つばきの島
いったい、何が起こったの・・・。
中継ヘリが上空から伝える映像には
山肌を切り裂く泥の河しか映っていない。
ここには何があったの。
そこには伊豆大島の人々の暮らしがあった。
家があった。笑いがあった。美しい椿の花があった。命があった。
十年に一度とされる大型で強い台風26号通り過ぎた後、
伊豆大島にはあまりに深い傷跡が残されました。
大規模な土砂崩れによる土石流によって多くの命が失われ、
今なお行方不明者の懸命の捜索、救助が続けられています。
被害にあった地区は島の中心部。
宿や食堂も立ち並んでいたでしょう。
学生時代に泊った宿のおかみさんの笑顔がふいに思い出されます。
つばきの島の優しい笑顔を。
サークルの夏合宿で初めて訪れた伊豆大島。
島めぐりに出発したものの、道を間違え、帰り時間が大幅に遅れた私たちを
「まあま、心配したよ、もう少しで捜索願い出そうかと思ったよ、
良かった良かった」、
おかみさんが満面の笑みで迎えてくれました。
東京で慣れない一人暮らしを始めたばかりだった私には
その温かい笑顔が、お母さんみたいで、何だか泣きたいくらい嬉しかった。
あの宿がどこの地区にあったのか、残念ながら今では思い出せませんが、
おかみさんも相当な高齢になられたはず、無事であることを祈るばかりです。
島を歩くとあちらこちらにつばきの木があって、椿油の看板がそこかしこに。
北海道ではあまり見られない花だから、感動しました。
そんなつばきの島は噴火を繰り返してきた火山の島。
大噴火による全島避難の辛苦を乗り越えてきたのに、
今度は表層の火山灰が大量の雨によって崩落、
いわゆる「表層崩壊」が起きたとみられています。
表層の雪が一気に崩落する「表層雪崩」の恐怖を知る北海道の人間なら、
その爆発的な破壊力とスピードがいささかなりとも想像できます。
台風は北の寒気を引きこんで、
北海道各地では時ならぬ、早すぎる初雪となりました。
山が真っ白になる冬も遠からずやってきます。
真っ赤なつばきの花と白い雪はよく似合う。
難を逃れた小学校のグラウンドには大量の流木とがれきが集められていました。
学校の名前はつばき小学校。
美しい花の名前がつけられた小学校に子供たちの笑顔が戻りますように。
一刻も早く、不明者の救出が進みますように。
つばきの島に、いつもの暮らしが戻りますように。
ただただ、祈りながら、中継画面を見つめる朝です。
(写真は)
台風から変わった熱帯低気圧が去った今朝の札幌の空。
かすかな虹が大倉山シャンツェにかかっていた。
この秋は虹をよく見る。
それだけ空の変化が激しいということか。
ちょっと複雑な思いで美しい虹色を眺める。



