涙と腹筋

芝居を観て

これほど涙腺と腹筋が酷使されたことはなかった。

笑った、泣いた、踊った、

そして心がぬくくなった。

宅間孝行脚本・監督の舞台「晩餐」の札幌公演。

昨夜の夜の部に参戦してきました。

「タクフェス」と銘打たれた全国ツアー中のこの公演、

劇場全体がお祭り空間に変身する仕掛けに満ちています。

観客は「観劇」以上の「感激」を楽しめるコスパの高い舞台。

一見の価値、大いにありです。

物語の舞台は吉祥寺のとあるシェアハウス。

そこに60年後の未来から妙なおっさんとおばちゃんが

タイムマシンでやってきます。

時空の出入り口はベランダの洗濯機(笑)。

赤ちゃんの頃に亡くなった母親に一目会いたい、

おっさんの母を慕う切ない気持ちで実行された時間旅行だった。

賑やかで濃い人々が集うシェアハウスで二人が出会ったのは若き日の父と母。

宇宙人に間違えられたり、旅芸人にされたり、

てんやわんやのお祭り騒ぎのその果てに観客を待っていたのは・・・

涙腺と腹筋が痛くなるほどの感動でありました。

役者の顔ぶれが凄い。

おっさんが中村梅雀、その妻を柴田理恵、

若き父は宅間孝行、若き母が田端智子という配役。

「田端智子から中村梅雀が生まれた」という設定がすでにシュール(笑)。

しかし、役者の力は凄い。

おっさんとおばちゃんの若き日の父母への愛、

若い二人がお互いを思う深い愛、

軽妙な台詞の応酬に腹筋が痛くなるほど笑いながら、

いつのまにかその涙がしょっぱい切ない涙へと成分が変わっていく。

まんまと、してやられる。

あっぱれな舞台です。

タクフェス版BACK TO THE FUTURE。

感動のフィナーレでお芝居の幕が下りた後は一転、劇場がライブ会場に。

舞台と客席全員がタオルを振り回してのダンシング・タイム!

役者さんたちが舞台を駆け下りてきて、観客とハイタッチです。

なんと宅間孝行さんが私の目の前に笑顔で駆けてきます!

心の中で「キャーッ♪」

私も100%の笑顔でハイタッチ!

チャーミングでセクシーな役者の手は、柔らかかった。

しかし、3時間近い芝居を演じ、汗みどろで歌い踊っていたはずなのに、

意外なことに、その柔らかな手のひらは、少しひんやりしていたのです。

熱い魂とクールな頭脳。

脚本家であり、演出家であり、俳優である人の

複雑で重層的な内面を物語っているかのようなちょっと冷たい手の温度。

宅間作品を生で観たのは初めてでしたが、

柴田理恵さんと宅間さんの台詞のやりとりなどはお腹がよじれるほど面白い。

でも、もしかして、もしかすると全てアドリブのように思えるあの掛け合いも

熱い魂とクールな頭脳で綿密に計算されているのだろうか。

ハイタッチの手のひらから、そんな空想さえしてしまう。

骨の髄までプロフェッショナルな芝居人に騙されるのは、快感だ。

芝居はこれだからやみつきになる。

劇場の空間に一歩足を踏み入れたら最後、

観客は時空を超えた非日常にさらわれてしまう。

日々の重力から解放されたい人は劇場に行こう。

宅間孝行「晩餐」札幌公演は本日13時が千秋楽。

涙腺と腹筋が鍛えられます。

(写真は)

劇中になんと「写メタイム」が設定されています。

携帯、デジカメ何でも撮影OK。

舞台で何度も場所を移動してくれるサービスぶり。

禁断の舞台写真が合法的に(笑)撮れました。

(撮影 野宮範子)