がりましたが、
「天然の鮭がチセで何カ月も燻されると、旨くなるんです」と苦笑されるばかり。
やはりは秘密は「囲炉裏」にあるのか。
合掌作りと囲炉裏、チセと囲炉裏。
冬の厳しい暮らし、囲炉裏で火を焚き続けることによって
人々は寒さから身を守り、家は頑丈に保たれ、美味しい副産物も生まれる。
合掌作りもチセも、
家とは人が住むことによって、はじめて命を吹き込まれるのだ。
火をコントロールする知恵を与えられた人間の大事な役割。
囲炉裏の火を絶やさないこと。
囲炉裏でぱちぱちと薪がはぜる音。
シュンシュンと鉄瓶が立てる音。
「大丈夫だよ、安心しなよ・・・」
何かの温かい声に包まれるような、
寒さに震え、獣におびえた原始の記憶が慰められるような、
不思議な不思議な大きな大きな安心感に抱かれる。
また真冬日の月曜日が戻ってきました。
家は囲炉裏の力によって生かされる。
こんな寒い朝は
ファンヒーターの微かな音さえも
愛おしく聞こえる。
☆本日1月27日(月)のUHB「さあ!トークだよ」の特集テーマは
「もう、降らないで!この雪に参っています」
毎日毎日降る雪、来る日も来る日も雪かき雪かき・・・
もう!たくさん!何とかしてぇ~!
雪に参ってる皆さまのお話お待ちしています。
ホントに、もう、たくさんよね。
(写真は)
沖縄の家屋と囲炉裏。
風を通す開放的な作りに意外にマッチング。
読谷村の大嶺工房ギャラリーにて。
南国だってそれなりに冬は寒かったりする。
囲炉裏の火が恋しいときも、ある。

