1ガロンの幸せ

「朝、靴下をはいた時には

こんな一日になると思ってなかっただろ?」

ニューヨークの地下鉄をジャックした犯人役、ジョン・トラボルタが

不敵な笑みを浮かべながら、地下鉄局職員のデンゼル・ワシントンに言う。

少し前のそんなアメリカ映画がテレビで放送されていました。

そりゃ、そうだ。

たまたま犯行の瞬間に指令デスクに座っていたために事件に巻き込まれ、

犯人が要求する現金を問題の車両にまで運ぶ羽目になったのだから。

朝、靴下をはいた時に、まさかこんなことになるとは、誰も思わない。

映画自体はまあまあの出来でしたが(笑)、

何気ない台詞が光ります。

命をかけて現金を運ぶ直前、デンゼル・ワシントンは自宅の妻に電話を入れます。

娘たちに、陸上競技の大会を頑張るように伝える夫に

涙をこらえ、震える声で妻はこう答える。

「帰りに、牛乳を買ってきて。絶対よ、牛乳1ガロン、買ってきて」。

「・・・ハーフガロンじゃだめか?」

「だめ、1ガロンの牛乳、買ってきて」。

1ガロンの牛乳。

3.758ℓの牛乳は女の私が持つには重すぎる。

あなたでなければ、だめなのよ。

朝、靴下をはいて笑顔で出かけたあなたが、

帰り道に買ってきてくれなければ、だめなの。

愛する夫を、娘の父を、絶対に失いたくない気持ちが

1ガロンの牛乳にこめられている。

シナリオスクールの教科書に載せたいくらい印象的な台詞です。

そう。

幸せの単位は、$でも円でもポンドでも、ダイヤモンドのカラットでも、ない。

朝、「いってきます」と出かけた家族が、

「ただいま」とおつかいの牛乳片手に帰ってくる、1ガロンの幸せ。

しっかりと両手にずっしり感じる重さ。

リアルな重さ。

誰にも奪われたくない幸せの重さだ。

映画のラストシーン。

夕焼けのニューヨークの住宅街の道を

でっかな1ガロンの牛乳を片手に家路につく夫の姿で・・・エンドロール。

明日の朝、パパの買ってきた牛乳で、いつもの一日が始まる。

映画の地下鉄ジャック事件は解決しました。

でも、とてつもない土石流に見舞われた日本の火山島では

いまだ、見つからない家族の帰りを、待つしかない人々がいます。

救助の手を阻む重い重い火山灰の泥、流木、がれきが

今朝も中継画像に映されていました。

1ガロンの幸せ。

その重さをかみしめる。

(写真は)

沖縄のソウルドリンク「ルートビア」。

独特の香りがクセになる甘~いソフトドリンクは

でかいパイントグラスでどかんと出てくる。

そういえば、沖縄の牛乳は1ℓよりちょっと少ない946mlとか。

復帰前のガロン単位の4分の1サイズが今も主流らしい。

うかつだった。

気がつかなかった。

今度訪れた時は、牛乳パックの裏面をしっかりと確認しよう。

クォーターガロンの幸せを飲み干そう。